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臨時 vol 233 「米国における新型インフルエンザと糖尿病

医療ガバナンス学会 (2009年9月8日 08:31)


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          ―マクドナルドでワクチン接種―
   ベイラー研究所フォートワースキャンパス(テキサス州)・ディレクター
   松本慎一
 新型インフルエンザの感染は秋に向け、益々拡大するものと予想されています。
現在、私は米国にて糖尿病に対する膵島移植をはじめとする細胞治療に取り組ん
でおります。移植医療は免役抑制剤を使うため、また糖尿病は易感染性があるた
めに、新型インフルエンザのリスクファクターと考えられており、私にとっても
新型インフルエンザは深刻な問題です。
 今回は、米国における新型インフルエンザの状況、わたしが所属するベイラー
研究所での対応などをご紹介したいと思います。
◆ 米国における新型インフルエンザの現況
 オバマ米大統領の科学技術諮問委員会は2009年8月24日報告書を発表し、
新型インフルエンザ(H1N1型)が米国で健康に深刻な脅威をもたらす、との
見方を示しました。ホワイトハウスは、新型であることから免疫があるヒトが少
なく、かつ他のインフルエンザの型より致死率が高いというわけではないことか
ら、通常以上に多くの人が感染する可能性が高いと予測しています。
 実際に、米国疾病対策センター(CDC)からの報告によると、米国では200
9年8月22日の時点で、新型インフルエンザによる入院者数は8843名とさ
れ、日本では死亡者数は10名以下ですが、米国では死者数もすでに556名と
なっており、死亡者数は全世界の死亡者のおよそ4分の1を占めています。全米
における、小児の死亡者も110名となっており、問題は深刻です。8月の終盤
には、米国の多くの州では新型インフルエンザの活動が安定あるいはやや低下し
ていますが、南東部の州では依然として活動が盛んです。
 このように、米国でも新型インフルエンザは深刻な国家的問題として捉えられ
ており、精力的に対策が進められています。
◆ 米国における新型インフルエンザワクチン対策
 米国でも、ワクチンが新型インフルエンザに対して最も強力な対抗策と考えら
れています。このため、米国政府は、新型インフルエンザに対するワクチンに対
して製造元を精力的に支援してます。公的あるいは私的研究機関とCDCはともに、
新型インフルエンザの分離および改変を行なうことで、数億のワクチンを作成す
る準備をしています。わたしが所属するベイラー研究所も新型インフルエンザに
対するワクチン研究にコミットしています。新しいワクチンの候補は数ヶ月をか
けて臨床治験をする予定になっています。
 新型インフルエンザに対するワクチン作成は、2009年の秋を目指して進め
られていますが、通常のインフルエンザワクチンがおそらく先に準備できると考
えられており、通常のインフルエンザワクチンを先に接種することが勧められて
います。
◆ だれが、新型インフルエンザのワクチン接種を受けるべきなのか。
 CDCにおける、アドバイザーコミッティーは、新型インフルエンザに対するワ
クチンを誰が最初に受けるべきかという重大な質問に対する答えを用意しました。
アドバイザーの推薦する者は1)妊婦、2)6ヶ月以下の子どもがいるもの、3)
ヘルスケアおよび救急医療関係者、4)6ヶ月から24歳のもの、5)25歳か
ら64歳で慢性疾患や免疫不全があるものとしています。米国では、大量に新型
インフルエンザのワクチンを準備しているために、ワクチンの不足がおこるとは
考えていません。ただし、ワクチン供給初期には、限られた数が出荷されるため
に、優先順位をつけているのです。また65歳以上のヒトは若いヒトに比べて感
染の可能性が低いために、ワクチンの優先度は低くなっています。1976年に
米国ではブタインフルエンザが流行し、その際に、ブタインフルエンザのワクチ
ンが実施されています。残念ながら、今回の新型インフルエンザは、1976年
のブタインフルエンザとは異なっており、1976年のワクチンは有効性が低い
と考えられており、新しくワクチンを接種する必要があるとされています。
◆ どこでワクチンが受けられるのか?
 米国では、州ごとにワクチンの計画がされており、すべての州でワクチンを供
給する計画を立てています。ワクチンは、病院や学校以外にも薬局や職場など私
的な場所でも受けられる準備をしています。米国(テキサス州)でユニークなシ
ステムとして、マクドナルドとの提携があります。ワクチン接種用の車が特別に
用意されて、マクドナルドの駐車場でワクチン接種が行なわれます。子どもが、
マクドナルドでワクチン接種を受けると、ワクチン接種後のご褒美としてアイス
クリームがもらえます。
◆ ベイラーにおける新型インフルエンザの研究
 わたしが所属するベイラー研究所には、ベイラー免疫学研究施設があります。
わたしが実施している膵島移植は、1型糖尿病という自己免疫疾患であり、さら
に移植後に免疫抑制療法を用いることから、膵島移植の研究の多くもベイラー免
疫学研究施設で実施しています。
 当然、免疫学の研究所ですので、今回の新型インフルエンザに対する研究もさ
れています。2009年5月11日にベイラー研究所は、ベイラー免疫学研究施
設が新型インフルエンザに対する数億円レベルの研究費をNIHから獲得したと、
発表しました。
 ベイラーにおける新型インフルエンザの研究のひとつは、新型インフルエンザ
に対しヒトの免疫担当細胞がどのように働くかを検討し、その結果を踏まえて新
型インフルエンザに対して有効性が高いワクチンを作成することです。具体的に
は、ベイラーが得意とする樹状細胞に関する研究で、新しいワクチンが樹状細胞
を効率よく働かせ、この樹状細胞が司令塔となって新型インフルエンザを駆逐す
る細胞を増殖させるというものです。
 ベイラーにおけるもうひとつの新型インフルエンザに対する研究は、個別治療
センターにおける研究です。これは
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