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Vol.187 川内村の特養で働くこと 〜村民の思い〜

医療ガバナンス学会 (2015年9月17日 06:00)


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医療法人誠励会
社会福祉法人千翁福祉会
理事長 佐川文彦

2015年9月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


帰村宣言後、川内村に戻った村民は1,615名です。福島原発事故前の村の人口は2,819名なので57%の方が村に戻っています。そのうち65歳以上が40%であり、遠藤村長は帰村宣言前に「医療が充実しなければ村民は戻れない」と言いました。避難前の川内村国保診療所は、内科・歯科の医師2名体制だったのが、帰村後の診療所は、内科・整形外科・消化器内科・心療内科・眼科・歯科と6名の医師が交互に診療しています。当院からも2名の医師が出向いて診療を続けています。

私は村民が帰村して、安心して生活するために医療の充実を計った村長の奮闘ぶりに感銘しました。村民が郡山市のビックパレットに避難している時に村民一人ひとりに声をかけ、村民が村に戻るための材料・キッカケ、すなわち村民の気持ちをしっかり把握していたからこそ診療所で診療する医師が増えたのでしょう。

特養開設も同じことで、戻ってきた高齢者が多ければ自ずと介護の必要性が高まり、村内で生活できるように特養開設を村長は強く求めていたのでしょう。また、避難中に介護施設に入所した高齢者が帰村するキッカケになることも村長は、村民一人ひとりと話をしていたので感じていたと思います。村長の村民を思う気持ちに感銘し、私は特養開設の要望に答えました。人材確保は困難であることがわかっていましたが、私も医療法人の経営をしていて福祉の充実は地域医療を守っていくためにも必須であると感じ、入所系・通所系の介護施設・事業所を展開しています。村民の生活を守るためには特養の開設が重要であると思います。

そんな中、特養の人員募集を始めると頼もしい人材が集まってきています。頼もしい人材の一人に原発事故当時に双葉厚生病院で勤務していましたが、原発事故で福島県南地区に避難して病院勤務をしていた看護師がいます。当法人の川内特養に募集してきました。

面接の時に、「私は妊娠6ヶ月です。この子と村で母親と生活するんです」とても嬉しい返事が帰ってきました。その看護師は、原発事故前は川内村から病院に通って勤務していましたが、福島原発事故によって全村避難することがとても辛かったと語っていました。生まれてくる子どもを村で育てたいと思っていた時に、特養の求人をみて応募してきました。子どもを無事出産して、現在は医療法人内の介護施設で研修をしております。

看護師に川内の特養でどう働きたいと聞くと、「小さい村だから大体の人を知っています。お世話になったじいちゃん・ばぁちゃんと昔ばなしとかして楽しく過ごしたい」と、そのために研修先の施設でなるべく多くの入所者に1日1回は最低声をかけて、入所者の状態把握に努めています。入所者がもっと笑顔になるように声かけしたいと感じる仕事ぶりです。村が復興に向けて変わってきていることも感じており、村内のイベントには多くの方が足を運び、以前より盛大に開催されています。ただ、村が活性化していることを感じながらも、いろんな開発が進んでいることを肌で感じており、私たちが育った川内村でなくなってしまうのかと不安になるくらい多くの人々が村に入っているとも話していました。

看護師と一緒に開設する施設を見に行った際、「80名の入所者が入ったら、他のスタッフと入浴はどのようにしていくか?」「具合が悪い入所者にはどう対応して受診につなげるか?」などと話している姿を見た時には、村が好きで世話になった高齢者が楽しく川内村で生活するために色々と考えてくれていることを感じ、感謝すると同時に頼もしく思いました。
看護師は入所前の状態について聞き取りしていますが、避難中の方が同じことを言うそうです。「施設がオープンするのが楽しみ。川内村に戻れるんだから」と。村が好きな職員が働き、村が好きな高齢者が生活をする施設を作れることは私にとってもやりがいがある事業でもあり、この事業に携わることができたことを幸せに感じながら、人材集めに奮闘しています。一人でも多くの村民に村に戻っていただき、戻ってきたことに喜びを感じてもらい、遠藤村長の村民を思う気持ちに私も貢献出来るように今後も邁進していきます。

川内村民が笑顔で、今以上に活気ある村になるために、そして避難したが戻って楽しく生活していることを世界の皆様に伝わるようにしていきます。

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