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臨時 vol 243 パンデミック時も「コンビニ受診をやめよう!」

医療ガバナンス学会 (2009年9月13日 10:49)


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厚生労働省大臣政策室
政策官
村重直子
※厚生労働省の公式見解ではなく、一人の医師としての見解です。
【学校閉鎖は何のため?】
 新学期を迎えたはずの9月初め、新型インフルエンザのために学級閉鎖や学校閉鎖が相次ぎました。新型インフルエンザにより予定の行事がとりやめになるなど、生徒やご家族、関係者の方々は胸を痛めておられることと存じます。ところが学級閉鎖や学校閉鎖をしても、新型インフルエンザの感染拡大を完全に「防ぐ」ことは不可能です。それは、インフルエンザは熱などの症状が出る前に感染性があり、他の病気とも症状が似ているために新型インフルエンザを区別することはできないだからです。それではこの学級閉鎖や学校閉鎖は何のために行うのでしょうか。
 それは、通常の医療を受ければ助かったはずの、重症患者が命を落とすことを防ぐためなのです。流行のピーク時には多数の患者が発生しますが、ほとんどの患者は軽症で自然治癒します。もし、その軽症患者が医療機関へ押し寄せたら、医療機能は麻痺し、重症患者が病院へ行っても医療を受けられず、命を落とすことになります。そういう事態を避けるために、ピーク時の感染者数を少しでも減らし、ピークを遅らせることが、学校閉鎖を行う目的なのです。
【コンビニ受診をやめよう!】
 前稿にも書きましたが、新型インフルエンザ対策の中で大切なことは、患者が爆発的に増えて医療機関がパンクし、重症患者が通常の医療を受けられずに死亡するケースをできるだけ減らそうということです(1)。新型インフルエンザ対策として、学校閉鎖だけでなく、国民一人ひとりができることがあります。兵庫県の「県立柏原病院の小児科を守る会」(2)では、子育て中のお母さんたちが、「県立柏原病院の小児科医が辞めてしまう。子供を育てられない、出産も出来なくなってしまう」ことに気づき、次の3つのスローガンを掲げて活動しています。
1.コンビニ受診を控えよう
2.かかりつけ医を持とう
3.お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう
新型インフルエンザのパンデミック時でなくとも、コンビニ受診は医療機関を軽症患者でパンクさせ、重症患者への医療に支障を来してしまう可能性が高いことは、医療崩壊している日本では、日常的におこっていることなのです。
「守る会」は、どんなときに救急車をよべばいいのかお母さん達が判断できるよう、症状別フローチャートを作成しました。正しい知識を持ち、受診すべきかどうかを判断できるようになることが大切との考えからです。その結果、以前は1ヶ月の小児科時間外外来数が150名~最大350名だったのに対し、1ヶ月で平均40~50名まで時間外コンビニ受診が減ったそうです。
 日常から積み重ねているこういった努力が、パンデミック時にはさらに貴重になります。新型インフルエンザについて一人ひとりが注意すべきことは、毎年冬に経験する季節性インフルエンザの注意点とほぼ同じですから、この症状別フローチャートは(3)、きっとパンデミック時にも大活躍することになるでしょう。このように、一人ひとりが社会全体を思いやることが、本当に医療を必要とする重症患者の命を救うために有効な新型インフルエンザ対策となるでしょう。
【参考文献】
(1)死者数を増やすのは医系技官かウイルスか?
厚生労働省大臣政策室 政策官 村重直子 JMM
(2)県立柏原病院の小児科を守る会ホームページ
 http://mamorusyounika.com/index.html
(3)県立柏原病院の小児科を守る会ホームページ 啓発グッズ紹介
http://mamorusyounika.com/joho.html
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村重直子(むらしげなおこ)
厚生労働省大臣政策室 政策官
1998年東京大学医学部卒業。横須賀米海軍病院、1999-2002年米国・ベス・イスラエル・メディカルセンター、2002年国立がんセンターなどを経て2005年厚労省に医系技官として入省。2008年3月から改革準備室、7月改革推進室、2009年7月から大臣政策室。
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