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Vol.234 医学生チーム” Team Medics(チーム・メディックス)による外国人医療サポート活動の紹介とその活動意義〜2020年に向けて〜

医療ガバナンス学会 (2015年11月19日 06:00)


群馬大学 医学部1年
松崎秀信

2015年11月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


私は、Team Medics(チーム・メディックス)という、日本で外国人がスムーズに受診できるよう英語で医療サポートをする医学生ボランティアチームに所属しています。このTeam Medicsは、2020年の東京五輪開催時に競技場などで発生する外国人の医療ニーズに対して、スムーズに対応できる医療サポート団体になることを目指しています。本日はこのチームの活動内容と意義について、お伝えしたいと思います。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックには、世界中から多くの人が集まります。文化イベント参加者など含め、約20日間のオリンピック期間中には、80万人もの外国人が東京を訪れると予測されています。オリンピックは開催日程が真夏であるため、熱中症など一刻を争う状態の患者さんが多く出てくることも予想されます。事実、1964年に開催された東京オリンピックでは競技会場で3,396人が救護されたそうです。最近では、訪日外国人の方の約4%が日本滞在中にけが・病気を患うという観光庁のデータも報道されており、仮に80万人の4%だとすると期間中に約3.2万人の方が、医療機関にいらっしゃる可能性があるということです。
そこで、私たちは大会期間前の現在から外国人患者さんを受け入れるために、必要な知識と経験を積み重ね、2020年には、医療機関で患者さんの治療にあたられる医療従事者の方々がいち早く適切な処置を行うことができるような事前事後サポートができる医学生チームをつくりあげていきたいと思っています。チームメンバーは、医学生であるため医療行為をすることはできませんが、医師の卵として、医学生が競技会場や医療機関などでサポートできることが沢山あるのではないかと考えています。

Team Medicsは2015年7月に設立した団体ですが、これまでに全6回の勉強会を行い、医療従事者に必要な姿勢・外国人の方に接するにあたって気をつけるべきこと・日本との医療制度や文化の違い・問診をとる際に必要な医療英語などを学ぶとともに、実際に英語で問診をとる練習を繰り返し行ってきました。また、勉強会の他の活動として、10月3日、4日に東京・お台場で行われた外務省主催の国際協力イベント「グローバルフェスタ」にてメンバーの一部が救護テントにて語学ボランティアとして活動を行うなど、少しずつ活動の幅を広げています。加えて、定期的に様々な国際セミナー情報や、外国人医療に関する情報をSNSで配信し、メンバー1人1人の意識を高めています。

2020年の東京五輪を目標に掲げていますが、もちろん、上記のような活動をすることで、オリンピックやパラリンピックのような国際イベント以外でも、訪日外国人の方々が急にけがや病気になられた際や在住外国人の方々の医療サポートもしたいと思っています。訪日外国人数は、昨年には1,300万人を突破し10年前の倍以上になりました。2020年には2000万人以上の外国人の方が、日本を訪れることが予想されています。さらに、現在日本には250万人以上の在住外国人の方々がいらっしゃいます(法務省、2015年6月末)。その中には言語や医療制度が分からないために、慢性疾患や症状があるにも関わらず、医療機関での受診を控え、病気や症状を悪化させてしまう患者さんがいると言われています。これらの患者さんに対して、医学生が言語的なサポートし、ヒアリングを行って日本語の問診票に記入、それをもとに、医療機関の紹介・質問対応を行えれば、医療機関へ行きやすくなり、円滑に医療を受けることができると考えられます。

私たちは、Team Medicsの活動によって大きく4つの良い効果を社会にもたらしたいと思っています。1つ目は、日本にいらっしゃる外国人の方々の安心・安全です。「日本では外国人でも安心して医療を受けることができる、日本は素晴らしい」と外国人の方々に感じて頂き、もっと日本を好きになって頂ければと願っています。そして2つ目は、医療機関の方々の負担減です。外国人患者さんが押し寄せたとき、言語的サポートがまったくなければ、医療従事者の方々に本来の業務以外の部分での大きな負担がかかってきます。そのため、医学生が受診前後での言語的サポートを行うことで、その負担を軽くできればと思っています。3つ目は、日本語に不自由のない方々の受診への悪影響をなくすことです。外国人患者さんが多くなり、その対応に人員や時間がかかると、その分、日本の患者さんの受診に時間がかかるような悪影響も懸念されます。
日本語の話せない外国人患者さんの対応がスムーズになることで、たとえ外国人患者さんが増えても、日本の患者さんにも負担がかからないような状態を実現したいです。最後の4つ目は、私たち医学生自身の成長です。医学生はいずれ医師になります。学生のうちから外国人患者さんの対応を学び、経験することで、医師として医療現場に入ったときにスムーズに診療を行えるようになり、また、日本の医療の素晴らしさを世界に向けてアピールできるような存在になれることを目指しています。

このようなことを目標に、私たちは、2020年に向けて、これからも継続して勉強会を行うとともに、様々な国際イベントでも、救護ブースにおける語学ボランティア等として参加させて頂き、経験を積んでいこうと考えています。また、国際イベント以外でも、私たちを必要としてくださる医療機関やイベントなどで活動をさせて頂けないかとご相談をさせて頂いている最中です。その他にも、医療機関へのヒアリングにもとづいた外国人向けの多言語医療マップを準備していく予定です。外国人患者さんが病気や怪我になったとき、まず困るのは、自分が行くべき医療機関がどこにあるのか分からないことです。現状は日本語以外の言語でウェブサイトのある医療機関の数も多くなく、信頼できる医療機関情報がどこにあるのかも不明です。そのため、医療機関の位置や診療科・診察時間・対応言語などを、私たちが調査し、多言語の医療機関マップにまとめていきたいと考えています。

このように私たちは今後も目標達成に向けて精力的に活動を行っていきます。しかし、私たちだけでは、できることはとても限られています。これらの活動を行うには実際に医療機関で治療・対応にあたられる医療従事者の方々や自治体の方々、さまざまなイベント主催者の方々など多くの皆さんのご協力が必要不可欠です。ご協力を得るには、もっと多くの方々に私たちの活動や目的を知って頂かなければなりません。Team Medicsはまだあまり認知されていないため、積極的に情報発信を行ったり、様々なイベントに参加したりして、アピールしていこうと思っていますが、Team Medicsの活動に賛同頂けましたら、皆さまからもぜひ周囲の方々にTeam Medicsの活動のことをお知らせ頂ければと思っています。
また、国際イベント等における医療関連の語学ボランティア・医療機関でのボランティア活動への参加・自治体やNPO団体などでの外国人医療支援関連イベントの補助など、さまざまな活動を通して、外国人患者さんのサポートの経験を積んでいきたいと思っています。Team Medicsのメンバーにぜひやってもらいたい、参加させてやっても良いといった活動がございましたら、ぜひご紹介頂けますと幸いです。

皆さまのご支援・ご協力を力に、このボランティア活動が末長く続くことを目指して活動を行っていきたいと思っています。皆さまの温かいご支援・ご協力をどうぞよろしくお願い致します。

Team Medicsウェブサイト:http://team-medics.org/
Team Medics Facebook ページ:https://www.facebook.com/TeamMedics2020

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