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「春-3」& 禁煙支援のタイミングは?低調な禁煙教室参加率
トヨタ記念病院禁煙外来
リセット禁煙研究会代表
予防医学で医療崩壊を緩和する会発起人
磯村毅
前回は、吸いたい気持ちを元から断つことができれば、禁煙は楽になる。とお話
しました。でも、どうやって?
リセット禁煙では、質問の力を利用します。「春→夏→秋→冬→新春」の5つ
のステップの順に、体系化された説明と質問を繰り返し、気づきの連鎖反応を起
こします。実は今回で「春」のステップは終わり。皆さんは依存症の本質、習慣
との違い、新しい楽な禁煙法の可能性などの気づきを得ているからです。
気づきの連鎖の最終目標は、本心から、「タバコは無駄なものだ」と悟ること
です。そうすると、吸いたい気持ち自体がうすれていくのです。ですから、リセッ
ト禁煙では、あまりタバコの害の話は強調しません。「害はあるけど、タバコに
もよいところがある。」と考えている人に、いくら「害」の話をしても、そんな
にひどかったのか、とは思っても、「よいところがある」の部分は変化しないか
らです。リセット禁煙の狙いは、「よいところがある」という考え。これをぐら
つかせようとします。
まずは試しに、こんな場面を考えみてください。
久しぶりに会った大好きな彼とのデートの最中にタバコが吸いたくなった女の
子がいたとします。彼女は、ちょっと失礼といって、外へタバコを吸いにいきま
した。外に出る直前、彼女の心の中は吸いたい気持ちでいっぱいです。そして、
タバコを吸ってほっとする。周りから見てもそう見える。もちろん、彼女も
「タバコを吸うって幸せなこと・・・」 と思っています。
でも、そんな彼女が、気がついていないことがあるんです。やっぱりタバコを
吸うことは、ものすごく損なのです。彼女が見落としていること、それは、何で
しょうか?
????体のこと?彼氏を待たせていること? いえいえ、大半の喫煙者はそのこと
は理解しつつ、吸っていますよね。それ以外にあるんです・・・。
彼女が見落としていること、それは、そもそも楽しいデートの最中に、タバコ
が吸いたくなること自体、幸せなことか?ということです・・・。どうでしょう
か。
どんな感じがしましたか? リセット禁煙では、このような気づきを促すストー
リーを積み重ねていきます。そして気づきの連鎖が進んで行くにつれ、コロッと
止められる人が出て来るのです。
喫煙者の7割が止めたい、減らしたいと考えています。しかし、今すぐ止めた
いという人は一割しかありません。さらに、日本人の66%が禁煙を始めたこと
を誰にも話さないという国際比較があります(10カ国中最高。最低はメキシコ
の40%)。支援しようにも、なかなか手をあげてくれません。
それで企業などで自由参加の禁煙教室を開くと参加する人は全喫煙者の1%程
度になってしまいます。かといって強制的に参加させても居眠りするばかりです。
ではチャンスはいつか。それが妊娠中なのです。この時期8割の人が禁煙を試
み、実際に禁煙を開始して、少なくとも身体依存は解消している人も多いのです。
この人たちの再喫煙を防ぐのです。ただし本人は「心の問題」が残っていること
を理解していません。それで「もう大丈夫」と言ったりします。しかし油断は禁
物。最低でもこれから出てくる、リセット「夏」や「秋」を伝えて、心のケアを
行う必要があります。
それでは、次回は「夏」のステップ、タバコとストレスの話です。