前回に続き、タバコとストレスについてです。まず、スモーカーはニコチン切
れのストレスでも、他の一般的なストレスでも、脳波のα波が減少してくるので、
区別がつかず、この両者を混同してしまうという話でしたね。つまり、一般には、
タバコはストレス解消になると主張されているが、本当はタバコが効果のあるス
トレスは、ニコチン切れのストレスだけ、ということです。
ところが、多くのスモーカーはこのことを説明しても、「でも、実際、タバコ
を吸ったときには落ち着くから・・・」と吸い続けてしまいます。しかし、その
考えには大きな盲点があります。やっぱりタバコを吸うことは大損なのです。ス
モーカーが見落としていること、それは何でしょうか。前回はこの質問で終わり
ました。何か思い浮かびましたか?
さて、答えは、もともと、タバコを吸っていなければ、α波が減ってくること
自体なかった、つまり、ニコチン切れのストレスに悩まされることはなかった、
ということです。そのままリラックスしていられたのです。
つまり、スモーカーはタバコを吸うと、純粋に、元気が出る、と考えています
が、現実には、タバコのせいで、いらいらして落ち着かなくなっていたのが、少
し元に戻るだけなのです。全体で見ればストレスは増えているのです。
例えば、受験生が浪人してしまったとします。「また一年勉強だ・・・」、と
落ち込んでいると、先輩がやってきて、タバコを勧めながら「落ち着くよ、集中
力がつくよ」。さて、それで、今までタバコを吸っていなかった子供がタバコを
吸うようになったら、本当に集中力はアップするでしょうか?
いいえ、違いますね。話はあべこべ。タバコを吸うようになると、普段から、
ニコチン切れが定期的に生じるようになり、イライラして集中できなくなってし
まうのです。せっかく勉強を始めても、途中で・・・。
悲しいことに、これと同じ誤解が育児でも起きています。特に、喫煙経験のあ
る母親の場合、リセット禁煙の内容を知らされなければ、育児でイライラすると、
例の「タバコはあらゆるストレスを解消してくれる」という勘違いが出てきて、
吸いたくなってしまいます。それで、再喫煙が多いのです。
彼女たちは、タバコを吸いながら、「タバコで育児のストレスを解消している」
と考えます。「無理に禁煙したら子どもを虐待してしまうかも」という人までい
ます。
でもよく考えてみてください。いくら育児が大変でも、タバコを吸わないお母
さんもいるわけです。その人は、一日に何回くらい息抜きをしているでしょうか。
お茶を飲んだり、ドラマを見たり、散歩したり。きっと、1日数回ですよね。
ところが、タバコを吸うお母さんは、それが、1日一箱20本なら、1日20
回も、息抜きをしていることになるのです。ということは、このお母さんの言う、
ストレスの中身は何なのか。ニコチン切れのストレスと、育児のストレスと、ど
のくらいの割合になっているのでしょう。
実は、虐待児の母親は喫煙率が高いことが分かっています。南多摩保健所が開
発した、虐待児スクリーニングシステムの虐待要因一覧表では、母親の喫煙は5
点であり、これは、母親の精神疾患(5点)と同等。両親または一方が20歳未満
(4点)、酒・薬物の問題(4点)、ギャンブルの問題(2点)と比べても、高得点な
のです。