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臨時 vol 278 「平成の大本営 医系技官問題を考えるー(3)」

医療ガバナンス学会 (2009年10月6日 06:20)


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医系技官という踏み絵
~「活動的な馬鹿よりおそろしいものはない」ーゲーテ~

厚生労働省医系技官 木村 盛世

明治維新以来と言う大政権交代が起こった。様々な思惑がうごめいている中、
厚労省の中で最も活発に活動しているのは医系技官たちだと思う。何しろ、舛添
前厚生労働大臣は「医療改革は医系技官改革だ」としてパンドラの箱開けた恐る
べき敵であった。その敵がいなくなったとなれば、再び「おらが春」を謳歌しよ
うと躍起になるのは当然である。新しく大臣になった長妻氏は「年間3000回答弁」
レクという医系技官の洗礼を受けているというのであるからまったく気の毒であ
るとしか言いようがない。

しかし、厚労省が抱える問題は大きい。新型インフルエンザのように即座に対
策を打たなければならない緊急事案も抱えている。そうである上は長妻大臣が医
系技官のたわごとに踊らされている場合ではない。早急に解決しなければならな
いのはワクチンの問題であろう。ワクチンには主作用である病気の予防効果の他
に、必ず、副反応と言うありがたくないものが付きまとう。その副反応と言うリ
スクを冒しても国民全体を当該疾患から守ろうとするための手段がワクチンであ
る。ワクチンを政策として導入する側(厚労省)も、ワクチンを受ける個人もそ
のことを熟知し、了解しておく必要がある。そうでなければ国政としてのワクチ
ン導入は不可能だ。

ワクチン政策の根本理念から考えれば、重篤な副反応が起こった時、国や製薬
会社が訴えられる等ということ自体おかしい。そのためにアメリカやフランスな
どではワクチンに関する免責(国が訴訟をうけないとする)制度を敷いている。
同時に、不幸にして副反応に巻き込まれた個人のための保険(無過失保障制度)
も用意している。なぜこのような制度が必要かと言えば、国も国民も両方を守る
ためである。

ところが、国民を守る立場にあり、なおかつ医師と言う資格を持つ医系技官た
ちはまったくワクチンの基礎整備をしようとしていない。それどころか自分たち
の利権に有利にはたらく国産ワクチンメーカーを限定し、それ以外に門戸を開放
しようとしないのだ。インフルエンザワクチンの効果は100%ではないと言われる
ものの、政府の無策により生じた国民のパニックを制圧するためにはワクチンは
必要不可欠である。ところが医系技官たちにとってはそんなことはまったく問題
とはならないらしい。

何しろ今まで1300万人程度しか作れないといっていた国産ワクチンが1晩で2700
万人分調達可能という、通常では信じがたい発表をしている。医系技官の幹部に
はプロのマジシャンもいるくらいだから、何か魔法を使ったのかもしれない。あ
るいは、水で薄めて「これは効きますよ」と言って売り出すのかもしれない。何
と言っても「口八丁」で政策を決めている人たちだからそれくらい朝飯前であろ
う。

このような舞台裏を国民がどの程度知っているのだろうか?日本人は政府に対
する盲目的な信頼を抱く国民性をもっている。言い換えれば、政府が嘘をいって
も、嘘だと思わず信じ続けているお人よしだ。国民の良心を逆手にとっての破廉
恥行為は施作決定者として許されるものではない。

2007年にWHOのマーガレット・チャン博士は「健康問題はもはや安全ではな
い」と宣言している。それは、かつて根絶された感染症が再びテロの手段として
蘇る可能性があるからだ。これからの感染症対策は昔とは全く違う。新たな脅威
から国を守らなければならないのだ。この事実を国民は知らなければならない。
そして、厚労省のトップとなった長妻厚生労働大臣は国民を感染症の被害から守
る義務がある。医系技官の呪縛を自ら断ち切って大鉈を振るってもらいたい。厚
労省の問題は年金だけではないのだから。

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