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Vol.102 ジカ熱とともに風疹に万全の対策を!~2020年風疹排除にむけて~

医療ガバナンス学会 (2016年4月28日 06:00)


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フリーライター
福島 憲太

2016年4月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

政府は5日、「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」を開催し中南米を中心に感染が広がるジカ熱について追加の対応策を決定しました。国内感染を発生させないよう、着実に対策を進めていく必要性があるでしょう。

会議後の会見では遠藤五輪相から、「2020年の東京五輪や前年のラグビーワールドカップ(W杯)には、海外から多数の選手、観光客が来日する。感染症対策は大変重要な課題だ。」という発言がありましたが。2020年に風疹を排除するという目標にむけて新たな対策がうちだされることはなく残念でなりませんでした。2012年から2014年にかけての流行がおさまって以降、風疹に対しての世間の関心は急速に薄れていったように思わざるを得ません。しかし20代から40代の男性だけで500万人もの感受性者がいる現状を放置しておけば、再び大きな流行が起きかねません。今五輪が開催される前のブラジルでジカ熱が流行しているように、2020年東京五輪が開催される前の日本で風疹が流行する可能性もあります。そんな事態の発生は、なんとしても防ぎたいものです。ここからは、それぞれの立場で風疹排除にむけどのような取り組みができるのか私見を述べていきたいと思います。

【産科の先生方の協力が、不可欠。】
風疹排除にむけてなにより期待したいのが、産科の先生方です。妊婦に対し風疹抗体検査を行い、抗体がない場合は出産後に予防接種を受けるよう呼びかける。一連の取り組みが確実に行われれば、感受性者は確実に減少していくことが予想されます。

一方でやや古いデータではありますが2003年に日本産科婦人科学会が行った調査によると、妊婦の健診時に風疹抗体検査を日常的に行っていると回答した産科医は73%、検査の結果風疹感染の可能性がある妊婦に対し分娩後に予防接種を受けるよう勧めると回答した産科医は56%にとどまっています。時間的な余裕がないなどの理由で検査さえ行えない産科があるのかもしれませんが、妊娠中に風疹にかかり苦しむ可能性があるのは信頼して産科を受診してくれる妊婦たちです。全国どこの病院でも確実に抗体検査を受けられ、抗体値が低い場合は予防接種をすすめてもらえる。そんな体制ができることが、望まれます。

また、妊婦のパートナーが抗体をもっていない可能性もあります。産科の先生方にはパートナーの方にも、抗体検査と(必要ならば)予防接種を受けるようすすめていただきたいと思います。市町村によっては抗体検査や予防接種の費用補助をしているところもあるので、それらを紹介していただくのもよいと思います。

【産科以外でも、折にふれ啓発へのご協力を。】
産科以外でも、折にふれ風疹ワクチン接種に関する啓発にご協力いただければと思います。

特にご協力いただきたいのが、小児に予防接種をする機会がある小児科の先生方です。予防接種にあたっては保護者が子どもとともに病院を訪れるでしょうから、保護者の方にぜひ「あなたは、風疹の予防接種を受けていますか。」と確認いただければと思います。

また、厚生労働省風しんについて(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/)のホームページでは、風疹予防接種に関するポスターが公開されています。ぜひ多くの医療機関で掲示いただきますよう、お願いします。

【メディアの協力も、不可欠】
風疹排除にむけては、メディアの協力も欠かせません。多くのメディアで流行がおさまって以降風疹についてほとんど取り上げなくなったのは残念ですが、今年に入りテレビ番組でジカ熱とともに風疹への対策も大切とコメントさせる先生がおられたのはうれしく思いました。

一方で医療従事者向けの新聞雑誌の中にだれでも寄稿できるが掲載されるのは実質的に医療従事者に限られているものがあり、筆者のような医療従事者でない者の訴えが届けられないのは残念です。本メールマガジンのように、医療従事者にむけてさまざまな立場から発信できるメディアが増えることを切に望みます。

【誰でも、今日からできる取り組みもある。】
風疹排除にむけては、誰でも今日からできる取り組みもあります。

先天性風疹症候群の子どもをもつ親などで構成され風疹排除にむけて取り組む「風疹をなくそう会 『hand in hand』」は携帯電話やパソコンを使って気軽にNPOなどが支援できるホームページ・gooddo(グッドゥ)に登録しており、風疹をなくそう会の該当ページ(http://gooddo.jp/gd/group/stopfuushin/?dpoint=100&dtitle=%E6%9C%AC%E6%97%A5%E3%81%AF%E3%80%8E%E9%A2%A8%E7%96%B9%E3%82%92%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%9D%E3%81%86%E3%81%AE%E4%BC%9A%E3%80%8Ehand+in+hand%E3%80%8F%E3%80%8F%E3%81%AB100%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E5%B1%8A%E3%81%91%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%EF%BC%81%E6%AC%A1%E3%81%AE%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%BE%E3%81%A7%E6%AE%8B%E3%82%8A%E3%81%82%E3%81%A85880%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E3%80%82+%EF%BD%9E+NPO%E3%82%92%E7%84%A1%E6%96%99%E3%81%A7%E7%B0%A1%E5%8D%98%E3%81%AB%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%EF%BC%81gooddo%28%E3%82%B0%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%A5%29+%EF%BD%9E&nm_cv_from_media=fb_daily_click)で1回
ボタンを押すだけで10円寄付することができます。集まった寄付は、風疹に関する啓発資料の印刷代として使われています。ぜひ多くの方にご協力いただければと思います。

風疹はジカ熱と異なり、ワクチンでほぼ確実に防げる感染症です。「予防接種を受けておけば」と後悔する人がこれ以上増えないよう、それぞれの立場で風疹排除にむけてできることから始めていきましょう。

福島憲太
フリーライター。1983年生まれ。一般企業等勤務をへて、2015年から現職。処女作「風疹をめぐる旅~消される子ども・笑われる国~」の執筆を進めている。先天性風疹症候群と診断されてはいないが、風疹が流行した翌年の生まれで先天性白内障により視覚に障害がある。メディア等で風疹の排除にむけた取り組みの必要性をうったえているほか、視力が低くて目が見えにくい「弱視」の啓発に力を入れている。

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