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Vol.105 “こども と 震災復興”国際シンポジウム2016 ~相馬地方の5年のあゆみ~

医療ガバナンス学会 (2016年5月4日 06:00)


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公式サイト:http://child-r-d-soma.jp/index.html

2016年5月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2016年5月7日(土曜日)15:00-17:00

基調講演

●災害対応と復興の教訓

WHO健康開発総合研究センター
所長 Alex Ross

自然災害、感染症アウトブレイクその他の災害はここ10年、いや、100年の間、増加の一途にある。熊本の地震やエボラ出血熱のアウトブレイクなどは記憶に新しい。これらが人命や経済に与える影響は甚大である。世の中には備え、対応し、そして乗り越えなくてはいけないハザード  -洪水、地震、火山の噴火、台風、熱波や寒波、あるいはもっと稀な例として化学物質や放射性物質の汚染など-  は様々あり、時にそれは認識されていないことすらある。感染症のアウトブレイク  -インフルエンザ、エボラ、ジカ熱、デング熱、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、チキングニア、多剤耐性結核など-  もまた、海外渡航者の増加、人口増加、都市化、突然変異による動物からの感染などにより増加の一途にある。これらすべてが健康安全にかかわる問題なのである。

これらが引き起こす総合的な被害は甚大であり、時に弱者(高齢者、障がい者、子供、経済弱者など)に集中する。中でも最も無視されがちな領域は、このような大災害の生存者における長期的な心理社会的影響である。我々は阪神淡路大震災、その20年後のここ、相馬市も影響を受けた東日本大震災、あるいはニュージーランド、中国、ネパール、ミャンマーなどの各地でそのような健康被害を目撃してきた。より良い防災対策、災害対策、災害復興や長期的計画立てるためには、このような地域間での教訓を共有することが必要である。そしてそれは、熊本やその周辺地域にとっても有効であろう。

国内外において、WHOはエビデンスを集約し、国々の援助となるツールの作成、災害の影響のモニタリング、そして要請に応じて様々な国や地域
を援助する協力体制の提供などを行ってきた。WHO神戸センター(WHO健康開発総合開発研究センター)は、WHOの様々な協力団体やWHOのその他の部署と協力して、都市における健康危機や、災害における心理社会的な影響についての教訓を集約してきた。

国際保健規則(IHR、2005)のような条約や、仙台防災枠組のようなフレームワークは各国が健康危機を  -それが生物・化学・原子力のいずれであっても、あるいはすべてのハザードに共通した行動であっても-  認識、分類し、対応するために役立つものである。機関間常設委員会(IASC)や、WHOが監督する地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)、緊急被ばく医療準備ネットワーク(REMPAN)などは、対応期における支援を行う。

何をすべきで、何をすべきでないのか。その知識は日々蓄積している。すべての国や地域の災害対策、災害復興の根底に必要なものは、健康システムの強化、想定外のリスクに対する対処がある。多くの行政機関は災害という稀で想定外の事態における差し迫ったニーズを十分認識できていない。緊急事態における物資の確保、計画、総括的な対応を行うためには、国内外の健康ガバナンスの重要性を認識することが鍵である。多くの関係者や行政部署に興味を持ってもらうことが重要であるが、時に困難である。災害時、特に感染症の際には恐怖が問題になる。それに加え、東日本大震災でも明らかになった通り、災害後の公衆衛生的ニーズは感染性疾患から慢性疾患を持つ高齢者への継続的ケア、障がい者のケアや、被災者および援助者の心理社会的影響のケアへとシフトしつつある。

最大の教訓は、地域社会が実際に行っていることから得られる。このシンポジウムは、相馬から生まれたイノベーション、およびそれを他へ応用するための最良の方法を共有する良い機会となるだろう。

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