医療ガバナンス学会 (2016年5月4日 15:00)
公式サイト:http://child-r-d-soma.jp/index.html
2016年5月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
2016年5月7日(土曜日)12:30-17:00
研究報告【第1部】 -こどもと震災復興-
●東日本大震災が相馬地方住民の健康に与えた影響と対策
相馬中央病院 医師
森田知宏
震災による相馬地方住民への健康影響を評価するため、相馬市・南相馬市における2006年以降の全死亡率、がん死亡率の推移を調べた。10万人あたりの年齢調整死亡率は2006年の男性599人、女性329人に対し、2014年は男性523人、女性302人であった。年齢調整がん死亡率は、2006年に男性184人、女性100人に対し、2014年に男性166人、女性86人であり、いずれも明らかながん死亡の増加傾向は認めなかった。その一方で地域の高齢化は加速し、慢性疾患を含む健康対策の重要性は高い。相馬市での長屋対策を中心に、高齢者の健康対策に関する現状を報告する。
●フォロアーチームの活動 ~子どものPTSD対策を通じて~
学校法人国際学園 星槎名古屋中学校長
安部雅昭
NPO法人相馬フォロアーチームは相馬市と星槎グループ等が協力し、津波被害にあった小学校2校と中学校2校に対し、スクールカウンセラーを派遣し、PTSD対策を行うことを目的として2011年5月に設立された。重要なことは継続的で一貫性を持ち、チームとして活動し、緊急時の対応も可能な支援体制にある。震災によるストレスは大きいが、その体験があるからこそ成長できたと思えるよう、教育現場での心のサポートについて報告する。
●震災復興と弁護士、そして法テラスの役割
日本司法支援センター 本部 第一事業部
民事法律扶助第一課 課長
弁護士
杉岡麻子
震災後、弁護士は、法律相談活動、事件の受任、立法提言活動などを行い、被災者の生活再建を支援する。震災特例法が成立したことで、費用の点で、弁護士の支援を受けやすくなった。
福島県では、震災後、原発事故をめぐる損害賠償請求の他、離婚や、家庭をめぐる事件が激増している。法律相談の件数も増え続けており、今後も、複雑化した問題への相談、受任等の対応が必要である。
●音楽を通して生きる力を育む ~文化芸術による復興、地域創生、国際交流~
一般社団法人エル・システマジャパン 代表理事
菊川 穣
一般社団法人エル・システマジャパンは相馬市との協力協定に基づき、「音楽を通して生きる力を育む」事業を実施している。既存の部活動支援として始まった活動は、現在では市内5?17歳の総勢150人の子どもたちから構成される相馬子どもオーケストラ&コーラスを中心に、邦楽、雅楽、鼓笛隊等の分野を含めた小学校での授業支援へと多岐に渡っている。文化庁補助金もあり、2014年4月からは市の事業として予算化、昨年末より、エル・システマ指定ふるさと納税も始まっている。
●東京農大による相馬地域の農業復興支援
東京農業大学教授・東京農大東日本支援 プロジェクトリーダー
渋谷往男
この講演では東京農業大学による相馬市およびその周辺地域の農業復興に対する支援活動を紹介する。本学は実学主義を旨としており、東日本大震災からの農業復興支援は大学としての大きな使命と考えている。具体的な支援活動として、農家の営農意向調査、津波被災農地の除塩手法、農地の放射性セシウムの除去、農地一筆ごとの詳細な放射能測定、昆虫類を使った放射能モニタリングシステムという5つのテーマを紹介する。
●試験操業の取り組みについて
相馬双葉漁業協同組合代表理事組合長
佐藤弘行
相馬双葉漁協は、操業海域が福島第一原発前を含む福島県海域の北半分を占めている。東日本大震災の大津波により港湾施設は漁協の事務所を含めて壊滅的な被害を受けるとともに、福島第一原発事故の影響から福島県海域での操業は自粛することに決定された。魚を獲ることができない日々が続き、漁業者だけでなく水産加工業者・仲買業者も息絶え絶えの状況になり、「このままでは福島の漁業の灯が消えてしまう、何とかしなくては、」ということから、平成24年6月22日より底曳船6隻でモニタリング調査結果に基づき安全性が確認されたタコ2種類、つぶ貝1種類の試験操業を開始した。平成28年3月現在では対象魚種を72種類まで拡大している。