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Vol.113 働きながら学ぶ決意 -5年目看護師の挑戦-

医療ガバナンス学会 (2016年5月12日 06:00)


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ひらた中央病院
看護師 平田愛

2016年5月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は5年目の看護師です。丸4年の看護師歴の中で、大学病院、特別養護老人施設、市中病院を経験しました。看護師になることは幼稚園の頃からの私の夢であり、そこに大きく影響したのは看護師である母親の存在です。看護大学を卒業後に初めて看護師として勤務したのは母校の附属病院でした。脳神経外科・心臓血管外科の混合病棟勤務では、葛藤の毎日でした。日々の看護業務で慌ただしく時間が過ぎていく中で、本当は「もっとこうしたいのに」、「もっとこうしてあげたいのに」の連続でした。
患者にとっての満足なケアは何かと考えることが十分にできず、リアリティショックを実感したわけです。大学病院では新人看護師が早く看護業務を円滑にできるように指導する先輩看護師(プリセプター)がいました。理想と現実の間で思い悩む私に、先輩看護師から気を張りすぎないようにとアドバイスをもらいましたが、命を預かる医療現場で手を抜いていい場面があるのかと悩みは尽きませんでした。
そんな中、突然の難聴、耳鳴り、めまいに襲われたのです。内耳窓破裂症と診断され、症状が改善しないために全身麻酔下の手術を受けることになりました。瘻孔(ろうこう)を閉鎖することで症状が改善することが多いと言われていましたが、術後の回復が思わしくなく、難聴やめまいで看護師を続ける状況ではありませんでした。まさか自分がなるとは思わなかった10ヶ月での「早期離職」を余儀なくされました。およそ2か月の自宅療養の中で、もしも体調を崩していなければ、もしも術後の回復が良好であったなら、と退職せずにいたはずの自分を想像しては後悔が残りました。

仕事復帰をどうするか、少しずつ自身の復調を感じながら焦りもありました。病院勤務という忙しい環境にいきなり戻ることへの不安もあったので、特別な医療処置を必要とせずに介護ケア主体の方が入居する特別養護老人ホームへ就職しました。この看護師2年目からの勤務では、医師が常駐していない環境で迅速な対応と的確な判断が求められました。体調変化をきたした入居者に施設内で対応ができるかそうでないかを判断し、もし対応が難しい場合は、入居者に付き添って提携医療機関を受診します。特に、この特別養護老人ホームでの業務の大半が入居者の医療機関受診の付き添いだったことから、病院勤務の看護師の姿を目にすることが多く、病院看護師として再度働きたいという気持ちが日に日に強くなりました。

その頃、看護師として病院に勤務する同級生たちの話も気になりました。同級生たちが看護師として病院での看護経験をどんどん積んでいっている中で、私自身も看護師としての知識や技量に遅れをとってはならないと感じていました。そのような中で、看護師求人サイトで検索しながら、福島県平田村で地域医療に取り組んでいるひらた中央病院を見つけました。病院勤務で幅広い領域の疾患が見られることだけでなく、その病院にバレーボール部があることを知りました。学生時代にバレーボール部だったこともあり仕事しながらバレーボールもできる環境に惹かれ、ひらた中央病院への入職を決め、2年の間をおいて病院勤務看護師へ復帰となりました。
このあと、大学病院勤務時代のプリセプターのありがたさを感じることになります。現在はその医療療養病棟で2年目の勤務になります。市中病院での勤務ということもあり、医療療養病棟に入院される方は脳神経系、呼吸器系、消化器系など多彩な疾患を持っています。これまでの大学病院での脳神経外科・心臓外科の知識・経験だけではとても足りませんでした。日々様々な入院患者との関わりから、これまでの教科書的な知識では決して得られない学びがあり、さらに楽しさや充実感を持って働いています。

また、ひらた中央病院に勤務してからあらためて感じることは、看護師の不足と離職です。私が勤務を開始する前から慢性的な看護師不足に悩まされていると聞きました。すでに全国で叫ばれて久しい看護師不足ですが、その背景として、交代制勤務による不規則な生活、長時間労働を含むハードな業務内容などがあげられます。皮肉なことに、平成18年の診療報酬改訂における7対1看護配置(一般病棟7対1入院基本料)では、看護師の過重労働を和らげ、患者にとって手厚い看護を実現することをねらったのですが、高い診療報酬を得るためにたくさんの病院が看護師の引き抜きや新卒看護学生の確保のために奔走し全国的な看護師不足が深刻化しました。さらに私も体験したリアリティショックです。看護師としての理想と現実のギャップで早期に燃え尽きてしまうことは看護師不足に拍車をかけてしまっています。

そこで私が所属する誠励会グループでの看護師離職問題について調査しました。2014年の離職率は11%と、全国平均をやや上回っており、その2014年離職者の平均勤続年数は3年3カ月、中央値は1年6カ月であり、3名が1年以内の早期離職でした。ここからも看護師不足への対策をたて、働き続けられる職場づくりを目指していく必要性を感じました。新人看護師のリアリティショックについて調査した研究1)から、「程度の差こそあれ看護師なら誰にでもリアリティショックが起きうることを前提としたうえで新人研修などの計画を立てる必要がある」とされており、それを乗り越えていくために新人看護師教育が院内で必要です。

ここで私は大学病院でのプリセプター制度を思い出しました。大規模病院では普通に行われている新人看護師教育が、市中病院では中堅看護師が通常の看護業務の片手間に担当していることが多く、新人看護師の看護力、知識が各教育担当の裁量に大きく依存しており、中堅看護師の負担も大きくなってしまっているのです。何か困った時に聞けるプリセプター看護師がいることの大事さを感じ、そこからさらに自施設での看護師不足解消には、新人看護師教育の充実をはかり離職を防止すること、また効果的な新人看護師教育マニュアルを作成して中堅看護師の負担を軽減することが最優先課題だと考えました。そこに必要なのは看護教育を学ぶことなのかとも考えるようになりました。

マンパワー不足にある現場で働きながら、看護師として必要な知識や技術そして経験をこれから積み重ねていく状況で、休職して進学することにためらいと不安がありました。上司との相談の中で、通信教育で看護教育を学んではと、星槎大学大学院を紹介されました。看護師養成施設教員を目指して教育学修士を取得することを、現場を離れることなくできるカリキュラムに魅力を感じました。
また、看護師不足問題について昨年11月に福島県いわき市で行われた浜通り看護研究会で、看護師をしながら星槎大学大学院で学んでいる横山絵美さんの発表を聞き2,3)、働きながら学ぶことや看護師教育に対するモチベーションが非常に上がり、2016年度から通信制大学院への進学を決意しました。もちろん働きながら学ぶことへの不安はありましたし、現在でもあります。入学試験に挑む時にも、大きなプレッシャーで押し潰されそうになっていました。

しかし、大きな心の支えは二瓶事務長、大沼総看護師長、渡辺看護主任を始めとした職場のたくさんの方々からの温かい励ましの言葉でした。無事合格して入学が決まった今、この進学にあたって職場の理解と全面的なサポートの大事さを実感しています。これに対する感謝の気持ちとともに、ひらた中央病院の更なる発展へと貢献できる学びを得たいと思っています。
2年間の大学院生生活の中で、看護教育への知識を深めつつ、自施設の新人看護師教育の実態についての研究を通し、現状に即した新人看護師教育マニュアルの作成を進めたいと考えています。そして、ひらた中央病院に看護師教育部を設立し、看護師個々の看護実践能力の向上を図り、よりよい看護を患者様に提供できるよう院内教育プログラムの企画・実施を進めていきたいと考えています。

[参考文献]
1) 勝原ら.新人看護師のリアリティショックの実態と類型化の試み.日看管会誌Vol 9, pp30-37, 2005.
2) 横山絵美.看護を学び続ける形としての通信教育.(口頭発表)浜通り看護研究会第1回大会, 2015.  http://www.hamadori-kango.jp/meeting.html(2016.4.21閲覧)
3) 横山絵美.看護を学び続ける形としての通信教育.ハフィントンポスト,2015.7.7.  http://www.huffingtonpost.jp/emi-yokoyama/nurse_b_7741930.html

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