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臨時 vol 304 「リセット禁煙のすすめ(8)」

医療ガバナンス学会 (2009年10月23日 04:40)


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         「秋-2」& デューラとは
トヨタ記念病院禁煙外来 磯村毅
リセット禁煙研究会代表  予防医学で医療崩壊を緩和する会発起人
 ある経営者から、こんな話を聞いたことがあります。「うちの社員はね、社長
の私に会いに来る前に一本吸ってから来るんだよ。何とかならんか」気持ちはわ
かりますね。社員は社長に呼ばれると心配になる。α波が減少してくる。それで
元気づけの一本が欲しくなるのです。大事な仕事の前には一本という話もよく聞
きます。
 ところが、非喫煙者には、そんな必要はありません。それを見て、喫煙者は、
自分と比べ、うらやましく感じたり、自信をなくしたりします。こうして禁煙が
ますます困難になるのです。特に妊婦の喫煙者は自尊心を損ないがちです。
 では、なぜ非喫煙者は社長に呼ばれてもタバコが要らないのでしょうか。強い
から?それとも何か特別なストレス解消方法を知っている?
 脳の中を考えれば分かります。思い出してください。非喫煙者の場合、不安に
なっても、自前のα波が出てくるのです。脳が元気だからです。軽く目を閉じて、
深呼吸を数回するだけでα波は増えます。外の緑を眺めるという方法もあります。
非喫煙者は社長室に向かう途中、無意識に深呼吸しているかもしれません。脳に
は本来、気持ちを和らげ、平静を保つ力があるのです。
 ところが喫煙者はこの力が弱っている。何かと不安が募りストレスを感じやす
い。それで、タバコの助けが必要になってしまうのです。
 喫煙者は、自分のニコチンの慢性的な影響による、不安の募りやすい、安らぎ
が感じにくい状態に気づいていません。それどころか、彼らはニコチンの急性作
用にのみ目を奪われ、喫煙者になる以前はどうであったか、という視点なしに、
単純に「タバコにより、安らぎが得られる」と考えてしまいます。そしてこの種
の「誤った期待」は、禁煙を開始しても様々な形で残存し、再喫煙の要因となっ
ていきます。
 それでこの「誤った期待」をリセットすることで、禁煙が継続しやすくなるの
です。さらに、妊娠・出産・子育てと、継続的にフォローして、繰り返しリセッ
トの確認をしていくことが重要といえるのです。
 その役割に適した、デューラ(ギリシャ語で出産コーチの意味)と呼ばれる新し
い職種がアメリカで発達してきたと、最近、知りました。これは、もともとは虐
待防止のために、まだ若く精神的に未熟なカップルや、シングルマザー、貧困な
どの問題を抱えた家庭、あるいは、裕福であっても都会に住み、近隣や両親から
支援が受けられない孤立しがちな妊婦などを対象とした、出産と育児のコーチと
して生まれました。
 デューラは必要に応じ、妊婦を継続的に訪問し、出産と育児の心構えをさせ、
出産に立ち会い、母と子との絆を育む手助けをします。赤ちゃんがまだお腹の中
にいるときから、妊婦の横からお腹の中の子どもに話しかけ、手でさすり、とい
うように、生まれてくる子どもの慈しみ方を実際にやってみせたりするのです。
 あるいは、夫や周囲の人との人間関係をよく保ち、自分の気持ちをコントロー
ルする練習を手伝ったりもします。そんなわけで、虐待予防やよりよい成育を目
的として、母親のライフスキルや自尊心の向上、あるいは禁煙の支援をするコー
チとして、デューラはよいモデルだと感じています。関心がある人にはデューラ
の紹介DVDも発売されています。
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