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臨時 vol 308 旧来の手法を覆した足立信也政務官のファインプレー

医療ガバナンス学会 (2009年10月27日 04:45)


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細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会
事務局長
高畑紀一
【旧来の手法が繰り返された週末】
10月16日に開かれた「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」において、13歳以上と妊婦についてはワクチンを1回接種とする方針が確認されたと、当日の夕刊を皮切りにマスメディアが一斉に報じた。
1回接種と2回接種のいずれが妥当なのか、専門家ではない私にはその妥当性を検証することは不可能に近いが、開催日当日の夕刊紙で既に「1回接種との方針が確認された」との主旨の報道がなされたことに、強い違和感を感じていた。
というのも、意見交換会は方針を決定付ける場ではなく、出された意見や交わされた議論を踏まえて、翌週に長妻厚生労働大臣が方針を決定、発表するとされていた。にも拘らず、「13歳以上・妊婦は1回接種」との方針が既定事実かのように報じられて
いたからだ。
当日や翌日に報じられた「13歳以上・妊婦は1回接種」は大臣が決定したわけではない。とすれば、誰が決めたのであろうか。一部メディアが当日の夕刊紙で報じたということは、意見交換会が終了する前から「13歳以上・妊婦は1回接種」との方針を追認するような議論が展開されるであろうとある程度の「確信」をもって、記事を用意していたからではないか。
何故、そのような「確信」が持てたのか?
報道では電話参加した岡部信彦国立感染症研究所感染症情報センター長が、「もし時間があるのであればパイロット試験を行い、中学・高校生のデータを取った上で判断した方が確実ではないか」と発言されたことが報じられており、慎重であるべきとの意見も出ていたにもかかわらず、である。
私には真相を知る術は無いが、しかし専門家から意見を伺ったところでそれ以前に用意された「既定の方針」があり、大臣の決定を待たずに「既定の方針」がなし崩し的に正式決定とされていくという図式は、見飽きた「旧来の手法」そのものであった。
政権交代により「官僚主導」から「政治主導」を掲げた民主党政権が誕生し、厚生労働行政においても大きな変化を期待している私にとって、この一連の流れは、大きな違和感を抱くと同時に、「やはり変わらないのかな」との諦めも頭の片隅にもたげてくるものであった。
【足立信也政務官のファインプレー】
この流れを変えたのが、足立信也厚生労働政務官である。
16日の意見交換会の報告を受けた足立政務官が、改めて19日に専門家を集め、意見徴収をおこなったのだ。
足立政務官は16日以降のメディアの報道に疑問を呈するとともに、議論をすべてオープンにした上で、現時点で判ること、判らないことをきちんと伝えるとし自ら司会を買って出たという。
そして、19日の議論を踏まえ、翌20日、「20歳以上の医療従事者は1回接種」とすること、1回接種の方針と報じられた「20歳未満13歳以上」「妊婦」については、当面、2回接種を前提としつつ、今後実施するパイロットスタディの結果を踏まえて改めて検討する、との方針を発表した。
これは、結果として16日の意見交換会直後に報じられた「既定の方針」を覆した格好となった。
私はこの足立政務官の行動を、「ファインプレー」だと感じている。
「13歳以上20歳未満」「妊婦」に対するワクチン接種は、1回と2回のいずれが妥当なのか、専門家ではない私には判断できない。
素人考えでも、インフルエンザという疾病の性質やワクチンの特性から考えると、いずれが妥当なのかという結論を導き出すこと事態、非常に困難なことのようにすら感じられる。
だが、直面する課題に対し、何らかの判断を下さなければいけないというのも、事実であろう。
いずれかの段階で、政府としての方針を示す必要があるであろうし、その際に、判断材料となるエビデンスが不十分のままである可能性も十分に考えられる。
それでも、言葉は悪いが「えいっ!」と判断する局面はやってくる。問題は、誰がその「判断」を下すのか、そして、それまでにどのような議論と情報公開がなされるのか、ということだと思う。
旧来は厚労官僚が方針を策定し、検討会等で専門家の意見を徴集しつつも、あくまでも、それは「確認作業」であって、官僚が作製した方針の追認作業に矮小化されていた感がある。
しばし、検討会や審議会などが「アリバイ作り」と揶揄されるのもこのためだ。
もちろん、課題によっては官僚が相当に踏み込んだたたき台を作製することは必要となる場合もあるだろうし、結果としてそのたたき台が「追認」されることも全面否定されるものではない。
しかし、旧来のこの手法がもたらした大きな弊害が如実に現れたのが医療崩壊といわれる現在の我が国の医療であり、ワクチン行政である。
もちろん、官僚主導の政策決定に対する弊害の指摘や批判は医療分野に留まるものではない。
脱官僚を掲げて、政治主導を実現するとした民主党が政権与党の座に着いたのも、多くの有権者が旧来の官僚政治からの脱却を望んだからに他ならない。
【政治主導の徹底を】
今回の足立政務官の行動、そして大臣以下政務三役の決断は、改めて「政治主導」の政策決定を意識させてくれたとともに、「官僚主導」の政策決定の流れに慣れきってしまった官僚そしてメディアの「意識のズレ」を浮き彫りにした。
新型インフルエンザ対策は、国民全体の関心事であり、現実問題として社会全体で取り組むべき施策である。
そして、もっとも「官僚主導」がふさわしくない施策の一つでもある。
社会全体で取り組むべき課題であるからこそ、広く国民に情報を提供し理解を広める努力が不可欠である。
「えいっ!」と判断を下さざるを得ない局面に至るまでに、可能な限り情報を集めた上で、判ること、それでも判らないことをはっきりと国民に示し、社会全体の合意形成を図るべき課題であろう。
ワクチン・ギャップの解消を願う私としては、今回の「騒動」を良い経験とし、ワクチン行政の政治主導による改善を望むものである。

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