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Vol.209『アメリカで学んだ進路の決め方』~医学部進学の違い~

医療ガバナンス学会 (2016年9月16日 06:00)


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マサチューセッツ大学
王洋

2016年9月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は、去年の秋よりアメリカのボストンの大学で生物学の勉強をしている。将来はメディカルスクールを目指している。大学で多くの学生と交流していると、日本とアメリカの進路、進路に対する考え方 に大きな違いがいることに気づいた。

日本は将来の進路を決める時期が少し早いと思う。日本では文系、理系を高校2年生になる前に決めなければならない。しかし、16、17歳の少年、少女は十数年という短い時間の中で、将来の仕事を決められるであろうか?日本の平均寿命85歳とし、退職は65歳である。大学卒業を23歳とすると、42年間つまり人生の半分を16、17年間の経験で決めていいのだろうか?
特に医者、弁護士などは生涯の職となる。アメリカでは医学部、法学部の入り方が日本とは異なってくる。アメリカでは、まず4年制の大学を卒業し、メディカルスクール、ロースクールにその後また4年間通うことになる。また、4年制の大学でも2年生までは教養の勉強が中心となり、2年生の終わり頃に専攻を決めることができる。さらに、80パーセントの学生が専攻を一度は変更したことがある。つまり、アメリカでは医学の道に進むかどうか、日本より4年も多く考える時間があるのだ。

アメリカでは、将来の進路について考える時間も多いいが、実際に興味のある分野の現場に立ち入る機会も多いい。私は、次の学期からEMTのコースを受講する。EMT (Emergency Medical Technician) は日本でいう救急救命士のことである。このコース終了後、ライセンスを取得し、EMTとして働くことができる。メディカルスクールを目指す多くの学生はこのコースを受講する。
私は、ライセンス取得後、実際にEMTとして働き、医療現場に立ち入り、本当に医学の道に進みたいのかをもう一度確かめたいと思っている。他にも、病院でのボランティア活動、医療関係の研究所でのインターンシップなど、アメリカでは自分自身が将来何を職にしたいのかを見つける機会が多いいのだ。大学生だけでなく、高校生でも病院でボランティア、研究所でインターンシップなどができる。高校時代に留学していた高校では、近くの州立大学と連携し、夏のインターンシップなどが行われていた。

では、多くの経験を経て、医学の道に進みたいと決意したとき何をすればいいのか?まずはメディカルスクールに入ることだ。アメリカのメディカルスクールに入るには、学部、学科などは関係がない。各大学が指定している科目の単位を取得するだけであり、専攻などは関係がない。ほとんどの大学は、生物、化学、物理、数学の受講を必要としている。また、MCATというメディカルスクールに入るための統一試験、いわゆる、日本のセンター試験のようなものを受ける必要がある。GPAもとても大切だ。
メディカルスクールに入るためには少なくともGPA3.5(4.0が満点)は必要と言われている。全米の4年生大学の卒業平均GPAはだいたい3.1で生物学部の平均は3.02、化学学部は2.78である。それらに加え、ボランティア活動、推薦状、スポース、音楽、アートなど学業に関係のない課外活動などもが採点の対象になる。また、メディカルスクールを受験する時期も人それぞれだ。4年制大学を卒業し、医学に関係のない仕事を何年かし、その後メディカルスクールに入学する人もいる。アメリカのメディカルスクールは多くの経験のある学生を求めている。日本とは違い、入試の点数のみで決めるのではなく、一人一人の才能、経験またコミュニケーション能力を評価している。

私は現在、学校のテニスチームに所属し、大学のマスコットでもある鷹 (River Hawk) の生態調査を行っている研究室で活動をしている。私たちの観察している鷹は一年生の住む寮(18階建てで町では一番高いビル)の上に住んでいる。鷹の家族にもドラマがあり、驚いた。今年の6月に継父の鷹が子供の鷹をビルの上から突き落とした事件などもあった。
学校内に新たな建物が建設されたため、鷹が新しい建物に衝突し、負傷する事件が去年に比べ増えた。友人の一人はボランティアで毎週中学校に行き数学を教えながら、カヌーのチームに所属し、毎朝5時からの朝練にも参加している。ルームメイトは私と同様にメディカルスクールを目指しており、平日は授業終了後に遺伝子学の研究室でボランティアをしており、毎週末になると学費を稼ぐためにアルバイトをしている。

アメリカでは、医者になる前までに多くの分野でいろいろな経験ができるが、それなりに時間も精力も必要だ。メディカルスクールを目指している生徒はプレッシャとストレスに勝てず、学士卒業前に医師になるのを諦めてしまうケースが多いい。友人で大学2年生の秋、医師の道を諦め、今では機械工学の勉強をしている。アメリカでは、4年制の大学プラス4年間のメディカルスクールで8年間かかるのに対し、日本では6年間で卒業できる。高校卒業の段階で医者になると決意したのならば、2年も早く卒業できる日本の医学部に行く方がいいと思う。

アメリカのメディカルスクール制度が合う人も日本の医学部制度に合う人も人それぞれだ。日本では開業医が多く、その開業医の子供が病院を引き継ぐことが多いい。しかし、アメリカでは、開業医が比較的少なく、子ども自身が将来を自分で考えることができ、時間もある。それに比べ、日本の開業医は結局医者になるのだから2年間も多くの時間と費用を費やすことに必要性を感じない人が多いいのだ。
その影響で、日本ではアメリカのような制度を導入することが難しいのだ。しかし、高校生で生涯の職を決めるのが困難中、韓国のような6年制医学部制度もあり、4年制のメディカルスクール制度もある医学教育も魅力的だ。進路に迷っているのならば、日本国内の大学だけではなく、海外の大学に目を向けるのも一つの手だと思う。

1997年 広島市生まれ
2004年 上海市高安路第一小学校に一年間在学
2012年 アメリカ ニューメキシコ州Onate High Schoolに一年間留学
2015年 跡見学園高等学校卒業
2015年 アメリカ マサチューセッツ大学入学

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