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臨時 vol 51 「医学教育、臨床研修制度の現場から」

医療ガバナンス学会 (2009年3月13日 14:21)


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横浜市大学附属病院神経内科
鈴木ゆめ

 



昨日私たちの大学では、「案」としてでている「今後の臨床研修制度の概要に
ついて」というものをもとに研修プログラムの変更を検討するということになり
ました。たしかに研修制度の見直しがなされているようですが、急に何かよい方
向にかわるのでしょうか。現研修制度の下、すっかりと地方の医療体系が崩れて
しまった今、講じる策があるのかないのか、さらなる崩壊を止める気のある人は
いるのかいないのか、現場で臨床や教育にあたっている者ならだれもが思ってい
ることです。

そもそも改革、自由化の美名の下、大学から研修医をはぎ取り、どこもかしこ
も人手不足を作っておきながら、だれもその責任をとろうとするどころか、問お
うとする人もいやしない現状はなんなのでしょうか。

西の大学では小児科医が10人去り、東の神経内科でも9人が一般病院 に逃げて
しまったそうです。

専門医制度が浸透し、一方で学位が臨床医にとっては非常に取りにくくなって
います。文部科学省のご指導があるとのことで、学位論文は査読付きの原著英論
文でなければ認められません。しかしたとえば卒後10年も経った臨床畑の人が学
位を取るのに、そのハードルにはかなりな困難があります。我々のような凡人が
限りある能力と体力で、一般病院化した大学病院で急患対応に追われながら研究
をすることも、今や難しくなっています。研修の必修に入っていますから大学病
院も救急をやるのは当たり前で、しかもたしかにこれほど大きくスタッフもそろっ
ている病院で、緊急をみないなど許されることでもありません。 

私は大学病院のよりどころは、大きいこと、層が厚いこと、先端医療をするこ
と、そして研究ができ、学位が取れることだと思いますから、どこでもわからな
いような難しい症例、合併症の多い症例、危険な症例、そういったものを受けて
当然だと思います。ただ、それでいて、研究の時間が少なく、しかも学位取得条
件が闇雲に難しくなるのでは、だれが大学に残りたいでしょうか。

私は大学にはもっとてこ入れし、肩入れしてもいいと思っています。分厚い層
にして緊急もそして、研究もこなす体力を与えないと、どんどん人は離れていき
ます。大学を壊すことの意味は何でしょうか。壊すには、力も金も掛かるはずで
す。しかし、着々と壊れる方に向かっています。「研修医の募集定員の試算」で
も神奈川県では46人の減、そしてその「減」は大学病院で追う予定のような話の
流れでした。あくまでも、大学病院の強化は予定にないようです。

医学部講座制破壊の御旗は隠されつつ運ばれました。医学教育の画一化、学体
系の破壊、これは大学医学部の講座制を壊し、その長たる主任教授の力を削ぐこ
とに利用されたように思えてなりません。大講座の教授に不都合な点のある大学
があればそこを直せばいいのであって、うまく行っている全国津々浦々までを壊
すことには、全く別の意図を感じざるを得ませんでした。それでも粛々と、上意
下達で行われた改革は、私たちの大学では忠実にしかも粛々と進められました。
このような道を選んだわが大学医学科を、いままで支えたのは、教官と学生の基
礎体力、および、横浜でその昔十全病院といわれていた頃から親しんでくれた横
浜市民の応援だと考えています。

 医療や福祉は見返りを求めるものではありません。経営はとんとんであれば
よいのでしょうが、しかし、今の医療経済体制では、医者が頑張らないと患者は
助かりません。重症の管理、寝ずの番を交代でできればまだいい方です。それが
できる病院の一つが層の厚くなった大学病院です。

今年、卒業生60人のうち、10人しか福浦には残りません。もうひとつの病院の
4人を合わせても3/4が流出です。

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