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臨時 vol 336 「副作用被害防止」と「ドラッグ・ワクチンラグ解消」は相反するのか 

医療ガバナンス学会 (2009年11月16日 11:57)


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細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会事務局長

高畑紀一


【煽られる対立関係】

ドラッグ・ワクチンラグの解消を求めて活動していると、「あなたたちはラグ
解消を求めるが、一方で副作用被害もあるんですよ」と、「あちらを立てればこ
ちらが立たず、相反する二つのバランスをとらなければいけない」という主張に
出くわすことがある。ラグ解消を進めると副作用被害が発生しやすくなり、副作
用被害への対応を進めるとラグが拡大するという、あたかも「副作用被害防止」
と「ドラッグ・ワクチンラグ解消」の双方を実現することは難しいかのように言
われるのだ。そして「副作用被害」と「ドラッグ・ワクチンラグ解消」は対立関
係にあるかのように煽られることすらある。果たしてこの二つは相反するのであ
ろうか。

確かにいずれかを「ゼロ」にしようとすれば、それは相反する関係になる。ド
ラッグ・ワクチンによる副作用被害をゼロにする方法はただ一つ、ドラッグ・ワ
クチンの使用を全面的に禁止すればよい。この場合、全てのドラッグ・ワクチン
がラグの状態におかれる。ラグをゼロにするのなら、世界のいずれかの政府が承
認したドラッグ・ワクチンを全て日本で承認すればよい。この場合、副作用の発
生リスクは現状よりも格段に高くなる。

私は、上記のように「ゼロ」を志向するのではない限り、副作用被害防止とド
ラッグ・ワクチンラグ解消は相反するものではなく、むしろ、いずれをも可能な
限り「最小限に抑える」ための方策は、一致するものだと考える。

【根源は同じ】

ドラッグ・ワクチンには主作用(効能・効果)と副作用という不可分の作用が
ある。主作用を期待しドラッグ・ワクチンを使用する以上、副作用は絶対にゼロ
にはならない。

そうであるならば、副作用被害を最小限に食い止める方策が重要となる。副作
用被害を最小限に食い止めるためには、報告される副作用情報に対して速やかに
対応しなければならない。副作用情報を速やかに分析し、迅速に臨床の現場にフィー
ドバックする。そのことは副作用の拡大を防ぐと同時に、ドラッグ・ワクチンの
安全な使用を維持することにも繋がる。副作用被害を最小限に食い止めつつ、主
作用による治療・予防というメリットを最大限に享受する、これがドラッグ・ワ
クチンの適切な使用の本筋であり、薬務行政が果たすべき役割である。

この役割が十分に発揮されていないが故に、副作用被害が拡大し「薬害事件」
が生じ、逆に、必要以上に副作用を恐れ「ドラッグ・ワクチンラグ」を生じてい
るのが我が国の現状であろう。つまり、ドラッグ・ワクチンの副作用への対応が
適切になされないことにより、副作用被害が生じ、また、ドラッグ・ワクチンラ
グが生じているのであり、両者とも根源は同じなのである。サーベイランスが不
十分であり、副作用が生じた場合の対応が稚拙であり、訴訟リスクを抱える国、
それが日本であり、これらを改善しなければ副作用被害の再発防止もドラッグ・
ワクチンラグ解消も実現はできない。

副作用への迅速な対応がなされずに被害を拡大した不幸、被害者が救済を受け
るために訴訟を起こさなければならない不幸、世界標準のドラッグ・ワクチンが
使用できずに命を落とす不幸。薬務行政のあり方は、これらの不幸を繰り返さな
いために見直されるべきであり、現政権に課された使命であろう。

【「適応外使用制限」は本質を理解していない対応】

現在、厚生労働省が設けている「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医
薬品行政のあり方検討委員会」では、この副作用への対応について議論が積み重
ねられている。参加されている委員は、様々な立場から、上記の不幸を繰り返さ
ないために、真摯な議論を展開されている。しかしながら、残念なことに「ドラッ
グ・ワクチンラグ」の存在を良くご存じない委員がいるのも事実であり、そのた
めに非常に危うい提言がなされている。ドラッグ・ワクチンが有する不可分の主
作用と副作用という二つの作用に、いかに迅速に対応するのかを検討すべきであ
るのに、主作用を受けられない「ラグ」という被害を過小に見積もって、「適応
外使用」の大幅な制限を打ち出している。

ドラッグ・ワクチンの薬事法上の「適応」は、そのドラッグ・ワクチンが有す
る本来の主作用とイコールではないことは周知の事実である。その適応を指標と
して使用を大幅に制限するということは、適応から漏れている主作用をゼロにす
ることであり、先に述べた先に述べた主作用・副作用のいずれかを「ゼロ」にす
る方策と同じである。

主作用と副作用のいずれかを「ゼロ」とする対策では、国民は幸福にはならな
い。ドラッグ・ワクチンが有する二つの作用への迅速な対応こそが本質的な問題
解決であり、「副作用被害防止」と「ドラッグ・ワクチンラグ解消」の双方を実
現する、薬務行政が果たすべき本来の役割である。「副作用被害防止」と「ドラッ
グ・ワクチンラグ解消」は相反するものではなく、不可分のものである。このこ
とを十分に理解した上で、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行
政のあり方検討委員会」が議論を重ね、現実的かつ有効的な対策を講じることを
切に願うものである。

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