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Vol.258 現場からの医療改革推進協議会第十一回シンポジウム 抄録から(8)

医療ガバナンス学会 (2016年11月23日 06:00)


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2016年11月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2016年11月27日
【Session 08】専門医制度 14:20~15:30

●若手医師からみた新専門医制度の問題
森田麻里子

新専門医制度が検討されるなか、当事者である若手医師は議論から置き去りになっている。私は仲間と協力して6月に厚労大臣宛の陳情書を提出し、その後、新制度の開始は1年延期されることが決まった。10月には厚労大臣と面談の機会を得て、意見を述べてきたが、未だに専門医機構の中でも議論は噛み合っていない。新専門医制度の最大の問題は、医師養成における多様性を奪うことだ。この問題はさらに3つに分けられる。

1つは、地域医療への影響だ。現在、福島県浜通りには被災地で活躍したい若手医師が集まっており、地域医療に貢献し臨床能力を磨きながら、論文執筆なども精力的に行っている。しかし新しい制度では福島県立医大などの大学に所属しなければならず、このような働き方は認められなくなってしまう。

2つ目は、女性医師への影響である。後期研修医になる時点で最短でも26歳、専門医を取得する30歳過ぎには妊孕性は低下し始めることを考えると、子供を持ちたい女性医師が、研修中に出産育児を考えるのは普通のことだ。しかし新制度では働く場所や期間に制限が多いため、どんなに多くの症例を経験し、能力を磨いても、その後産休や育休の取得、非常勤勤務の期間があると、なかなか専門医受験資格を得られなくなる。専門医認定においては、研修期間や働く場所ではなく、経験症例数や試験によってきちんと能力を評価すべきだ。

3つ目は、将来の医療水準が低下する可能性があることだ。新制度の画一的なローテーション制度で育成されるのは中途半端な医師だ。様々な珍しい病気を見たことはあっても、自分で責任を持って治療を行う経験を積むのは遅れる。若いうちに訓練する機会を逸し、高度専門医療の技術レベルは低下する。さらに厚労省は医師の「偏在」対策として専門研修プログラムの定員を操作しようとしているが、今後医師の計画配置が行われるようなことがあれば、優秀な人材が日本の医療界を去っていくだけだ。
何のため、誰のための専門医制度なのか、もう一度きちんと議論し直すべきだ。

●「新」専門医「制度」とは若手医師奴隷化制度か
遠藤希之

ラム責任者と「臨床研修医世話係」といった位置づけの医学教育支援室・室長を務めている。
当院は今回の「新」専門医「制度」において、内科教育プログラム基幹病院として手を上げた。自分は一昨年から情報収集を行い、実際に内科プログラムの作製にも携わってきた。その結果、この「新」専門医「制度」なるものは問題だらけであることが判った。正直どの問題を取り上げるべきか迷うくらいだ。ひとまず今回は、基本19領域全てがカリキュラムのハードルを異様に高くしたがゆえ、研修基幹施設数が激減し、結果として生じる問題に絞りたい。

具体例を二つ挙げる。現行制度→「新」専門医「制度」になった場合、外科は2,072→188、整形外科が2033→104、とこの2領域での基幹研修施設は実に1/10~1/20に減少する。
ではいかなる病院が基幹施設となるのか。言うまでもなく大学病院だ。

外科では22の、整形外科では28もの道府県で、基幹施設が一大学病院ないし医学部数と同数に限られてしまう1)。この2科はまだマシかもしれない。38~39もの道府県において大学病院のみが基幹施設になっている領域もあるのだ(放射線科、泌尿器科、眼科、耳鼻科、リハビリテーション科)。さらに20~30の道府県では内科を除いた他領域でも基幹施設=大学病院である。大学病院以外の基幹施設がある自治体についても大学主導の状況はさほど変わらない。

各学会幹部や専門医機構は、3年間の研修期間中、最長2年は連携施設での研修が可能であるため、医師偏在問題を含めなんら支障はないと言う。しかし連携施設の選択権を基幹施設が握るのは火を見るよりも明らかだ。若い専攻医達は研修先選択の自由を奪われることになる。しかも彼らの雇用形態、身分保障はなんら考慮されていない。これを大学医局制度の復権といわず、なんと言うのか。若手医師を奴隷化し「医師派遣」で大学医局が権益を伸ばすシステムとしか思えない。「新」専門医「制度」など直ちに白紙撤回すべきである。1)厚生労働省、社会保障審議会、第三回専門医養成のあり方に関する専門委員会資料による
●雇用者の立場から見た新専門医制度
及川友好

新専門医制度は多くの問題を抱え、その開始が1年先送りされた。また、「一度立ち止まって検討の場を設け、地域医療への影響などについて、集中的な精査を早急に行うこと」との塩崎恭久厚労大臣の発言は、新専門医制度の問題の根深さを物語る。
そもそも日本専門医機構はプロフェッショナルオートノミーを理念の一つに掲げており、本来ならば政治の介入は皆無のはずである。様々な問題が表面化するまで、われわれ臨床の現場では政治色を感じることはなかった。

さて、福島県太平洋岸北部に位置する南相馬市は、東日本大震災による地震、津波、原発事故のトリプル災害に蹂躙された地域である。住民の90%が一時避難を経験し、地域も医療も一時崩壊する憂き目を見た。当時、地域基幹病院の副院長だった私は、震災後も地域に留まり地域と医療の復興を目の当たりにし、また直に関わってきたが、震災後ほど医療と地域が等価だと感じたことはない。医療復興なくして地域の復興もあり得なかったと実感している。

震災後、多くの方々の支援に支えられ、当院は医療スタッフの確保に成功した。中でも初期研修指定病院に認定されたことは、医師スタッフの確保のみならず、様々なメディアへ登場する端緒にもなり、病院に大きなアドバンテージをもたらしたが、新専門医制度はわれわれのような地域の小規模基幹病院に恩恵をもたらすだろうか。新専門医制度は領域毎に内容が異なり、それぞれに対応が求められ複雑である。また、制度そのものは大学病院や大規模病院の運営に有利なものと映る。現時点で公開された情報をもとに、当院に属している初期研修医が新専門医制度に移行したとすると、病院側にはどのような不利益が生じるか、また病院側はどのような方策をとるべきか、それらについて後期研修医を雇用する立場から考えてみたい。
●うまれかわった日本専門医機構
羽鳥 裕

新たな専門医の仕組みについては、地域医療への影響やさまざま準備不足から1年間延期され、当初の平成29年度4月の導入の予定が、平成30年4月の導入となったところである。
以下は、日本専門医機構の新執行部(吉村博邦理事長)の理事会での決定事項である。

1.日本専門医機構の基本姿勢
(1)機構と学会が連携して専門医の仕組みを構築することを基本姿勢とする。
(2)機構と学会の役割分担の明確化を図る。学会は、学術的な観点から、責任をもって研修プログラムを作成する。
(3)機構の役割
(ア)機構は、専門医の仕組みを学術的な観点から標準化を図る。
(イ)専門医を専門医機構認定の資格として認証する。
(ウ)専門医に関するデータベースを各領域学会と共同で作成する。
(エ)専門医の仕組みを通して、国民に対し良質な医療を提供するための諸施策を検討する。
(4)社員との関係
社員との情報の共有を図る。
設立時社員、学会社員と理事会との定期的な情報交換の場を設定する。
機構の根幹に関わる重要事項については、社員総会で議論を尽くす。

2.地域医療の確保対策について
各領域学会に対し、地域の医師偏在防止対策の現状についての意見を求め、また、更なる具体的な対策案を募る。

3.その他
整備指針の見直し、基準等の柔軟な対応、暫定措置を講じるなどを含め、広く具体的な対応に関わる意見を求める。
日本医師会では、現行の医療提供体制が国際的に高い評価を受けていることから、急激な制度改革は避け、かかりつけ医という強固な土台をもつ日本の医療制度のなかに、専門医の仕組みをどう生かしていくかが最も重要な視点であると考えている。
また、日本専門医機構では、小児科、整形外科、耳鼻咽喉科、病理、救急、形成外科が平成29年4月からの暫定プログラムの導入を決定しているが、学会からのヒアリング等を終え、新たな専門医の仕組みがうまく運営されるよう努めているところである。

●専門医研修
土屋了介

1.専門医研修の目的
医師以外の職業と同様に大学を卒業した時点では、知識はあるが、実戦力とはならないので、職場教育としての研修(レジデント制度等々)が必要である。したがって専門医研修の目的は医療の戦力となる医師の養成が目的である。

2.研修内容(プログラム)一人で判断し、診療を管理・運営できる、すなわち、経営できる能力を身に着ける研修内容であることが必要である。したがって、十分な症例数と、適格な指導者、良好な診療・教育環境、的確な病院管理体制の下での研修が行われることが必要である。

3.資格取得条件一人で的確な判断ができることが資格取得の条件である。すなわち、当該専門分野の全ての技術を持たなくても、持たないことを自覚し、周囲の援助を求められる判断力があることが必要である。

4.研修施設十分な症例数と、的確な診療を実践している指導医、良好な診療・教育環境、新規の医療を開拓する探究心・研究心を持つ医療職能人などが備わった病院が研修施設となる。

5.指導者
人格者であること。

6.専門医の種類と専門医の数患者・国民が必要とする専門分野と、専門医のほとんど全ての者が、技量・知識・知恵が維持できる症例数を経験できることが、専門医の数を規定する。

7.運営母体
職能集団としての自覚を持った医師の集団。

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