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臨時 vol 50 「一開業医から勤務医の先生方へ」

医療ガバナンス学会 (2009年3月12日 14:21)


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おその整形外科・院長、東京保険医協会・広報理事
於曽能正博



大古の昔から洋の東西を問わず、国や組織などを壊そうとする時、最も簡単で
効果のある方法は内部抗争を誘発する事でした。上手く火種をつけることができ
れば、あとは外から何も手を加えなくとも勝手に崩壊していきます。

開業医に不満を持つ勤務医は、少なからずいらっしゃるようです。確かに、あ
まりにもひどい勤務医の状況に比べれば、開業医は若干はましかもしれません。
しかし、開業医を批判すれば、勤務医の状況はよくなるのでしょうか。

例えば、昨年4月診療所から病院に医療費が回されましたが、勤務医の状況は
改善されたのでしょうか。ほとんど変わっていないと思います。一方、この改定
によって開業医の所得は大きく減少しました。

これがこの国のやり方です。批判を利用して一方にわずかに手当てをし、他方
は大きく下げる。

過去何回かの改定によって病院・診療所ともに厳しい状況に置かれています。
今後、同じように診療所から病院へ医療費を回すような論議がおきたら、開業医
と勤務医との対立が始まるでしょう。

診療科毎に、また臨床経験や手術の巧拙によって診療報酬を設定しようという
動きがあります。これも結局厚労省に利用され、大部分の科で点数が下げられる
だけの結果に終わることは明白です。ただでさえ複雑な現在の点数を、さらに複
雑にする必要はありません。

少し話は変わりますが、私は労働基準法に従った勤務時間が守られ、当直時や
待機時などを含め正当な超過勤務手当が支払われるだけで、開業医に対する勤務
医の先生方の不満のかなりの部分が解消されるのではないかと考えています。

真夜中に受診する患者さんの中には、「割増料金を払っているのだから昼間よ
り丁寧な診察・検査・治療を受けて当然」とおっしゃる方もおられます。ここま
でいかなくても、一般の方は当直明けの医師が次の日も働いているとは想像もし
ていませんし、説明しても信じません。そもそも当直というのは労働基準法41条
に示されているように入院患者さんの状態の監視等が仕事です。外来の患者さん
をを診ることは深夜勤務であり、当直ではありません。

また、せっかくの休日なのに自宅待機で酒も飲めず外出もできずに拘束され、
結果として何もなかったから手当てなしというのも異常です。この意味ではどこ
かの国の首相が言うように「医師は非常識」なのかもしれません。

開業医・勤務医を問わず、所得はマスコミや金融業などに比べ低いのです。

以前、あるテレビ番組で和田アキ子さんが「えっ。お医者さんの給料って、そ
んなに安いの?」と発言していた事を私は覚えています。

開業医は、病気になり休業すれば直ちに収入の道は閉ざされ、かつ職員の給料
・家賃・銀行からの借入金などは支払わねばなりません。また、退職金もありま
せん。

収入と所得は全く異なりますが、マスコミは意図的に混同して報道します。収
入から経費を引いた所得は、今や勤務医と変わらないか、低くなりつつあります。

開業医は経営者であり、医学以外の様々な雑用に時間を取られます。よく標榜
診療時間だけしか働いていないと誤解されます。休日夜間の診療当番や学校医の
仕事もあります。

また内科などでは、患者さんの具合が悪くなったために楽しみにしていた家族
旅行が中止になったり、子供の授業参観や運動会を欠席ということもしばしばで
す。(このあたりは、勤務医でも同様かと思いますが。)

開業医はほぼ100%勤務医を経験しております。従って、我々開業医は不充分
とは思いますが勤務医の置かれている厳しい状況を少しは理解しているつもりで
す。

医療崩壊が始まっている今、大切な事は診療科・医療機関の種別を問わず全て
の医師が団結する事ではないでしょうか。

私が理事を務める東京保険医協会には、勤務医委員会があります。

勤務医の先生方にご参加いただけることをお待ちしております。

参考資料
やむを得ず収入比較を行いましたが、何か虚しいものを感じます。

医師は極端な高収入は望んでおりません。自身の健康を心身ともに確保しなが
ら、余計な心配事なしに患者さんと向き合って診療を行い、医学の勉強を続ける
ことができればそれでよいのです。

平均年収2008年版・上場企業年収ランキングより)
A放送    (1605万円 平均年齢40.3歳)
Bテレビ   (1572万円    同39.7歳)
C(マスコミ)(1570万円    同49.1歳)
D(総合商社)(1435万円    同41.4歳)
Eテレビ   (1427万円    同39.9歳)
F商事    (1423万円    同42.8歳)

生涯賃金(就職・転職情報ナビより)
G(製造業)      61,000万円
Bテレビ        60,000万円
A放送         59,000万円
Eテレビ        56,000万円
H投信         55,500万円
I(投資顧問会社)55,000万円

平均手取り年収(2006年分・日本医師会資料より)
個人立診療所開設者 1070万円 平均年齢59.4歳
勤務医師       970万円     同41.2歳
中小企業経営者   1190万円     同・不明
航空機操縦士    1050万円     同・不明

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