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臨時 vol 367 「「現場からの医療改革推進協議会」第四回シンポジウムに参加して」

医療ガバナンス学会 (2009年11月26日 06:19)


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早稲田大学大学院政治学研究科政治学専攻
ジャーナリズムコース1年 今野 大一

2009年11月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

http://medg.jp


【初めに】

今回、友人の紹介で上昌広先生が主催するこのシンポジウムの運営のお手伝い
をさせていただきました。医療については、小松秀樹先生の『医療崩壊「立ち去
り型サボタージュとは何か」を読ませていただいた以外は、主体的に情報を得た
ことは無いという大変不勉強な状態のまま携わらせていただきました。

参加する以前の日本の「医療界」のイメージは、病院や行政、患者などセクター
ごとに意見や立場がまとまっており、それゆえセクターごとに意見が対立してい
るというものでした。例えば患者が病院を訴える、厚生労働省の対応に病院が不
満を漏らすといった偏ったイメージです。しかし、このシンポジウムに参加した
ことで、セクターは関係なく、行政の中にも様々な見解や意見をもった「人」が
おり、医療に携わる方々の中にも異なる見解や意見があるということを知りまし
た。また医療現場で人の命を助けるために働く医師の「顔」が見えるシンポジウ
ムだったと思います。

またもう一つ振り返って考えたことがあります。私のように、セクターごとに
同じ立場や見解を持っているというイメージを持っていると思っている学生は意
外に多いのではないかということです。つまり、医療の世界と特に私の様な若い
世代の人たちは、関わる機会が少ないため断絶してしまっているのではないかと
思いました。

それゆえ、このように医学生や医療界の方々の「生の声」を聞くことができる
シンポジウムは非常に有意義な物でした。また、セクターも異なり、考え方も異
なる人々を集わせ、討論するこのシンポジウムのあり方は素晴らしいものであっ
たと感じています。それでは私が参加したプログラムの中で、特に私が強く感じ
たことについて述べさせていただきます

【医療改革の現在】

木戸寛孝(医療志民の会 共同事務局長)さんのお話は大変印象深かったです。
一つ目はマニフェストへのロビー活動についてです。「国民の手に医療政策の主
導権を奪回する」、「国民が医療政策の合意プロセスに参画できる仕組みを作る」
という試みは本当に素晴らしい物であり、もっと多くの人々に活動を知ってもら
うことが必要だと思いました。

西川美和監督の『ディア・ドクター』の試写会と連動した臨床研修教育制度の
あり方を考えるシンポジウムといった取り組みは、私の様な一学生でも興味をそ
そられます。また、サラリーマンやOLを対象とした「丸の内・朝大学」での「ビ
ジネスマンが知らねばならぬ「CDK」?良医を見分けられる基礎知識も身につく」
という講座は、ニーズがあるのになかなか見かけないイベントだと思います。こ
のように「入り口=エンターテイメント」「出口=医療問題」のような、一般市
民に開かれた活動は今後の日本社会にとっては更に必要性が増してくると考えま
す。

特にこの「入り口=エンターテイメント」「出口=医療問題」の試みは、我々
大学生同士でもできることだと思います。その際、ただイベントを実施するので
はなく、医学生も他の学部生も大学院生も専門学校生も共に取り組み「学校や学
部の垣根を越える」コミュニティができれば素敵だと思います。学生同士のネッ
トワーク形成だけでなく、医療について学び意見交換し合うことで潜在的な医療
リテラシー醸成の場にもなると思います。将来社会に出て行く学生が医療に興味
を持つことや、医学生の友人ができることは「医療が身近になる」という点にお
いて重要だと考えます。草の根の活動自体が継続することによって、少しずつ状
況は変わっていくと思いました。

【医療費】

亀田隆明(鉄蕉会亀田総合病院 理事長)先生の「公立病院では他会計からの
繰り入れや補助金頼みの運営を余儀なくされている」現状のデータに驚かされま
した。千葉県立病院と東京都立病院において自治体の他会計を繰り入れているデー
タと、他会計繰り入れ分を差し引いたデータを見比べる。すると医業収支では、
東京都立病院の方が、赤字幅が大きくなるというものだった。このような現状は
メディアでは伝えられていないことだと思います。また、清郷伸人(転移がん患
者・混合診療裁判原告)さんのお話をお聞きし、改めて混合診療を巡る政策の課
題解決が必要だと感じました。

上先生のドラッグ・ラグについての講演を聴いて、メディアが「伝えるべき問
題」と「国民の知りたいこと」に乖離があると思いました。メディアが「伝える
べき問題」を国民にまず提示しなければ、国民が「伝えるべき問題」に興味を持
つことはないのではないかと感じた。押尾容疑者の薬物報道を私は毎日チェック
していました。しかしドラッグ・ラグの問題まで踏み込んで考えることはありま
せんでした。与えられる情報だけで、ただ何となく満足してしまうものなのかも
しれません。だからこそ、メディアがまず「伝えるべき問題」を発信する必要が
あるのだと思います。

【先端医療・がん難民】

小野俊介(東京大学薬学系研究科 准教授)先生の「行政当局にはできないこ
と、無理なことを告白させよう」というメッセージには共感します。できること
できないことを国民が知る権利があるのは当然だと思います。また、国民が「行
政ができないこと」を知ることで、一人一人が危機意識を自覚できるのだと思い
ます。

【終わりに】

シンポジウムの終了後、早稲田大学図書館にアメリカの医療問題を取り扱った
マイケル・ムーアの『シッコ』のDVDを見ようと探しにいきました。しかし、
『シッコ』のDVDが置いてなかったので、購入してくれるよう申請をしました。
アメリカでドキュメンタリー史上第2位の動員を得た映画のDVDですし、学生が
医療に関心をもつきっかけになるのではないかと思います。

最近24歳になる大学時代の友人が、気管支喘息という病気にかかり二日間入
院しなければならなくなったと聞きました。もともと気管支が人よりも細く、
「このまま細くなり続けると死に至る可能性もある」と医師に言われたそうです。
彼は「死」という言葉が自分のこととして言われたことに大きなショックを受け
ておりました。

彼は契約社員ということもあり国民健康保険に加入しておらず、今迄や今後も
かかる治療費の総計は30万円以上ということでした。後日国民健康保険に加入
した際に、払ったお金の一部が返ってくるということでしたが、「身に染みて医
療の問題は大変なのだなと思った」といっておりました。医療の問題の切実さは、
自分自身の体験か、身近な人の生の声を聞かなければ、なかなか「実感」できな
いのだと思います。

今回私はシンポジウムに参加して、もっと医療の現場について知りたいと思う
ようになりました。またメディアでただ伝えるだけでなく、私のように感化され
た経験を、他の学生の友人たちと話し合うことも大切なのではないかと思います。
できることから少しずつ始めて、それを続けていく。そういう意味では、私の様
な「医学生以外の学生」がシンポジウムにもっと来場するようになることも重要
なのだと思います。

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