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Vol.230 現場からの医療改革推進協議会第十二回シンポジウム 抄録から(1)

医療ガバナンス学会 (2017年11月14日 06:00)


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http://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/symposium12.html

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。

(参加申込宛先: genbasympo2017@gmail.com)

2017年11月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十二回シンポジウム

2017年12月2日

【ご挨拶】13:00-13:15

●林 良造
この1年を振り返ってみると世界中で多くの国で政治に動きがあり、また、大きな変化を経験した。

トランプ大統領の就任、習近平体制の確立、韓国の新政権の発足、北朝鮮をめぐる緊張の高まり、フィリピンのドテルテ新政権のスタートなどアジア太平洋諸国の変化、Brexit・スペインカタルニア州の独立問題、中東におけるISの崩壊、その他中南米、アフリカなど数えきれないほどである。そして日本では都議選に続いて、突然の解散から様々な劇場型のイベントを経て結局与党の圧勝に終わった総選挙である。

このように並べてみると、多くの国では格差の広がりを起点にした社会的な分裂を具象化する分断型へのうごきがきわだっている。一方日本ではしがらみなき改革を掲げる保守小池新党とリベラルの旗を掲げる立憲民主党のいわば左右から挟まれた形の自民党が、内閣支持率の上下を通じる一定の緊張感をはらみつつも、選択された。

振り返ってみると、この10年日本でもさまざまな経済的危機、震災などを経験し、また、中国の経済外交面での急速な台頭を横目に見ながら、低成長が続き国際的存在感の低下も経験している。しかし、気が付いてみるといま日本は静かな長期経済成長を続け、シンガポールと並んで最も安全で住みやすい国になっている。このことは国民が規制改革などの成長志向と社会の安定志向を巧みに織り交ぜながら進む道を政治に選択させてきたということかもしれない。

医療の分野においても、少子高齢化の進む中、イノベーションへの期待と制度の持続可能性のはざまで適切なインセンティブ構造を作り上げるべき優先的政策課題に事欠かない。その中で大きな問題意識・視点をしっかりと持ちながら、現場を離れた感覚で机上の解決策を押し込もうとする安易な解決には現場の声で警鐘を鳴らすというこの協議会の活動が、住みやすく魅力ある日本の実現に果たしている役割は大きい。

今回もこのような大きな視点と現場を結んだ形での問題提起と解決策の提示またそれらをめぐる活発な議論が行われることを心から期待している。
【session_01】医療の未来 13:15-14:00

ホントに人材育成なるものができるのだろうか?

●小野俊介
医薬品の教育機関にいながら、これまで一度も、学生、受講者そして私が満足のいく教育・訓練を提供した記憶がない。なぜだろう?

第一に、私が教えていること(医薬品の開発や規制科学)について私自身が「これは素晴らしい」と思える系統的な教育を受けたことがない。すべては自学自習。望ましい教育の姿を自身が知らないのだから、あるべき教育の姿を語れるはずがない。

第二に、私は人生において一度も「薬の規制科学を追究しよう」と決意した記憶がそもそもない。なのに、なぜか不遜にも医薬品規制の専門家のごとき顔をしている。
不思議である。今の仕事をしてるのは、若い頃の人事異動でたまたま薬の部門に配属されたから。もしロケットの開発部門にたまたま配属されていたら、今頃はロケットの専門家のような顔をしていたに違いない。皆さんがこの会場にいるのも、もしかして、たまたま?

第三に、因果関係の問題がある。「医薬品の開発・規制科学が大事なのだよ、君」とおっしゃる大先生たちは、医学・薬学の専門領域(主として実験科学)あるいは実務での素晴らしい実績によって出世したのであり、開発・規制科学を専門として学び、研究した「から」出世したわけではないことは誰でも知っている。将来ある学生に出世の役に立たないことを教えるのは避けるべき、という良心くらいは今の私にも残っている。

第四に、薬の規制科学とはそもそも何なのかが未だに分からない。薬の規制って、ほとんどが外国の物真似か単なる思いつきである。「世の中が回っていればそれで良いではないか」とする考え方もあるが、白亜紀だって世の中は回っていたことを思えば、多少は建設的でありたい。

第五に、医薬品開発や規制がらみの専門用語のほとんどが意味不明である。「有効性」、「安全性」という言葉には定義がないし、「薬が効く」 という文の意味は誰にも伝わらない(文の真偽が問えないでしょ?)。
「薬のリスクベネフィット」という言葉に至っては、業界人が社会に対する責任を放棄するための免罪符としての意味しかない。
こんな状況でいったい何をどう教えることができるというのか。誰か教えてください。

市場の力と医療・福祉機器市場

●松井彰彦
世界に先駆けて高齢化社会を迎えつつある日本。本稿では、市場の力というキーワードを用いて、眼鏡の市場と医療機器・福祉機器の市場を比較してみたい。

まずは眼鏡の市場に目を向けてみよう。

日本のアイウエア市場で注目すべき点はその国内生産比率である。2016年において、国内の市場規模約5000億円に対し、輸入462億円、国内製品の割合が9割強である(輸出は300億円)。とくに世界との競争にさらされながら、「かっこいい」眼鏡フレームを次々と生み出した福井県は、今日では眼鏡フレームの国内生産の95%を占め、海外にも輸出する世界有数の眼鏡産地となっている。

眼鏡はかっこよさの「見える化」が望まれるが、「見えない化=サイボーグ化」が進む機器もある。例えば医療機器のペースメーカーは目立たないのがかっこいい。残念ながら、ペースメーカーは99%以上が外国製品で、新製品導入が遅れるほか、価格も高いため、保険財政を圧迫している。日本での価格は欧米と比して1.6~1.8倍というデータもある。最大の問題は保険適用されるこれらの医療機器の価格が公定価格となっており、米国等と比べ市場の力を殺いでいる点である。

医療機器全体で見ても、2.7兆円強という市場に占める輸入額の割合は52%であり、輸出を引いた純輸入額でも約8000億円の貿易赤字となっている( いずれも2015年)。さらに懸念されるのは伸び率で、輸入金額は2011年から2015年までの4年間で35%増加しているのに対し、国内生産額は8%弱と大きく水をあけられている。

福祉機器市場を見てみよう。義肢、車椅子等の狭義の福祉用具の市場規模は2014年度で1兆3995億円、対前年度比3.8%増である(眼鏡含む、日本福祉用具・生活支援用具協会調べ)。福祉機器の輸入額は約600億円と、国内市場全体に占める海外製品の割合は医療機器に比べれば小さい。この市場がファッション性にもっと目を向ければ、2兆円、3兆円規模に膨らむことも夢物語ではない。そのためには介護保険依存からの脱却が課題である。

ホスピタル・クラウンの活動から
●大棟耕介

私の職業は「クラウン(道化師)」。芸歴25年である。海外公演も多いが国内ではサーカス、小学校、遊園地、結婚式などでも活動をするだけでなく、小児病棟でもパフォーマンスをする。この小児病棟での活動を「ホスピタル・クラウン」という。

現在は日本ホスピタル・クラウン協会として北海道から沖縄まで86病院と契約しており、認定クラウン約100 が訪問している。ここ東京大学医学部附属病院でも月2 回定期訪問をしている。

クラウンは様々なアーティストの中でも最も難しく、権威のある仕事の一つである。サーカスの中では一番の高給取り。私の考えるクラウンの最大の魅力はマルチ性である。脇役性と逆転能力を活かし、目の前にいる相手やその空間の状況を快適にしていくかを大切にしている。

ジャグリングでわざと失敗したりマジックでインチキをすると、子どもが声を上げて注意をしたり突っ込んでくる。子どもと大人であるクラウンの立場が逆転している。相手に合わせ、そして相手の上からではなく下にもぐりこんで持ち上げてあげる。病院という大人の社会において、子どもは笑顔が減り子どもらしく振舞うことができないことがある。しかしクラウンと接することで子供の社会性・能動性・創造性を取り戻していく一助となることがある。

分かりやすい効果として、子どもの口数が増えるだけでなくベッドから起き上がり、彼らから近づいてくることもある。言葉の一つ一つに子どもらしさを感じられるようになり、病室に入る私たちを驚かせようとベッド下に隠れていて、飛び出してくる子どもまでいる。

病室内で動きが少ないことにより緊張している彼らの筋肉が、バランスの取れた弛緩状態に変化していくことがわかる。私たちは抗体を持ちメディカルチェックも受け、日本ホスピタル・クラウン協会として一定のレベルを保証して病院に入っている。治療行為の邪魔にならないように、時には付き添いの保護者や医療従事者を巻き込むこともある。

それによって病棟全体が柔らかく温かくなり、余韻・余熱が長続きする。

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