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Vol.231 今年のインフルエンザワクチンの不足について

医療ガバナンス学会 (2017年11月15日 06:00)


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濱木珠恵

2017年11月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

今年のインフルエンザワクチン供給が不足している。当院でも、例年どおり10月1日から予防接種を開始しているが、最近は予約を取れない状況が続いている。患者さんから問い合わせがあっても確約することがなかなかできない。当院に限らず、どこのクリニックでも似たような状況のようだ。入荷が制限されているためワクチンを十分に確保できず、予約の受付を止めている。

なぜ今年のワクチン流通量が不足しているかというと、6月にワクチン製造につかうウイルス株を変更したため、生産が遅れているからだ。しかし、この変更はワクチンの生産量の低下を避けるためにやむをえない選択だった。

インフルエンザには大きくA型とB型があるのはご存知だと思うが、現在のインフルエンザワクチンがカバーしているのはA型(A/H3N2, A/H1N1pdm2009)とB型(ビクトリア系統、山形系統)の4種類のウイルスに対してである。それぞれにさらにいくつかのウイルス株があり、どのウイルス株を用いてワクチンを製造するかについては、毎年「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」という国立感染所研修所の諮問機関が出した議論をもとに、厚生労働省が決定している。

このうちA/H3N2型に対応するとして選ばれていたウイルス株は、インフルエンザワクチンを鶏卵で増やす過程の際におきやすい「鶏卵馴化による抗原変異」が起こりにくいとして選ばれていた。

インフルエンザワクチン製造では鶏卵で増やす過程があるが「鶏卵馴化による抗原変異」が起こることがある。これは製造過程で抗原性が変化してしまう反応で、ワクチン製造に使われた株と、流行が予測されたウイルス株との抗原性が一致していても、製造後に抗原性が一致しなくなり、ワクチン接種による予防効果が十分に得られなくなってしまう。
当初選ばれていたA/埼玉/103/2014(CEXP-002)株は、この「鶏卵馴化による抗原変異」が起こりにくい株と言われていたが、製造してみると、増殖効率が極端に悪いことが6月に判明した。このままでは、昨年度の71%程度の総生産量になってしまうリスクがあったため、極端なワクチン不足による混乱を防ぐために、急遽、AH3亜型のワクチン株がA/香港/4801/2014(X-263)株に切り替えられた。そこから新たに作り直しているので、流通量の出足が遅れており、10月、11月では流通が例年よりも少なく、またワクチンの製造量が例年の9割程度になると言われている。

このため、インフルエンザワクチンの予防接種をうけるために、かかりつけのクリニックに予約の電話をしても、ワクチン不足を理由に受付が止まっているところがいくつかあるという。残念ながら、当院でもそのような状況である。
インフルエンザワクチンは薬品の卸問屋から購入するのであるが、昨年までの使用実績に基づいて今年のワクチンを分配しているようだ。また今期分の全量をまとめて納入するのではなく、流通量に合わせて週ごとに分割して納入するようにしてなるべく全体に行き渡るようにしているとの話もきく。このため、仮に当院に問い合わせが殺到したとしても、こちらが希望した個数どおりにワクチンを多めに納入してもらえるとは限らない。当院では以前から企業での集団接種もおこなっており、そこでの使用分を確保しながら日程調整するのもかなり大変だった。
それでも10月前半に予約いただいた方にはきちんと接種できていたのだが、10月中旬以降は、予約の問い合わせが増えてきたこともあり、週ごとの予約可能数を制限せざるをえなくなった。日頃から通院されている患者さんから尋ねられても特別に便宜を図ることもままならない。一定数のワクチンを確保できる目処がたった時点で予約枠をあけるようにしているのだが、先日も予約受付を再開したところ半日ですぐに枠が埋まってしまった。その後に問い合わせをいただいた方には、次の予約再開日をお伝えしているのだが、それも早い段階でうまってしまうだろう。
クリニックによっては、初めて受診する方からのインフルエンザワクチン予防接種の予約を制限したり、小児の2回目の予防接種を12月以降でお願いしたりしているところもあるようだ。糖尿病や腎臓病などのインフルエンザを重症化しやすい持病がある方や、受験生やそのご家族は気が気ではないかもしれない。

例年、12月下旬からインフルエンザ流行が始まり、年末年始の帰省の移動などで流行が蔓延し始める。

ワクチン接種から2週間ほどで抗体できるので、例年どおりの流行であれば12月前半から半ばまでにワクチン接種しておけば問題なさそうである。とは言え、流行には地域による時間差があり、また今年は秋頃にも一部地域でインフルエンザの流行があるなど、流行時期が早まる可能性はある。可能であれば、早めに予防接種をしたいところだ。
インフルエンザに限らないが、病気というものは予防の段階が実は一番重要だ。それなのに肝心のワクチン接種をひろくお受けできないことは医療者としてとても心苦しい状況である。予防接種が必要な方々には早めに確実に接種したいところだ。
しかし、前述のとおり、11月中は全体として流通量が少なく、また流通が安定してくる12月も接種希望者が相対的に増えるためバランス的にはやや不足気味になるかもしれない。当院のワクチン管理の担当者も、毎日のように卸問屋の担当者に流通状況を確認しながら、受付可能な予約数の設定に頭を悩ませている。

では、どうすれば、ワクチンを早めに接種することができるだろう。

正直にいって、実際に流通量が制限されている以上、なかなか裏技はないかもしれない。前述のとおり、流通があるところには届いているし、そうでないところでは不足しているのかもしれない。
地道に問い合わせしていただくしかないと思う。まずは、普段から通院しているかかりつけ医があれば、相談してみてほしい。ワクチンが不足しているため、普段から患者数が多いところでは通院歴のある患者を優先しているクリニックもある。かかりつけ医であれば、ワクチン接種が推奨される持病があって優先したほうがよい場合には、なんらかの配慮をしてくれるかもしれない。ただ、ない袖は振れないので、もしすぐに接種が難しいと言われた場合にはしかたないと思ってもらうしかないし、自分の希望通りの日時に予約は取れないかもしれない。それでも、例えば、次にワクチンが入荷する予定日あたりに追加の予約ができるかもしれないので、情報をもらっておくに越したことはない。かかりつけ医でないクリニックへの問い合わせも同様だ。11月中もしくは12月上旬のワクチンの予約状況や、新規に予約ができる日がいつかを明示してもらえるかもしれない。

この程度の助言しかできず、本当に心苦しいし、もうしわけありませんとしか言いようがない。ただとにかく、ワクチンを接種するつもりであれば、来年以降は早めに予約をとったほうがいいかもしれない。

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