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Vol.238 現場からの医療改革推進協議会第十二回シンポジウム 抄録から(5)-2

医療ガバナンス学会 (2017年11月22日 15:00)


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http://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/symposium12.html

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。

(参加申込宛先: genbasympo2017@gmail.com)

2017年11月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十二回シンポジウム
2017年12月3日(日曜日)

【session_06】新たなステージ 10:00-11:20

●「私」にとっての正解とは?
森田麻里子

妊娠がわかってから、子どものためにできることはなるべく取り入れようと、本や雑誌、ネットの記事などありとあらゆる情報を調べてきた。科学的根拠のある情報を探し求めるうちに気づいたのは、科学的根拠というもの自体がとてもあいまいであるということだ。
例えば病気の治療ガイドラインには、エビデンスレベルがランク分けされているものもあるが、妊娠出産や子育てに関する根拠となると、そもそもエビデンスレベルの高い論文自体が非常に少ない。そういう状況で、『正しい』情報と言うにはどんなレベルの根拠が必要だろうか?
今の科学で説明できないことであっても、大したデメリットがないのであれば、子どものために何でもやってあげたい、と思う親も多いだろう。こういった分野においては、エビデンスレベルの低い論文やエキスパートオピニオンも上手く取り入れていくべきだ。私自身、調べれば調べるほど、根拠が希薄な情報を『トンデモ』であると断言する勇気は出なくなった。強く推奨される事と、やりたいならやっても構わない事、やらない方がいいと思われる事をできるだけ区別して伝える努力をしていきたい。
一方で、違う意味で情報を得ることが難しいトピックとして、無痛分娩がある。私は無痛分娩を見たこともやったこともない。
しかし、無痛分娩が麻酔科医なら誰でもできるようなものではなく、経験と技術が必要な分野であることはわかる。つまり一口に無痛分娩と言っても、バックアップの医療体制も含めて、そのレベルは施設によって様々だ。しかし、そのことは妊婦さんには非常にわかりにくく、安全性をどれくらい重視するかもその人の価値観によって大きく異なる。また、建前として、施設によって医療レベルに大きな差は無いことになっているため、情報公開が妨げられている面もあるように思う。
医療者側がきちんと情報公開すること、それを患者側が読み解くリテラシーを持つことが、より求められるようになってきている。
●「指定発言」無痛分娩について
坂根みち子

2017年は妊産婦死亡に関する報道が目立つ年だった。特に4月以降は無痛分娩が関係する事故と訴訟報道が続いた。併せて日本産婦人科医会の動きも活発だった。医会は診療所での無痛分娩を、急変時の対応や麻酔科医不在の観点から問題視しているように見受けられた。当初は、診療所の分娩停止も指導していた。それにより閉院した診療所もあった。
一見正論に見えるこの主張のどこが問題か。
日本は世界トップクラスの低い妊産婦死亡率を誇る国であるが、産科医療の現状は人、金、物、すべてが足りずに明らかに限界に達している。
福島県立大野病院事件以降の10年間で、出生数は6%ほど減少したが、分娩施設はなんと22%も減少している。
医師の働き方については、本年7月に厚労省の官僚が日本で最もブラックであることを「全職種で不動の一位」という表現で認めた事は記憶に新しい。その中でも産科医達は特に過酷な状況におかれている。過重労働に加えて、訴訟が頻発しているのである。日本産婦人科医会と日本産婦人科学会は、研修医の過労自殺を受けて、今年の8月13日に産科医達の勤務環境改善を求める共同声明を出したが、労働環境を考えれば勤務医の集約化は必須である。しかし、それは出産場所の更なる減少とバーターとなる。
そして日本は、先進国の中で飛び抜けて無痛分娩の少ない国である。出産時の痛みに対する優先順位は二の次三の次の国なのだ。そこには医療資源不足という事以外に、「痛みに耐えて母親になるべき」という有無を言わせぬ精神論が脈々と受け継がれている。
産科医療の崩壊と無痛分娩に対する処方箋はあるのか。
そして、日本の女性は一体いつになれば、「出産の当事者として」無痛分娩を選択できるようになるのであろうか。論点を整理してお伝えする。

参考
2017年6月23日 MRIC http://medg.jp/mt/?p=7659
Vol.133 産科医療補償制度と日本産婦人科医会は産科医をリスクにさらしていないか
●電力市場の現状と、エネルギーテック企業の存在
城口洋平

エネチェンジ社は、英国ケンブリッジ大学との産学連携で誕生した電力データ解析研究機関を前身とし、日本での電力自由化に先駆けて2015年4月に日本法人として創業。
独自の電力予測アルゴリズムを用いた国内初の電力比較サイト「エネチェンジ」サービスを主軸に、エネルギーテック企業として日本のエネルギー市場を牽引している。
2016年4月の電力小売全面自由化に伴い、自由化そのものの認知が押し上げられる中、2000年から段階的に自由化されていた年間電力使用量50kW以上の高圧市場の認知も上がることで、医療施設を始めとした法人需要家の電力切り替えが活発に行われるようになり、新電力シェアも約25%を占拠するまでに成長している。
一般的に契約電力に対する年間使用量が低い(=負荷率の低い)オフィスや学校、公共施設などは削減メリットが出やすいため、新電力は削減率の高い料金プランを提示しやすく、積極的に切り替えも進んでいる。
他方、契約電力に対し、フルに電力を使用しているいわゆる負荷率が高い、工場、ホテル、病院などでは、削減メリットが出しづらい分、切り替えが進んでいない現状がある。病院事例でいうと、診療所など19床以下の施設の場合は、負荷率が低いこともあり平均20%前後の削減メリットが出ることも多く、新たな設備投資用資金もできることから切り替えに踏み切る事例も比較的多くある。
一方、病床数が多ければ多いほど、年間を通しての電気使用量、負荷率が高いため、平均削減率が5%程度と削減メリットが出づらいこと、停電など「万が一」があってはいけないからという理由から、切り替えに踏み切れない施設も多くあるのが現状でもある。
(※実際は、電力会社を変えても、電気の質は送配電会社が引き続き管理するため変わらず、停電等になりやすくなる、ということは一切ない。)エネチェンジでは、営業による説明機会を設けることで不安払拭を行う努力を行うとともに、電力データ解析技術を用いた新サービス
「Smatmeter Analysis Platform(SMAP)」を新電力に提供することで、新電力が苦手としていた精緻な収益分析などを行うことが可能になり、このような病院などの高負荷率の需要家に対しても電力切り替えが普及するように取り組んでいる。
●私がアジアを目指すわけ
森田知宏

アジアは経済成長が著しい代表的な地域である。中国・インドは言わずもがな、東南アジア諸国の経済成長も著しい。一方で、医療面では、医師数・看護師数など医療職の人数も少なく、インフラもまだ発展途上である。しかし、インフラが未整備であるため、発達著しい情報技術を利用した先進的な試みが行われ始めている。現在は製造業の拠点として注目を集めるアジア地域が、医療サービスの見本市に変化するのに時間はかからないだろう。
また、医学研究においてもアジア地域の存在感は高まっている。アジア特有の疾患、感染症だけでなく、アジアで特に進む高齢化に関する疾患など、この地域にアドバンテージがある医学研究のテーマは多い。
私は、これらの理由からアジアでの活動に興味を持っている。現在行っている中国・バングラデシュでの活動についてご紹介したい。
中国は、日本と並び高齢化が進行する国だ。65歳以上の人数は2015年に1.3億人、2025年には2億人を超える。当然、認知症の患者数も多い。そこで、富裕層が多く住む上海市静安区では、江寧路街道という地域の60歳以上の高齢住民全員を対象として認知機能のスクリーニング調査を行った。さらに、認知機能が低下している高齢者に対して、運動・料理・太極拳などの介入プログラムを提供している。現時点ではまだ十分なデータがないが、今後のデータによって介入プログラムの意義が明らかになるだろう。高齢住民は3万人おり、このような大規模な認知症介入プログラムは世界でも有数の規模である。
バングラデシュは、感染症が依然多い発展途上国だが、近年では慢性疾患が急増しており、すでに死亡原因のトップは既に循環器疾患である。一人あたりのコメ摂取量が世界一と評されるバングラデシュでは、炭水化物摂取量が多く、慢性疾患のリスクが高い。医師数が日本の1/5程度しかいない状態であり、医療へのアクセスは十分ではない。そこで私は、バングラデシュでの健康診断サービス展開を手伝っている。
このような活動を通じて、医師がアジアで活動する意義を再確認した。例えば中国では、臨床研究は間違いなく発展する。中国政府が国民情報を一元管理しているため、地域住民の健康データなどを調査することが可能だ。クオリティの維持さえできれば、中国はアメリカと並ぶ大規模臨床研究のメッカとなるだろう。国を挙げて人材を集めており、日本人の若手研究者にとっても魅力的なキャリアとなるかもしれない。
技術と医療の関連もそうだ。バングラデシュでもスマホが普及しつつあり、配車サービスUberや食事のデリバリーなど、先進国と変わらないサービスが出てきた。医療でも遠隔医療などが既に始まりつつある。既存のインフラがないぶん、利用者の需要にあわせて様々な医療サービスが出て来るだろう。新しい技術を用いた医療のエビデンスを作る場として、途上国で活動する意義がある。

 

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