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Vol.240 現場からの医療改革推進協議会第十二回シンポジウム 抄録から(6)

医療ガバナンス学会 (2017年11月24日 06:00)


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http://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/symposium12.html

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。

(参加申込宛先: genbasympo2017@gmail.com)

2017年11月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十二回シンポジウム

2017年12月3日(日曜日)

【session_06】地域医療 11:20-12:20

●社会的共通資本と地域医療
占部まり

父、宇沢弘文が提唱した社会的共通資本とは豊かな社会の基盤となる社会的装置のことです。医療は豊かな社会を構築していく上でなくてはならないもので、地域社会と密接な関係があることは理解に難くはありません。社会的共通資本は大きく、自然資本、社会的インフラストラクチャー、制度資本の3つに分類されます。
医療は制度資本に含まれていますが、教育と共にその大きな根幹をなしています。それらは市場に任せることなく、専門家がプロフッショナルとして高い倫理観の元、管理運営することが求められています。
そのよう基本が守られることで、医療が経済に合わせるのではなく、経済が医療に合わせるということが成立します。病に苦しむ人にその時々の最善の医療を提供してくことが医療者に課せられた最大の使命です。
さらに、超高齢多死社会を迎え、病で亡くなる方が減り、老衰などの治療のできない状況で亡くなる方が多くなってきます。
このような時代においては、その人が健康で豊かな人生を全うできるようにサポートしていくことの比重がますます大きくなっていきます。地域医療においては、病を治すということより、病にならないという予防医療に重きが置かれます。そして、その人らしく過ごせる環境を提供していくことも広義の医療に含まれると考えられます。
人々がそれぞれに自分らしく過ごすとはということがどういうことなのか自ら考え、実践することも必要となってきます。医療は医療者がただ提供してくものではなく、双方向性に作り上げていくものです。その関係性は地域医療においてより鮮明になっていっていきます。
最終的決断はその人本人の意思が最大限に尊重されなくてはなりませんが、その支えが家族を含めた地域社会に大きく支えられることは間違いありません。社会的共通資本という概念を基礎に、コミュニティーのあるべき姿を模索していくことが、より豊かな社会のへの大きな足がかりとなるのではないでしょうか。
●過疎地方の基幹病院における外傷医療
坂平英樹

本邦では、外傷による死亡者数は減少しているものの、年間2万人以上が外傷により死亡している。また、15歳から29歳の若年者の死亡原因1位は不慮の事故・自殺であり、全国レベルの外傷診療体制の確立は必須である。
近年医療の高度専門化に伴い、さまざまな疾患に関して「症例の集約化」が言われている。外傷治療においても集約化は重要であるが、重症外傷では生命が切迫している状況のことも多く、集約化施設への搬送前から一刻も早い治療介入を要する。
外傷診療体制の確立されているアメリカでは、救命から機能回復・再建までを一貫して行う公的な外傷センターへの患者集約がなされており、患者搬送のためのヘリコプターは夜間や天候不良時にも計器飛行にて可能となっている(もっとも非常に危険な業務である)。一方、本邦では公的な外傷センターはなく、救命救急センターがその代わりを担っている。ドクターヘリ事業の整備とともにある程度集約化は進んでいるものの、本邦のドクターヘリは有視界飛行のため、夜間や天候不良時には飛べない。
また、救命救急センター中心の外傷治療においては、救命の次の段階である機能回復・再建という点で質が担保されていないことも多い。
演者の所属する兵庫県立淡路医療センターは、人口13.2万人の過疎化の進む淡路島の基幹病院である。地域救命救急センター併設のDPCII群病院であり、ある程度高度な医療を提供できる病院である。近隣の救命救急センターは60km以上離れており、空路では10分以内であるが陸路では1時間以上の搬送時間を要する。しかしながら重症外傷の症例数・手術数はともに、ドクターヘリの飛べない夜間帯の方が日勤帯より多く、瀕死の重症外傷患者を他院に搬送するという選択肢はない。過疎地方の基幹病院においても、外傷診療体制の確立は地域住民の命を守るために重要であり、当院の現状を問題点とともに報告したい。
●呑みの途中に診療所に立ち寄るというライフスタイルを提案
和田豊郁

通勤・通学の帰路に立ち寄れる午後6時から9時までを営業時間とするコラボクリニックが新宿駅西口界隈に開院したのはこのシンポジウムの創生期だった。
1年余りで閉院となったが、そこから得られたノウハウは、ナビタスクリニックに生かされており、現在3つの駅ビルに診療所を展開している。大阪の十三駅前のよどがわ内科クリニックも午後9時までの診療受付を行なっている。
しかし、駅の利用客に、ある一定の割合で医療を求める者がいると考えるのは早計である。
博多駅や西鉄天神福岡駅の駅ビルや周辺にはたくさんの診療所があるが、どこも午後5時~7時には閉めてしまう。人口30万の久留米市にも駅ビルに入っている診療所はあるが、夜まで開けているところはない。急患センターがある街では夜の医療の需要はあまりないのだ。
そもそも医療機関を患者が訪れるのは何らかの症状が出現したことがきっかけとなり、仕事を休んででも受診する。一方、症状はないが検査値は異常、といういわゆる未病状態を健康審査は多数発生させる。
自覚症状はないのだから、異常を指摘されたことで不安にならない限り医療機関を訪れるようなことはない。仕事帰りに診療所が開いていてもその扉を開くことはないのだ。それどころか、健診で肝機能異常を指摘されたことをおもしろおかしく人に聞かせながら酒を飲んでいる御仁もいる。彼らは遅からず飲酒できないカラダになり、歓楽街から消えていく。
今後の人口減少に伴い新たに客を確保することは期待できないのだから、目の前にいる酔客を大切にしないと繁華街は滅びへと向かう。
呑みの途中に診療所。生活習慣病の管理を行ないながら歓楽街で遊ぶという、新しいライフスタイルを提案し、心臓血管内科 心血医院(ここちいいん)は2015年11月に久留米市の繁華街、文化街のアーケードの中に開院した。午前中と午後7時~10時に開院しているが、夜の利用の伸び代は未だ多い。
●胃がんを撲滅するために
水野靖大

日本における胃がんの年間死亡者数はここ数年やや減少の兆しは見えてきているが、ほぼ5万人で横這いである。この胃がんの原因、99%はヘリコバクター・ピロリ菌である。
横須賀市は胃がん検診として、平成24年度からバリウム検査を全廃して胃がんリスク検診を開始した。この検診の仕組みは、ピロリ菌の現感染及び既感染者を採血検査であぶり出し、上部消化管内視鏡検査を行うというものだ。その結果、胃がんの発見率は約0.5%と全国平均の3倍以上になった。また、ピロリ菌感染者に対して、除菌を行うことで、将来的な胃がん発生抑制効果も期待できる。
しかし、除菌による発がん抑制効果は、除菌年齢が上昇するに従い減少する。そのため、胃がん撲滅のためにはより若年でのピロリ菌チェック及び除菌が望ましい。また、衛生環境の整った日本でのピロリ菌の初感染は胃酸分泌が不十分で免疫力も弱い5歳までの小児への母親からの経口感染がほとんどであるため、若年(子育て前)の除菌は伝播防止に効果的だ。
将来的な胃がん発症の抑制、次世代への感染の伝播抑止という観点から、現在いくつかの自治体で中学生や高校生に対するピロリ菌の感染チェックと除菌が行われている。横須賀市でも200名限定のテストケースではあるが平成29年度に中学生2年生対象のピロリチェックを開始した。
今後実現させたいのは、現在の中学2年生と40歳の間の世代、特に結婚前の世代の検診だ。形式はブライダルピロリ菌チェック、妊活前ピロリ菌チェック、あるいは成人式ピロリ菌チェックなどが考えられる。中学2年生を対象にする検診に比べれば網羅性は劣るが、次世代への伝播を防止する、将来的な胃がん発症を抑制するという効果は担保される。
『胃がんリスク検診』、『中2ピロリ検診』、『ブライダル&妊活前ピロリチェック』の3本の柱で、横須賀市から胃がん撲滅を実現させたい。
●東日本大震災被災地での一山一家の病院運営の取り組み
新村浩明

私は、福島県いわき市にある公益財団法人ときわ会常磐病院の院長を務めている。福島県いわき市の医療者不足の現状と、それに対するときわ会の取り組みについて報告したい。
いわき市の人口は、震災後に大きく増加した。現在、約34万6千人の人口であるが、震災後は福島第一原発周辺自治体より少なくとも約2万4千人の人々がいわき市に移住しているとされている。いわき市は医師不足が著しく、特に勤務医が不足していることが特徴である。いわき市の人口10万人あたりの勤務医数は、81.5人であり、全国平均147.7人、県平均110.7人を大きく下回っている。
また、いわき市では看護師養成学校が少なく、他の医療職の養成校が一校もないため、パラメディカルの慢性的な不足が生じている。このような状況で、いわき市に基盤をおくときわ会グループでも、全職種が人材不足である。
人材獲得のため1)働きがいのある職場、2)子育て支援、3)笑顔あふれる人間関係の構築を通し独自の工夫をしている。・働きがいのある職場:医師にバストイレつきの個室医局を用意し、三食を無料の提供。
源泉かけ流しの大浴場。院内研究室の整備と論文作成支援。
看護師オリジナル制服の作成・子育て支援:院内託児室および病後児保育の整備。ときわ会グループに幼稚園の設置と送迎付きの学童保育。・笑顔あふれる人間関係構築:職員は笑顔で働いて欲しいとの願いから、院長自ら仮装でグループ施設を巡回している。仮装はチョンマゲの侍の姿でやっている。リクーティングのための動画作成を全職員で取り組んでいる。またときわ会独自のライブイベントを催し、職員に楽しんでもらっている。
以上、職員は皆家族とするときわ会の理念「一山一家」の取り組みを通し、様々な出会いがあり、そしてそのご縁が広がり、少しずつではあるが常磐病院への入職者も増えている。特にいわき市以外の方が入職される例もあり、一定の効果があったと自負している。
●住民のニーズを把握する
梅村 聡

大阪の代表的下町・十三(じゅうそう)で内科クリニックを開業して2年が経過した。我々のコンセプトは「徹底的に住民のニーズにマッチした医療を提供する」ことである。
医療側の都合ではなく、住民の方の意見・要望をスピーディーに吸い上げ、診療に反映させていく。
これまで、働く世代への医療提供を重視して夜9時までの診療を行ってきたが、本年4月より「女医による女性の肛門科診療」をスタートした。クチコミを中心に広がり、多くの女性患者さんに利用してもらっている。
「なんとなく」「自分の専門領域にこだわった」のクリニックはこれからは行き詰まるであろう。一般のビジネスと同じく、患者さん、住民のニーズをどうやって把握していくのか、その一端をお話させていただければと思う。

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