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臨時 vol 419 「ナショセン仙谷委員会(その3)」

医療ガバナンス学会 (2009年12月31日 08:00)


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舞台の裏も表も熱かった
ロハス・メディカル発行人 川口恭
2009年12月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ナショナルセンターの独立行政法人化を巡って内閣府で開かれた「独立行政法人ガバナンス検討チーム」会議。本日は最終日の模様を再現します。まず長期債務を承継するかどうかで財務省との小競り合いがあった後、主務官庁である厚生労働省の影響力を残すかどうかで激しく火花が散りました。

冒頭は仙谷大臣の挨拶から。
「今朝の閣議で前原大臣からこんな話があった。国交省の独法理事を選任するので公募をかけたところ50のポストに2300人集まった。選考委員会にかける前の書類審査というか一次審査の結果が報告されたのだけれど、1ポストにつき3から5人残っている、その中の(1)が必ず官僚OBで全部載っていたと。この官僚OBを選考してほしい、選ぶんだと言わんばかり。これから各独法で選ぶ作業に入るけれども、このままでは天下り的指定席的な人材だけになってしまうので、行政刷新会議でもチェックに入ってくれと、こういう申し入れがあった。

ナショナルセンターについてもガバナンスの問題からも最も重要な要素である理事長の人選が大きなテーマだと感じた。選考も含めて独法のモデルを作ることが、NCという特殊な領域のことではあるが、その特殊さを除外しても、ミッションとそれに忠実なガバナンスを実現するために、それに沿った人選がなされなかれば何のための独法かということになる。現在までに独法は98個あるが、そのことの改善に向けて、国民から必要なものをよくやってくれているという声の出るようなものを作り出せるのでないか。現在は非常にピンチの状況だが、チャンスに変えていきたい。

ましてNC6つは医療のラストリゾートというか、国民が最後の希望をここに見出すしかないという所だ。ぜひ今日、一定のものを取りまとめていただきたい。長妻大臣との官房長官とも、人事の最高責任者は官房長官だが、内々にここまで進んでいるということは耳に入れている。2人の責任大臣とも協議しながら緊急に取り組みを進めたい」

この後、内閣府の担当者からNC全職員を対象に行われた意識調査アンケートの結果が報告され、議論がスタートしました。

吉川廣和・DOWAホールディングス会長
「感想。まことに率直な意見で、実によく問題指摘されていると思う。こういう当たり前の問題点、欠点がなかなか改善されてない、経営として吸収されて改善のプロセスが進まないというのは、医療の組織の特殊性ではなく企業としてもごく当たり前に起こることだ。こうした指摘は宝だ。これをエネルギーに変えれば必ず再生できる」

近藤達也・PMDA理事長
「色々な意見や要望を吸いだして満たしていくのがコンプライアンスであり、それをやっていくのに必要なのがレギュラトリーサイエンス。NCは常々そうしたものを求められており、リードしていくような方が理事や理事長に求められるのでないか」

正木義博・済生会横浜市東部病院院長補佐
「職員の方の意見をうかがって心が痛んだ。公的病院はどこも同じようなもので、公的病院全部の縮図だと思った。日本の医療は、現場の声を抑えつける力だけがあって、ガバナンスの力というか、職員を守りモチベーションを高める力が不足している。本当に心が痛む」

大久保和孝・公認会計士
「そうだろうなというアンケート結果だ。私も国立大学で同じようなことをしたことがあるが、できれば役職別の傾向値も出していただきたかった。部長以上と、それ以下とで相当違う結果が出るのでないかと予測する。どうも意識が部長のところで劇的に変わるという印象を持っている」

仙谷
「吉川委員に伺いたい。職員に、ほとんど組織の意思決定が見えてないとの声が多いが、民間会社でもディスクローズというか開示して共有するのが経営の要諦だろうと思う一方で、すべてをアッパラパーと出せばよいというものでないかなという気もする。少なくとも公的な使命を帯びている所は、実情の数字を見せるとか、執行部が何らかのものを見せないと一体となって前へ進めないのでないかと思うが、いかがか」

吉川
「私の会社も改革前は、ここに出てくるような問題を抱えていた。社長になって一番最初にやったのは情報を共有することから。情報がなければ意欲が湧いてくるはずがない。まずはそこから丁寧にやることだということで、経営会議に誰でもオープンに参加できるようにしたりテレビ会議システムを使って経営会議の様子を全事業所に見せたりした。それやあれやたくさんの情報共有の仕組みを続けて、だいたいできたかなという所で次の策に移った。まずそこが基本で、NCもそこを直さないと始まらないのでないか。言えるのは、意識も能力も高い人がいて今後どうなるのか楽しみだ」

足立信也・厚生労働大臣政務官
「国立大学に15年いた経験から言うと、大事なことは特殊性であり特異的なことだ。大学の医師であれば、研究でオンリー1をめざしているところは必ずあり、その競争は、場合によっては直属の上司を蹴落とすくらいのことにもなりかねず、時として批判されることもあるけれど、それを普通の組織にすることがよいことなのか。特異的なことで言えば女性職員が300人いて1人も生理休暇を取っていないというような極めて異常な点など改めるべきは何なのか、直すべき所を認識していただきたい」

大久保
「大学でも調査をしたことがある。特異性はあるだろうが普遍性もあるだろう。不祥事を起こしたような組織というのは現場の率直な声に経営者が耳を傾けていない。逆に現場の声に耳を傾けた企業ほど成長しているというのが、ここ数十年分かってきたことではないか。1個1個の独法をどうするかは経営者が決めればよい話でありここで議論する必要はない。しかし現場の声が経営者に伝わる仕組みだけは、ガバナンスとしてここで作ってほしい」

ここで「役人じゃない事務局」4人衆(大久保和孝公認会計士、志賀櫻弁護士、境田正樹弁護士、伊東賢治公認会計士)が連名で提出した12項目の提言を含むとりまとめ案( http://lohasmedical.jp/news/pdf/1211torimatome.pdf )について、境田氏と大久保氏が説明。

大串博志・財務大臣政務官
「財務の長期債務を承継しないという点に関しては、やや戸惑いを覚える気がする。NCの最先端の部分は一般会計で措置されているからというのだけれど、私も役人時代に独法をつくる時の法律を担当して苦労しながらやった思い出があるが、それなら独法ではなく一般会計でやればいいじゃないかという話になる。収益を生む資産と人的資源があるという点が一般会計の考え方と違うし、そもそも公的機関でやる必要はないけれど、公的な要素もあるから、その真ん中でやるというのが独法であり、債務の切り分けもそれに従って、収益を生む部分とそうでない部分を切り分けて、収益を生む部分を持っていただきながら、生まない部分は一般会計で措置しましょうということ。収益を生む部分のオペレーションで債務の返済もしていく、と。

借入金と資産価値が見合ってないのでないかという指摘に関しては、少なくとも借入の際には見合うものとして査定されているわけだし、財投の期間と設備の寿命とがミスマッチを起こしているという指摘に関しても、そこが見合った収益を生むかどうかでクリアできるのでないか」

大久保
「独法は、イギリスのエージェンシーを手本に作られたはず。あちらは、民営化するかどうかの判断のために一定期間やってみて無理なら戻すという運用になっている。しかし日本の場合は、その辺の性格が変わってしまって、結果的に公務員の定数削減のための道具という側面が強い。平成13年にできたときは自己財源で賄えるものはほとんどなく、平成15年の第二陣でようやく国立病院と国立大学が収益を生む可能性のあるものとして出てきたが現状はご承知の通りだ。収益を生む可能性と長期債務をリンクづけることに違和感がある。

民間で長期借り入れをする場合は、収入の範囲内で返済できるかどうかから考え始めるのであり、15年使うものを20年で借りることなどない。むしろ15年全部かけずに10年とか極力短いタームで返せるように検討する。今回のNCに関して言えば、過剰な投資と返済計画の無理が目につくわけで、本当にそれだけの収益を生むのかも分からないのに債務を負わせてしまえば、ミッションが達成されなくなる可能性が高いのでないか。過去の判断の誤りが積み重なってできたものを新生NCに負わせるべきでないと考える。最終的には色々な視点でご判断いただけたらと思う」

仙谷
「全部をなしにできるかどうかは政治の交渉だが、国立病院会計のドンブリ勘定で長い間やってきて、移行にある種の準備期間は必要で、その間に資産査定をして、ふさわしい資本金を計上したうえでないと債務は確定できないのだろうという気はする。真っ当な貸借対照表があるのなら大串政務官の言うとおりだが、今まで手足を縛ってきて、厚労省が縛ったのか、他の誰かが縛ったのかは知らないが、たまったツケの財投の高金利の利払いもしろというのは、素人というか民間から見たら訳分からない話だろう。

いわばそういった悪しき残滓を引きずったままで独法化させて、果たしてミッションを果たせるのかなと思う。従来借入をそのままにして、ちゃんとやれと100辺言ったところで矛盾が深まるばかりでないか。ミッションを果たすために、ふさわしい累積債務の額というのはおのずからあるのでないか。

それができないとするなら、普通ならこんな訳分からない組織の経営を引き受けるような、まともな人はうけないだろう。今までのように権限だけ強くて責任はないというのなら受ける人もいるかもしれないけれど、本来は経営者には責任が伴うわけだから。ここは債務の話というのは年末にかけての予算の話ともリンクはするが、しかしまあまあの話にはなるだろう。財務省にもご協力をいただかないといかんなと思うので、大串政務官よろしく」

吉川
「我々企業が事業を再建する時は(吉川委員はNCは経営破たん状態だと主張している)、債権債務をできるだけ整理してミニマイズして軽くして自立させていく。今回のNC借入金は収益を生むか生まないかという以前に、本当に分類がきちんとできているのか。過大な負担をさせているということはないか。そもそも資産額として、同等の民間病院と比べて異常に高いものが計上されている。経営の視点から申し上げるなら、その辺があいまいであるならば0にして新生NCとして自立させて、その後に厳しい自己管理を求める方がよいと感じている」

鈴木寛・文部科学副大臣
「民主党政権下での独法化というのは自民党時代と何が同じで何が違うのか整理し、独方ガバナンスの一つのサンプルとにして議論を深める機会と考えている。ただし我々はマニフェストの中で、独法というものを未来永劫続けるというスタンスを取ってはいない。そこをどう整合性を取っていくのかというのも必要な視点だろう。

第一弾の改革として通則法の通常国会での改正という出口戦略と共に、大串政務官の言うことは教科書的にはその通りだと思うけれど、第一回の会合でも申し上げたようにデューデリジェンスきちっとしないと、貸借対照表の右と左が対応してない、デューデリきちんとしないまま3月を迎えようとしていることは大問題で、右左がグチャグチャのまま理事長を引き受けるのは、よほど変わった人か、別に思惑があるような人しかいないだろう。このままの状態では、真にいい人材を得られないのでないか。

難治性疾患の方に最新の治療と薬とを提供するという中核的なミッションを負っているのがNC。その性格上、病院とは不可分であり収益の上がる部分は民間にというような話ではなく、研究所と病院とが一体のままである必要があるだろう。6つのNCに落とし込んでいく時間的制約の中で、かえすがえすもデューデリしっかりやらずに経営を任す、そんな人は見つからないはずだ。というのも株式会社とNCとで一つだけ決定的に違うことがある。株式会社の社長は、見事再建に成功したならば、それ相応の経済的インセンティブを得られる。しかしNCの理事長のインセンティブは何なのか。社会的名声は得られるかもしれないが、強すぎる理事長権限へのチェック&バランスの仕組みと並んで、理事や理事長のモチベーションもしっかり設けないといけないのでないか。

本来のミッションを達成するだけでも相当に大変なのに、そのうえ患者の満足度を高め、職員の満足度も高め、借金も返済してなどということをできる人が世の中に存在するのか。こんな人を探すと空集合になっちゃうんじゃないか」

近藤
「新しい研究を世界に向けて発信しなきゃいけないということについて、私もNCにいたが、研究費の配分に問題があると思っていた。政策的な研究はあって、それに応募を合わせていくというのはまあよいのだが、その他に個人的な興味とか自分のアイデアを試してみたいという場合は一般研究という形で研究費を獲得する必要があり、しかし評価する委員をすり抜けないと獲得できない。

新しいことをやっていく、世界で初めてのことをやっていくというのと、委員の評価をくぐり抜けるということの間に根本的に齟齬があって、そういう気概がある人間は米国に行っちゃう。米国はよくできたもので、そういう創意工夫を引き出す道具を持っている。基金があって、評価委員会もあるけれど、それ以外にもある程度は総長や理事長が選択して渡すことができる。皆が無視するものでも中には大化けするものがあるかもしれないので、NCにもそういう自由を持たせてあげたい。お金の出所を預託して、そういう組織作りをしてほしい。

借金を残すのがいいのか、チャラにするのがいいのかよく分からないが、合理的でフルに能力を発揮できる仕組みをつくってほしい。それから研究をちゃんとやらんのは指導することも必要だろう」

鈴木
「不作為を罰するのは難しい。作為の誤りを罰するのは簡単。気をつけないと、何もしないのがベストの選択になりかねない。どういうゲームの設定をするかが非常に重要。株式会社には作為のインセンティブがある。リスクが高くても当たれば大きい。当たれば大きいというようなインセンティブがつくれない中で、どうチャレンジさせるか大事だ」

吉川
「とりまとめ案に基本的に賛成なんだが、一つだけ気になるのは、新しい仕組みだと管理委員会が業務執行の部分にまで口を挟むようにも見える。あまり深く介入してしまうと、それぞれの法人の理事会がPDCAサイクルを十分に回せなくなる可能性がある」

大久保
「主務官庁ではなく、内閣府に委員会を設置して一元管理しようというのが眼目で、階政務官の総務省でやられているような評価も持ってもらおうということ。業務執行を管理するというよりは決算を評価して次々年度の予算に反映させるようなものを想定している」

筒泉正春・医療法人理事長
「債務を承継しないというのは慎重に取り扱うべきだ。2回目の時に来た成育医療センターの加藤総長も、就任の挨拶で540億円の借金は自分たちの気概で返すんだ返す覚悟があるんだと述べたと言っておられた。過去のことを全面否定するのではなく、他の医療機関の共感も呼びやすい程度にするべきでないか」

仙谷
「主務大臣が主務官庁にすり変わってしまうという問題は現実だろう。日本でなくとも、こういう仕組みにしたところは実際問題としてそうなってしまう。そのことに対して、別の形で監視が必要でないかという問題提起だったと思う。大臣1人の注意と知識と見識とを総動員したところで、それには限界があって、大臣の監督というのは絵空事になる。

権限争いをしても仕方ないんだけど、どこか別の独法に関する監視機関は必要で、主務官庁から外に出した形で98とかNCが移れば100いくつを横串で串刺しにした方がいいんではないかとは思う。主務大臣が監督するというのは確かに絵空事だ」

大島敦・内閣府副大臣(事務局長)
「では、このとりまとめ案は了として仙谷大臣で引き取って対応ということでよろしいか。6センターについての改革案( http://lohasmedical.jp/news/pdf/1211kaikakuan.pdf )というのも出したので、それについて簡単に説明する。今後については、仙谷大臣で引き取らせていただいて、官房長官や厚生労働大臣と協議しながら進めていくということでよろしいか。ではそういうことで」

(中略、本筋から外れるが、NCの構造について興味深いやりとりがしばし行われる)

仙谷
「ここまでお取りまとめいただいたものを持って、このような方々でこのように考えたのでという提言、選考委員会の作業を活用していただきたいという提言を厚生労働大臣、官房長官、総務大臣にさせていただきたい。とりあえず私が預からせていただくが、このように集中的に議論していただいたことに感謝申し上げる。いったん終了とさせていただいて、今後医療関係以外の独法が問題になる時も何らかの格好でご参加いただけると幸いだ。また医療関係でいえば、国立病院機構や国立大学病院も、同じようにガバナンスと財務の問題を議論しなければならなくなると考えている」

さて、どうなりますか。

(この原稿は、ロハス・メディカルweb http://lohasmedical.jp に、12月15日付、18日付で掲載された記事を一部抜粋し加筆したものです。)

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