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vol 5 ナショナルセンター独法化の裏で着々と進められる天下り財団保護

医療ガバナンス学会 (2010年1月6日 08:00)


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大岩睦美 (医療・法律研究者)
2010年1月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


1 ナショナルセンター人事の裏で暗躍する医系技官
ナショナルセンター独法化は、権益を守ろうとする医系技官と仙谷改革の攻防の狭間で、法令事務官が二兎を追い、揺れ動きつつも、昨年12月28日にようやく理事長の公募開始へ漕ぎつけた。しかし、その陰に隠れて二日後の12月30日に「高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律施行令(仮称)」のパブコメ募集が開始された。
(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495090255&OBJ)
内容としては、ナショナルセンターが独立行政法人化するにあたり、独法関係法の対象に6NCを加えるというものであり、一見すると単なる組織変更に伴う機械的な改正のように見える。
しかし、今回のナショナルセンター独法政令(案)は、実は官僚の天下り財団保護を目的としたものであり、およそ許容できないものであるので報告する。

2 天下り財団保護法
即ち、今回改正に係る「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」第十三条1項は、NCの特許権の行使等を行う者(TLO)が、厚生労働大臣の認定を受けることができるというものだが、事実上、特定の天下り財団のみが認定される。天下り財団を保護するための条文と言うことができる。

3 TLOとは
ナショナルセンター独法化の3大メリットの一つとされている知財の推進に関して、TLOの果たす役割は非常に大きい。
即ち、TLOの事業とは、研究所等でつくられた発明等シーズを実際の製品にして世の中に出すための仲介役の機能を果たすものである。
今までは、公的研究所内で折角成果が出たとしても、公的研究機関には、特許化するノウハウもなく、成果を開発して製品化してくれる企業を探してくる能力もないため、世に出ることは稀であった。
国立大学の独法化(大学法人化)に際して、やはり知財の推進は大きな柱として挙げられ、各大学が認定TLOをつくり、大学発シーズの製品化に大きく貢献している。

4 ナショナルセンターTLO
一方、現在、6ナショナルセンターのTLOは、厚労大臣認定TLOであるヒューマンサイエンス財団が担っている。
ヒューマンサイエンス財団は、その事業として1)政策創薬総合研究事業、2)厚生労働科学研究推進事業、3)厚生労働大臣認定TLO事業、4)研究資源供給事業、5)一般事業他を行っており、理事長には下田智久氏(元厚労省健康局長)が入り実権を握っているという典型的な「天下り財団」である。
ヒューマンサイエンス財団がTLOを担当する研究機関は6ナショナルセンターに加え国立医薬品食品衛生研究所、国立保健医療科学院、国立感染症研究所、国立身体障害者リハビリテーションセンター、独立行政法人国立病院機構他3施設と膨大である。しかし、ヒューマンサイエンス財団には高齢の弁理士が一人しかおらず、およそ十分な業務が行える状況ではない。
実際ほとんどコンタクトもとれず、依頼をしても数カ月たなざらしといったことも多々あるため、多くの研究者から「独法化してもヒューマンサイエンス財団にTLO機能を頼まなければならないのか」という意見が出ている。

5 本改正の内容
今回の改正は、下線部のとおり、非公務員型の独法化をするにも関わらず、TLOの認定権限のみを厚労省に残すという内容である。
そして、その実は、ヒューマンサイエンス財団を引き続き認定TLOにすることで、医系技官が自らの天下り先を保護するというものである。
ナショナルセンターは独立行政法人化するにもかかわらず、旧国立大学とは異なり、自由にTLOを選ぶこともできないばかりか、使い勝手の悪い天下り財団のTLOを使い続けなければならず、官僚支配が存続することとなる。

6 更なる脱官僚を
本改正には、自民党政権下において、幾度となく繰り返されてきた渡り、談合、天下りといった官僚統治の宿唖が凝縮されている。
本来、行政府は、法を執行するだけの機関であり、立法機能は議会が有するというのが三権分立の基本精神である。しかし、現在の日本では、ルールを作る側とそれを執行する者が一体化してしまったため(行政府の肥大化)、行事が相撲を当たり前のようにとる状況となってしまった。
政権交代をして、脱官僚を謳っている中、このような天下り財団保護のための改正が堂々と、しかもナショナルセンター理事長公募の二日後に出ていることは由々しき事態である。と同時に、医系技官は未だに陰でこそこそと隙あらば天下り先を確保しようとしていることを忘れてはならない。
政治主導への改革は緒に就いたばかりである。長妻大臣も、阿曽沼・医政局長(法令事務官)も、武田・政策医療課長(法令事務官)も、医系技官の操り人形とならぬよう、国民目線の改革を肝に銘じていただきたい。

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