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Vol.121 【特集】製薬マネーと医師(1) 製薬会社から医師への謝金など 年間1,000万円超が96人 2,000万円超えも/総額は266億円に 一部の医師に集中

医療ガバナンス学会 (2018年6月14日 06:00)


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http://www.wasedachronicle.org/articles/docyens/e2/

この原稿はワセダクロニクル(20018年6月8日配信)からの転載です。

2018年6月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

日本製薬工業協会(製薬協)(*1)に加盟する製薬会社71社が、2016年度に医師に支払った講師謝金やコンサルタント料などを集計したところ、総額が約266億円に上ることが分かった。

年間で「1,000万円以上」を受け取った医師が96人いた。その約8割が大学教授だった。「2,000万円以上」も6人いた。大学教授や学会幹部、病院長ら、医学界で影響力が強い医師たちに、多額の金銭が製薬会社から支払われていた。

この事実は、ワセダクロニクルと特定非営利活動法人の医療ガバナンス研究所が作成したデータベースと、それを元にした取材でわかった。

(「シリーズ『製薬マネーと医師』を始めます」もお読みください)

http://expres.umin.jp/mric/seiyaku1-1.pdf

◆受領医師の5%に「100万円以上」が集中

国内の医師の総数は約30万人(*2)。そのうち、約10万人に製薬会社から謝金などが支払われていた。

総額は約266億円。医師が受け取った金額は、「2000万円以上」が6人、「1000万円以上」が96人、「500万円以上1000万円未満」が約400人、「100万円以上500万円未満」が約4200人だった。

これからわかることは、謝金など副収入を製薬会社から得ている医師約10万人のうち「100万円以上」を受領しているのは約4700人で、約5%にすぎなかったということだ。一部の医師に製薬会社からの支払いが集中している。

副収入の種類には、講師謝金、コンサルタント料、原稿執筆・監修料がある。

講師謝金は、製薬会社が主催する講演会への謝礼だ。この講演会は医師向けのもので、薬の知識や治療法を解説することへの謝礼。約8割にあたる約223億円が支払われた。

コンサルタント料は、新薬開発への助言などに対する報酬で約32億円。

原稿執筆・監修料は、製薬会社が発行するパンフレットなどに書く原稿の執筆・監修料。約11億円だ。

http://expres.umin.jp/mric/seiyaku1-2.pdf

◆接待規制で、講演会が「販促活動の場に」
なぜ製薬会社は講演会を開くのか。

ある製薬会社の幹部は「接待に対する規制が厳しくなったので、販促活動として講演会ぐらいしか方法がない」という。

製薬会社でつくる医療用医薬品製造販売業公正取引協議会は2012年4月、医薬情報担当者(MR)による医師への接待規制を強化した(*3)。製薬会社と医師との癒着を防ぐためだ。内容は以下のようなものだ。

○医薬情報活動に伴う医師への飲食の提供は、1人5,000円まで

○医薬品説明会に伴う茶菓、弁当代は1人3,000円まで

○医師の費用を負担する娯楽は禁止。娯楽は旅行、観戦、観劇、ゴルフ、釣りなど

それにしてもなぜ講演会が販促活動になるのか。

講演会で講師を務めるような医師は、大学教授や学会の幹部が多い。そうした医師の発言は、他の医師が薬の処方をする上で参考にすることから、製薬業界では業界用語で「キー・オピニオン・リーダー(KOL: Key Opinion Leader)」と呼ばれる。キー・オピニオン・リーダーは製薬会社の販売促進に影響力を持っている医師たちだ。

製薬会社の幹部は「露骨な宣伝はできないが、使用経験や薬の効果についてのエビデンス(科学的根拠)を語ってもらうことで宣伝になる」(*4)。

別の製薬会社の元MRは「講演会で自社の薬に有利なデータをいかに語ってもらうかが営業の勝負だ」と話す。

国も規制 「50万円超」で審議会の議決に参加できず
製薬会社から多額の報酬をもらうことは、製薬会社との利害関係が生まれ、医師としての公正さを損なう可能性がある。

そのような事態を防ぐため、例えば厚生労働省は審議会で新薬を審査する医師に対して次のような規定を設けている(*5)。

(1)過去3年のうち審議に関係する製薬会社1社からの受取額が年間500万円を超える年度がある場合は審議に参加できない。

(2)審議に関係する製薬会社1社からの受取額が、年間50万円を超える年度がある場合は議決に参加できない。

=つづく

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[脚注]

*1 製薬協 2018年5月1日現在、製薬企業71社が加盟する任意団体。1968年に設立。「製薬産業の健全な発展」を目的の一つに掲げている。現在の会長は中山讓治・第一三共会長、理事長は厚生省(現在の厚生労働省)で薬務局経済課長などを務めた伍藤忠春氏。2018年5月24日現在。出典: 製薬協ウェブページ(2018年6月2日取得、http://www.jpma.or.jp/about/jpma_info/jpmatoha.html)。

*2 厚生労働省「2016年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」2016年、厚労省ウェブサイト(2018年5月29日取得、http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/index.html)。

*3 週刊ダイヤモンド編集部「接待に続き売り上げ目標も廃止か」DIAMONDO ONLINE、2012年9月19日、DIAMONDO ONLINE ウェブページ(2018年6月5日取得、https://diamond.jp/articles/-/24852)。朝日新聞「医師への営業『脱接待』」2012年11月20日付朝刊。

*4カッコ内はワセダクロニクル。

*5 薬事・食品衛生審議会薬事分科会「審議参加に関する遵守事項」 2008年、厚生労働省ウェブページ(2018年6月2日取得、http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0324-9f.pdf)。

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