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Vol.130 「はしか」の流行に医師が警鐘 30代のママ&パパがいま知るべき麻疹対策とは?

医療ガバナンス学会 (2018年6月27日 06:00)


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この原稿はAERA.dot(5月10日配信)からの転載いです。

https://dot.asahi.com/dot/2018051000012.html?page=1

Child Health Laboratory代表
森田麻里子

2018年6月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

3月に沖縄県で確認されたはしか(麻疹)は、現在までに愛知県のほか、三重県や東京都、埼玉県などでも感染者が確認されている。沖縄県は8日、新たな患者が出ていないことから終息傾向にある認識を示したが、一方で、大型連休に多くの人が国内外を移動したことから、乳児を含めた感染拡大も懸念されている。自身も1児の母である森田麻里子医師は、親世代に「ぜひ知ってもらいたいこと」として、はしか対策について語った。

*  *  *
まず、1977年から1990年生まれの方に確認してほしいことがあります。家に、または実家に埋もれているであろう「母子手帳」を探し出してください。麻疹(はしか)のワクチンを接種しているか確認できますか。そして、何回接種しているかわかりますか。麻疹にかかったことがなく、1回だけの接種という方は、すぐにMRワクチンまたはMMRワクチンを接種していただきたいのです。

2018年3月から、たった1人の感染者を発端に、全国で100人以上に麻疹の感染が広がっています。麻疹は感染力がとても強く、免疫がないとほぼ確実にうつります。咳やくしゃみのしぶきを直接浴びなくても、空気中に漂っているウイルスを吸い込むことで感染するので、普通のマスクでは防げません。感染を防げる特殊なマスクもありますが、密閉性が高いため息苦しく、付けたまま生活するのは無理です。

麻疹の特効薬はなく、今でも1000人に1人が亡くなります。頻度は低いのですが、亜急性硬化性全脳炎という病気になる可能性もあります。赤ちゃんの時にかかった麻疹のウイルスが、脳の炎症を起こし、小学生になってから急に神経症状が出てくるのです。最終的には歩くことも食べることもできなくなってしまう、とても悲しい病気です。

唯一の予防法は、予防接種です。現在はMRワクチンが定期接種になっていて、1歳で1回目、小学校入学前の1年間に2回目を打ちます。お子さんが1歳を過ぎたら、とにかくすぐに予防接種をしましょう。

残念ながら、1977年から1990年生まれの人は、追加で接種した記憶がなければ、1回しか接種していないはずです。1回接種では約5%の割合で免疫がつかなかったり、時間が経つと免疫が落ちてきたりすることがあります。抗体検査はせずにワクチンを接種しても全く構いません。麻疹単独のワクチンもありますが、この際、あわせて風疹も予防できるMRワクチンを打ちましょう。さらに、おたふくかぜも一緒に予防できるMMRワクチンを取扱っている医療機関もありますし、そうでなくても、MRワクチンとおたふくかぜワクチンを同時接種することができます。おたふくかぜは大人がかかると重症化しやすく、男性では15~30%で睾丸炎を引き起こします。この機会にぜひ予防しておきましょう。

しかし、予防接種を打てない人もいます。妊婦さんが麻疹にかかると、重症化しやすく流産のリスクもありますが、妊娠中は予防接種を受けることができないのです。これから妊娠を計画している方は、パートナーと一緒に、事前に2回目のワクチンを接種しておきましょう。ワクチン接種後2カ月間は避妊が必要ですので気をつけてください。

既に妊娠中だけれどワクチンを1回しか接種していないママや、1歳になるまでの赤ちゃんは、麻疹にかかりやすいと言えます。このようなママや赤ちゃんを守るには、周囲の人がきちんとワクチンを2回接種することが必要です。全体の95%の人が免疫を持てば、麻疹の流行を抑えることができると言われています。

また、周囲で麻疹の流行がある場合には、生後6カ月以降は自費でワクチンを打つことも可能です。その場合でも、1歳になったら通常通りMRワクチンを接種し、小学校入学前に3回目のワクチンを接種する必要があります。医療機関で相談してみてください。

あなた自身やあなたの家族はもちろん、他の妊婦さんや子どもたちを麻疹から守るため、この機会にぜひ、確認してみてください。

◯森田麻里子/医師
東京都出身。2012年東京大学医学部卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント

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