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vol 40 診療報酬改定議論に、もっと「病診連携」の視点を

医療ガバナンス学会 (2010年2月7日 08:00)


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長尾クリニック(尼崎市)
院長
長尾和宏
2010年2月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


激動する政治の裏で、診療報酬改定議論が続いています。一連の報道を見ながら末端開業医として思うところを述べます。

【10年ぶりのプラス改訂に感謝しています】
「たったプラス0.19%」と言われていますが、私はそうは思いません。当初のマイナス3%からプラスに転じました。これは10年ぶりの大きな転換です。   政権公約とはいえデフレスパイラルの大変厳しい財政状況の中、不眠不休で調整に努められてきた政府関係者のご努力に感謝いたします。今は、すでに決定した0.19%をどう活かすか知恵を絞る時です。

【勤務医対策を優先するのは当然】
絶滅種といわれる産科、小児科、救急、外科への手当てを優先するのは当然です。私は、「勤務医あっての開業医」、「勤務医を助けるのが開業医の責務」と考えます。在宅医療にも積極的に取り組んでいますが「救急医療あっての在宅医療」と日々実感しています。
私は「開業医据え置き、勤務医1.5倍」と発信してきました。中医協委員の嘉山孝正先生は現実論として病院報酬1.2倍と主張されています。もし仮に入院報酬が1.2倍になっても勤務医の報酬にはほとんど反映されないとも言われ、勤務医の待遇改善にはさらなる知恵が必要です。
一方、10年間続いた医療費抑制政策により開業医の経営も逼迫しています。資金繰りに困る開業医、特に新規開業組が増えています。開業医は個人事業主でありリスクは当然です。しかしさらなる締め付けは無用な地域の医療資源の崩壊を招きます。診療所の再診料はすでに臨界点です。では、両者とも活かすにはどうしたらいいのでしょうか。

【病院へのフリーアクセス制限】
本来、病院とは入院患者さんに力を注ぐ場です。外来部門を全く持たない病院もあります。今後、病院はできるだけ外来部門を縮小し、病診連携システムを活用し機能分化をはっきり目指すべきです。患者さんの病院志向が止まらない理由は、医療レベルへの期待だけでなく、再診料が安く、複数の科をハシゴしても二科目からは再診料が無料である、長期投薬してくれる、なにより病院とつながれる安心感などです。しかし、すでに確立された病診連携システムをいまこそ国民に強く啓発し、病院へのフリーアクセスを、緩やかでも確実に制限すべきです。これが勤務医の負担軽減、労働条件改善、そして医療費の無駄の排除への近道だと確信します。外来診療はもっと大胆に診療所に任し、外来収益に頼らない病院の診療報酬体系を目指すべきです。

【窓口負担を病院3割、診療所2割、という発想】
病院60点、診療所71点の再診料をどうするか熱心に議論されています。どちらかに統一するのか、中間に落ち着かせるのか、議論が分かれています。しかしフリーアクセス制限の視点からは、点数誘導以外の方法も模索すべきです。民主党の梅村聡参議院議員は、1月24日の医療制度研究会で、「窓口負担を病院3割、診療所2割とする選択肢もあり得る」と述べています。http://excite.co.jp/News/society/20100125/Cabrain_26044.html
病診連携システムにのらずに病院の外来を受診する患者さんの窓口負担を上げるという発想です。わずかな点数操作より、窓口負担割合での誘導の方が国民には効果的だと思います。もし仮に地域連携パスにのらない病院外来が5割負担ならどのような受診行動に変わるでしょうか?これはなにより国民への「病院連携」の強いメッセージとなるでしょう。そして得られた財源を病院報酬に回せるのではないでしょうか。そうすれば「病院と診療所での窓口負担割合を変えることで、両者の再診料をとりあえず据え置く」という選択枝も可能ではないでしょうか。

【5分間ルール廃止のその後】
「5分間ルール」導入により現場は混乱しました。しかし一定の効果をあげ、その役割を終えようとしています。問題は廃止後の外来管理加算の取り扱いです。診察に入らず「お薬だけ」を要求する患者さんが現実にはまだ多い中、正しい受診方法を政府として国民啓発して欲しいものです。再診点数が、再診料+外来管理加算という患者さんには分かりにくいルールをこの際、整理して頂くことを希望します。また外来管理加算より低い消炎鎮痛処置料や現場と乖離したリハビリ日数制限など矛盾に満ちた複雑な保険診療規則の整理も希望します。誰にでも分かりやすい「新しい再診料の設定」から、「ルールの簡素化」が始まるものと期待します。

【いまこそ日医は病診連携の主張を】
医療費の無駄は、病診連携システムの徹底、病院へのフリーアクセスの制限、窓口負担割合の変更でかなり省けるはずです。今回の改訂には間に合わないかもしれませんが、診療報酬議論が「地域医療連携」という大きな視点から見直されることを期待します。また岐路に立つ日本医師会は、いまこそ「地域医療連携」を強く主張すべきだと思います。

【筆者プロフィール】
長尾和宏 尼崎市昭和通7-242 長尾クリニック
1984年東京医大卒、大阪大学第二内科入局、市立芦屋病院勤務、1995年開業、
尼崎市医師会地域医療連携・勤務医委員会委員長、近著「町医者力」(エピック)他
HP  http://www.nagaoclinic.or.jp
ブログ http://www.nagaoclinic.or.jp/doctorblog/nagao/

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