vol 44 女性医師と医師不足 (3)
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横浜市立大学附属病院神経内科
教授
鈴木ゆめ
2010年2月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
先日の朝のニュースで新設医大が認められそうとのことでした。夜のニュースでは、女性医師を非常勤で職場復帰応援する仕組みについての紹介。いずれにしろ、医師不足が全面に打ち出されています。
しかし、研修医制度改変によって起こった医師偏在を放置したまま医科大を増やすというような、昔風にいえばカンフルでいいのでしょうか。熱はいっとき下がってもまたあがるし、病巣はその間に拡大します。医科大新設はきっと、メディカルスクール構想も含んでいるのでしょう。医専復活。たぶん、受験資格は思ってもみないほど大幅に広がるのでしょう。
医師数が増えれば医者の仕事が楽になり、ライフワークバランスをとっていけるという、内閣府の方針にも一致するというわけです。私の試算によれば、増える分の半分は女性医師です。女性医師は非常勤やマイナーな科に行くことを是としているのが今の男女共同参画の考えのようです。津々浦々でライフワークバランスを求める昨今、朝から晩まで働き、当直業務、緊急呼び出しに耐えうる医師は実はそれほど増えないことでしょう。そういう働き方が必要な科はなくならないでしょうが。
となると、医療費そのままで医師数を1.5倍に増やすとすれば、今後も減らない当直やふえる緊急、より高度になる医療を、今より明らかに悪化した報酬でやる人が残るということです。医療費が1.5倍になることをだれも喜びません。かといって、現在、すべての医師がその働きや責任に見合った報酬を得ているとは思えません。
アシスタントフィジシャンの資格も長く検討されています。政府がお金を掛ける必要性が減るという試算でしょうか。しかし、カルテの電子化が行われ、例えば処方箋や指示は、医師がどこにいても端末があれば入力し、電話でその旨を伝えれば済むようになりました。今や私たちはトイレにいてさえ、院内携帯で呼ばれて追加指示や処方の依頼、確認を行うことができます。パスワードで開ける端末からの入力と、携帯電話での確認によって、指示や処方が可能になるわけです。現状打開には電子化を利用することが重要です。
さらには、看護師が看護という仕事が十分にできるように看護助手や助手を多く雇うことです。医師の仕事のかわりをさせようなどという、看護を見くびったやり方には全く賛同できません。准看護師制度は廃止になるとしか考えられない向きがありますが、これも、働きながら准看護師を目指し、それから看護師になろうという志のある人にはその道を閉ざしてしまうことになります。
今後、機械化がもっと進み、アンドロイド型にとらわれないロボットが様々な方面で人間の仕事を行うことになると思います。ロボットにはエネルギー、そして我々には水、これらを制したものが世界に先んじられることでしょう。私が前に卒業した文化系の大学の講義でもっとも印象に深かったのは商品科学の教授が複雑な計算をして、「真水は地球上からなくなる」と証明した授業でした。30年も前のことですが、そのインパクトは強く、今でも昨日のことのように思い出します。しかし、私は人の英知を信じています。太陽からのエネルギーを効率よく取り込み、海水を真水にreasonableな値段でかえられること。海水面上昇もこれで一気に解決!そしたら、人は仕事を失うことでしょうが、その時には、今はやりの多機能大型テレビでも見て大口開けてわらっていればいいのでしょうか。それでもあくせく働く自分の姿しか想像できないのが少々悲しいですが。