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Vol.223 現場からの医療改革推進協議会第十三回シンポジウム 抄録から(1)

医療ガバナンス学会 (2018年11月5日 15:00)


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2018年11月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十三回シンポジウム

2018年11月24日(土)

【ご挨拶】13:00-13:15

●林良造

医療分野の改革の種は尽きない。最近も本庶教授のノーベル賞受賞をきっかけに、オプジーボ問題に改めて焦点が当てられた。これは、高騰する革新的新薬の保険収載をめぐる医療財政の持続可能性という側面と、極めて有効な革新的新薬の開発普及にいかに適切なインセンティブを提供できるか、という両面の問題を提起している。
また、小林慶一郎氏、松山幸弘氏らの著書『財政破綻後』は、現在のまま綱渡りを続けて財政破綻した場合に、財政支出の大きな部分を占める医療に何が起きるか、という視点から避け得ない選択を突きつけている。
さらに、高齢化社会の「支える側」と「支えられる側」のアンバランス。健康寿命延伸を通じて大きく変化しうるPopulation Healthに関し、IoTやAIといった新技術の可能性を日本でいかに具体化できるか。政府のかかわり方、インセンティブの構造、個人情報の取り扱いなども含め、新たな問題が提起されている。
そして、東京医大に端を発した女性に対する入学試験での差別問題。医師の働き方改革や、医師の使命感に過剰に依存した医療供給体制、多種多様な病院・ベッドの乱立問題、診療報酬体系に振り回される病院経営問題へと繋がる、医療制度の根深い問題を提起している。
医療は多くの関係者の協働で成り立つサービスであるが、関係者間の情報の非対称性が甚だしく、また、生命に関わるため、安全規制、価格面、提供体制いずれの面でも国の関与が極めて大きい。即ち、アクセス・コスト・医療の質という両立の極めて難しい目標に向かって互いに影響しあう複雑な制度を、国が運営している。ひとつの現象をめぐっても多くの制度と主体が入り組んでおり、その解決は単純ではない。
しかし、そうした状況は必ずしも日本特有ではない。新薬開発の高コスト化、人口の高齢化、医療過誤問題、増大する医療費と制度の持続可能性、医療提供体制のさまざまなゆがみは、ほぼ万国共通の問題として、各国の対応力が問われているる。
日本では、この協議会を始め各所で現場の声が上がり、この10年で大きく改善されてきた。しかし日本のシステムは、しがらみのなかにある執行官庁が、全会一致型のコンセンサスシステムの下に改革を目指す形になっている。時間の限られる中、閉ざされたサークル内で執行官庁の裁量による小手先の解決が優先され、根本的な対応は先送りにされがちとなる。
この製薬を乗り越えて改革を進めるためには、何よりも現場からの問題提起と絶えざる透明化の追求、そして、根本解決を合理的な手法で追求する姿勢が欠かせない。
この協議会が果たしてきた役割はそこにある。今年も活発な議論に期待したい。
【Session 01】13:15 ~14:15

● 「2018」
小野俊介

近未来のディストピアを描いたジョージ・オーウェル『1984』に、ニュースピーク(newspeak)という言語が登場する。全体主義国家の支配者(党)が国民の語彙・思考を制限し、党のイデオロギーに反する思想を、つまりややこしいことを「考えられぬようにする」ための言語。だから語彙(言葉の意味)が毎年減っていく。ん? 何のことはない、今の医薬品業界で使われている言語がそれである。
「バカなことを。グローバル開発、遺伝子・再生医療、ヘルステクノロジーアセスメント……語彙は爆発的に増えてるぞ」と業界人は反論するのだろう。そうですね、普段からテレカンしたりブレストしたりRWDのエビデンスをアジェンダにしてCMOへのアウトソーシングを考えたりしている皆さんだもの。ろくに意味のない略語の多用も、ニュースピークの特徴。
先日ある業界人が「AIに副作用を検出させようとすると、AIってバカだからホントに変な『副作用』を見つけちゃうのよね、アハハ」と大笑いしていた。かわいそうに。もちろんこの業界人が、である。「副作用」のまともな意味論的定義の試みに人類が一度も成功したことがないことを、理解できないらしい。定義に「因果関係」なる語を当然のように使っている時点で、人類はまだ北京原人レベルなのに。
グローバル化と称する植民地化がニュースピークで語られるのも、必然である。従来から業界人は、「薬が効く」という表現を(アリストテレス的本質のごとく)平然と使ってきた。薬って、「あなた」や「私」が存在しないことには効くも効かぬもないはずなのだが。ニュースピークで書かれた最近のガイドラインには、「国際共同試験では薬の評価の邪魔をしないような被験者を選ぶべき」という、正気の沙汰とは思えぬ趣旨の記述がある。
少し前のノーベル賞月間。テレビを見ていたら「速報! ノーベル物理学賞、日本人は受賞せず!」というテロップが。受賞者の業績をノーベル財団の人が解説してるのに、一切無視。興奮したアナウンサーが、「日本人ではありません!日本人ではありませんでしたぁ!」とわめき続ける。人類の知なんてものにはまったく興味がないらしい。
『1984』に一番近い島、ニポン。
●神奈川県に見る、「独立行政法人」の実態
土屋了介

2014年4月、神奈川県知事黒岩祐治氏に招聘され、地方独立行政法人神奈川県立病院機構の理事長に就任した。就任前、2013年11月に神奈川県顧問に任命されたので、県の医療行政について説明を受けるとともに、理事長就任に備え、各病院を視察した。自治体病院の抱える課題を解決すべく2018年1月まで努力したが、知事の理解を得られず、同年2月3日に「『理事長が配置転換した神奈川県立がんセンター病院長の事例を取り消せ』という知事の指示を受けられないなら、罷免する」と恫喝され、3月6日に解任された。
神奈川県顧問主任から約4年間で経験した、「神奈川県に見る『独立行政法人』の実態」について報告する。

神奈川県に見る『独立行政法人』の実態は以下のとおりである。

1.知事をはじめ県の幹部職員は、「独立行政法人法」を読んでいない。
2.県は、「地方独立行政法人神奈川県立病院機構」を自立させる気はない。
3.県幹部職員も県立病院機構役職員も、県からの負担金を削減する気はない。
4.県立病院機構役職員は、患者第一より職員優先。
5.医師は、独創的な研究を計画する術を知らない。
6.一部の職種を除いては、職員の教育制度が整備されていない。
解決策については政治的な問題も含まれるので、当日、参加者と一緒に討論して、結論を示したい。
●新専門医制度の問題
立谷秀清

専門医機構がまがりなりにもスタートして半年が経過したが、「あり方検討会」で指摘された問題の多くを先送りして始まった。「あり方検討会」もこれで終わったわけではないらしいので、医道審議会の専門医部会の議論と並行して(回数は減少)、医師養成のあり方と地方医師不足、診療科の偏在解消をテーマに議論していくことになる。
新専門制度(私はこれを制度と呼ぶには抵抗があり、法律の定めもないのに制度を機構が勝手に謳っている)が始まり、案の定、東京一極集中が進んだ。日本医師会の副会長で機構の理事でもある今村医師によれば、数字のマジックだというが、地域医療の存続に悩む市長たちがこの話を真に受けることはない。
私がずっと公言してきたことだが、福祉国家を実現するために国民医療があり、その大きなウエイトを占めるのが地域医療。これを公平かつ適切に実現するために医学があり、医学教育があるのだ。専門医制度が、地域医療の実情を大きく意識することもなく貢献もしない、あるいは足を引っ張るとしたら、たとえ崇高な理念であっても本末転倒と言わざるを得ない。例えば、総合臨床専門医を養成して一般診療に幅広く対応できるスペシャリストと定義し資格を与えれば地域医療の質が上がるというが、そのためにすべてのジェネラルな医師たちが大学病院をはじめとする基幹病院で論文や学会発表付きの研修を求められるとしたら、地域医療の世界で一般診療に従事してきた赤ひげ先生たちはどうなるのか? そもそも総合診療に何が専門領域なのか? 医師免許に松竹梅をつけるだけではないのか?
となると、初期研修の意味をどこに位置づけるべきなのか? 初期研修が始まった時の理念は、総合診療能力の取得ではなかったのか?
私は、専門医機構というたかだか民間の社団法人が、国会の議論も無しに巨大な権力を持ってしまう社会構造を怖れる。
これからも、市長会としてしっかりと意見していきたい。
●「己を知ること」の医学的アプローチ
鍋山隆弘

「彼を知り己を知れば百戦殆ふからず」とは、孫子の有名な言葉です。剣道においても、相手の特徴や技を見極めて勝負するのですが、その見極めが甘かった場合や、相手が想定外の動きをした時などは、その場で瞬時に判断することが求められます。判断に迷いが出ると動揺し、動揺すると防御が多くなり打突される機会が増え、結果として相手に打たれて負けてしまいます。
では、強い選手は動揺しないのでしょうか。動揺しない精神力を身につけるには、時間がかかります。まずは、動揺した自分自身を受け入れることが克服への第一歩と考えています。私は、動揺すると手に力が入り、打たれたくない気持ちが強くなると、身体を出す飛距離が落ちますが、そうした精神や身体の変化を自ら受け入れることで、動揺した状態を乗り切ります。
さて、本業である監督としても、選手の動揺をなくすことが私の指導の中心となっています。動揺した動きを察知して、選手に問いかけます。「なぜそうなるかを考えなさい」。選手は十人十色です。問いかけて、自分自身で答えを見つけさせる。これが選手にとっての一番の成長だと思い、重点的に指導しています。
とはいえ、精神的な強化だけでは常勝チームを作ることは難しいと考えています。私の指導している学生の大半は、体育を専門としています。栄養学やトレーニング学、自分の身体を作る勉強の機会はたくさんありますので、「足りないと思ったことは勉強して実践しなさい」という指導方針で、これまで乗り切ってきました。
毎年少しずつ負荷を増やしている稽古メニューにも、果敢に取り組む姿勢の選手が大半を占めるようになりました。しかし、体調不良や貧血で稽古に参加できない選手も増えてきているように感じます。今後も常勝チームを作っていくには、医学的アプローチで「己の体の状態を知ること」が重要ではないかと思っています。

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