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Vol.227 「ホンモノニツナガルプロジェクト」の取り組み

医療ガバナンス学会 (2018年11月8日 06:00)


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(医)如水会 嶋田病院
理事長 嶋田英敬

2018年11月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2016年4月、私たちが住む熊本市は震度7の大地震に二度も襲われました。
その後、学校は数か月の間 休校になり、子供たちの授業には大きな遅れが生じていました。学校からは「2016年末までにカリキュラムの遅れは取り戻した」と聞かされましたが、果たしてそんなにすぐに遅れを取り戻せていたのでしょうか?子供たちはついて行けていたのでしょうか?また、数か月間に渡って校内に避難所が設けられるなどしていた学校は、子供たちにとって良い学習環境だったのでしょうか?
いま震災から2年半が経ち、熊本の街は復興・復旧が急速に進んでいるように見えます。しかし大規模災害が被災地に及ぼす影響は数年経ってから顕在化してくるとも言われています。特に子供たちの教育に関してはそのようなデータが出ています。震災後間もなく、私たちは熊本の子供たちの教育にも、数年後に悪影響が顕在化してくるのではないかとの懸念を強く抱きました。もっとも恐ろしかったのは、子供たち自身が悪影響を受けていることに気付いていないかも知れないということでした。

そのような焦りにも似た気持ちを崇城大学のSCBグループ(Social Community Brand:地域コミュニティブランド http://www.scbrand.info/about/ )に相談したところ、賛同する方々を集めてくださり『ホンモノニツナガルプロジェクト実行委員会』を立ち上げることができました。https://scbhonmono.wixsite.com/home
SCBは、崇城大学情報学部の星合隆成教授が、2011年に提唱した地域活性化、コミュニティビジネス創発のための理論です。「モノ」ではなく「繋がり」や「活動」をブランディングすることにより、ブローカレス理論に基づいた人的ネットワークの構築を行い地域活性化やコミュニティビジネスの創発を図るというものです。ICTにおけるP2P(ピア・トゥ・ピア)技術に倣ったネットワークをイメージして頂けると分かりやすいのではないかと思います。

「重要他者と出会う」ことで、熊本の子どもたちが震災をポジティブに捉えなおし、目標に向かって歩き出すきっかけを掴んで欲しいという思いから、私たちは様々な分野の最先端の人材(ホンモノ)を招聘して、ホンモノの先生と子どもたちが直接つながれるイベントを実施することにしました。ホンモノの先生が子供の頃の夢や、体験談、失敗談などを子供たちに共有してもらうことで、どうすれば自分たちもホンモノになれるのかを考えてもらう機会を作るという活動です。

活動内容
第1回医療編(2017年5月21日)
講師 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科教授 横尾隆 先生
テーマ 最先端の再生医療研究について
第2回医療編(2017年11月12日)
講師 国立がん研究センター 研究員 木村綾 先生
テーマ がん研究 なぜなに?
第3回医療編(2018年5月20日)
講師 神戸大学医学部 感染症内科教授 岩田健太郎 先生
テーマ 頭がいいとはどういうことか?
第4回宇宙編(2018年11月18日)
講師 極地探検家 村上祐資 先生
テーマ 拾い続けることをあきらめない~火星の暮らしが教えてくれること~

各回の第一部では先生方が専門分野の研究内容を分かりやすく解説してくださるので、子供たちもそれに応えようと真剣に食い入るように聴いています。第二部では先生方の子供時代やこれまでのキャリアパスについて話してくださるので、子供たちは今の自分や将来の自分にその姿を重ね合わせてイメージを膨らませています。最後のディスカッションでは先生方が子供たちひとりひとりに直接問いかけたり、子供同士でアイデアを出し合ったりすることで参加者全員に繋がりを実感してもらっています。ここで生まれた人と人とのネットワークがプラットフォームになり、震災に負けないコミュニティができていくことを願っています。
先日、第1回に参加してくれた高校生の中から今春、医学部に進学した子が3人も出ていたと聞きました。この活動が少しでも彼らの背中を押していたとすれば嬉しい限りです。

現在まで、有志の方々のご寄付やボランティアスタッフのおかげでなんとか年2回ずつの活動を続けることができています。しかし活動の主旨や内容に理解が得られにくいせいか、助成金や補助金の申請はことごとく断られており苦しい状況が続いています。講演依頼を断られることもあり前途多難ではありますが、ホンモノの先生方と出会ったことで輝いている子供たちの表情を見ると、まだまだ頑張って続けていかなければならないと思わされます。

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