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Vol.233 妊活中や妊娠中の「葉酸サプリ」その効果とは? 医師が指摘する摂取の注意点

医療ガバナンス学会 (2018年11月13日 06:00)


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この原稿はAERA.dot(9月19日配信)からの転載です。

https://dot.asahi.com/dot/2018091800008.html

森田麻里子

2018年11月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

妊娠を考えてる、または妊娠中の人は、サプリメントを摂っていらっしゃるという人も、最近は多いのではないでしょうか? 特に葉酸のサプリメントは、雑誌などでもよく取り上げられ、その重要性が浸透してきたようです。

葉酸は水溶性のビタミンで、DNAの合成に関わる大切な栄養素です。緑黄色野菜や大豆、レバーなどに多く含まれますが、食品中の葉酸は吸収率が50%程度と言われています。一方で、サプリメントの葉酸の吸収率は85%程度とも言われており、妊娠を希望する女性にはサプリメントの摂取が勧められています。

葉酸サプリメントが勧められている一番の理由は、二分脊椎症などの赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低下させる効果があるからです。赤ちゃんの神経系は妊娠の初期から作られ、先天異常は妊娠7週頃までに起きます。ですから日本では、1日あたり400マイクログラムの葉酸サプリメントを、妊娠の1カ月前から妊娠3カ月までの期間に摂取することが推奨されています。

「夫婦で葉酸サプリメントを飲んで、赤ちゃんを授かりました!」というような個人の経験談を目にしたことがある人もいると思われますが、確かに葉酸サプリメントを摂取したほうが、妊娠率が高まるという研究はあるようです。

1996年に発表されたハンガリーの研究では、妊娠を希望する女性7905人を2グループに分け、一方には葉酸800マイクログラムを含むマルチビタミンサプリメント、もう一方には銅・マグネシウム・亜鉛・ビタミンCを含んだサプリメントを飲んでもらい、14カ月間追跡しました。すると、マルチビタミンを飲んだグループでは71.3%が妊娠したのに対し、もう一方のグループで妊娠したのは67.9%で、有意な差が認められました。また、2002年の南アフリカの研究では、103人の不妊症の男性に葉酸と亜鉛のサプリメントを26週間飲んでもらったところ、精子の濃度が有意に増加したという結果も出ています。

神経管閉鎖障害を予防する効果と比べると、不妊症に対する効果ははっきりしていません。しかし、いずれにしても妊活中は葉酸サプリメントを飲んだ方が良いですし、希望があれば、男性が葉酸サプリメントを飲んでも構わないと思います。

それでは、妊娠3カ月以降、葉酸のサプリメントは飲み続けたほうが良いのでしょうか?

葉酸は、神経だけでなく、赤血球を作るのに必要な栄養素でもあります。厚生労働省の資料では、妊娠中は普段より240マイクログラム多く摂取することが必要とされています。

しかし、葉酸サプリメントを高用量で内服したり、妊娠後期まで内服すると、喘息のリスクが高まるかもしれないという可能性もあります。1998年から2005年にかけて、557人の赤ちゃんを追跡したオーストラリアの調査によると、妊娠後期に葉酸サプリメントを1000マイクログラム摂るごとに、3歳半のときに喘息になっているリスクが1.23倍になるという結果が示されました。この機序としては、ネズミの実験から、葉酸がDNAに作用して呼吸器系のアレルギーのリスクが高まる可能性が指摘されています。

一方で、関連を否定する研究も複数発表されており、葉酸サプリと喘息の関係を調べた論文をまとめて解析すると、葉酸と喘息の関連ははっきりしないという結果も出ています。今の段階ではっきりしているのは、妊娠前から妊娠3カ月にかけて、400マイクログラムの葉酸サプリメントを飲んだ方が良いということです。

妊娠3カ月を過ぎてから葉酸サプリメントを摂取するのは、明らかなメリットがあるとまでは言えないでしょう。妊娠前~妊娠初期にかけての葉酸サプリメントは、摂取量があまり多くなりすぎないよう400マイクログラム程度にし、妊娠中期に入ったら量を減らすか、サプリはやめて食品から積極的に摂取するので十分かもしれません。

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