医療ガバナンス学会 (2018年11月27日 06:00)
開会の挨拶は、成田市議会議員で、成田医療2038研究所の宇都宮高明理事長。いわずとしれた成田市の医学部新設の立役者だ。熱い想いが語られると、通りすがりの買い物中の奥様たちが、「あ、宇都宮さんだ」と足を止めていく。
第一部は上昌広医師による基調講演「現場からの医療改革~成田からの発信~」、会場に「え、何、堅い話?」という雰囲気が漂うが、話はいきなり中森明菜の『北ウィング』や長谷川和彦監督の『青春の殺人者』からはじまる。成田市や成田空港を舞台にした、ドラマや映画、小説について触れ、続いて出てくるのは、1933年当時の千葉県の多額納税者一覧。この年のトップはヤマサ醤油社長の浜口儀兵衛氏で、上位10名のうち、実に8名が醤油の醸造関連であることが示されると、主に年配の方が「うんうん」といった感じでうなずいているのが分かる。三里塚闘争の歴史や38年振りの医学部設立に至った経緯、亡くなられたばかりの仙谷由人さんとの関わり、と話はすすみ、地域を動かす若者をどう育てるか具体的な事例が紹介されていく。会場には、まさに地域の企業の若手リーダーや、学生も集まっており、第一部が終わると、いつのまにか立ち見が出ている会場は今後への期待を込めた拍手につつまれた。
第二部は、医学部入試における女性差別問題や医師の労働環境の問題を切り口に、成田の医療の未来を語るシンポジウム。この問題で発信を続けている山本佳奈医師と、NHK報道局社会部の小林さやかさん、私に上昌広医師、会場を交えてのディスカッションであった。小林さやかさんは、セミナー後の26日にオンエアされたニュースウォッチ9の「無給医」特集の取材がまさに佳境に入っているタイミングでの登壇。我々にとっては関心事であり、またニュースで連日報道されていた内容ではあるが、会場の関心はどうだろうか。企画段階では不安があったが、当日の議論は盛り上がった。「新しくできる病院」をどう活かすか。これまでこの地域の医療を支えてきた成田赤十字病院と、2020年開院予定の国際医療福祉大学附属病院、この間に適切な競争があることで地域の医療の質が上がる、この関係を地域の人々がどう利用していくかで地域の医療の将来が決まる、これから具体的にやるべきことは多い、セミナーはそんな話で締めくくられた。
実は私が、成田でシンポジウムに参加するのは2回目だ。前回は2010年。医療構想・千葉のメンバーとして、成田市との共同開催で「国際都市成田の将来と新しい医科大学構想」シンポジウムの企画に携わらせていただいた。その時の会場は市役所内の会議室で、まさか2回目が買い物客の行きかう百貨店の一角とは思わなかった。「Amazonで買えないものが百貨店にあったらワクワクしませんか?それが医療の議論でも面白いとは思いませんか?」宇都宮理事長が冒頭で会場へ問いかけた。そのとき会場は半信半疑だったが、終了後は、みな理解していたと思う。百貨店に買い物にいったら医療の議論をしていたら面白い、と。