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Vol.066 帰省シーズン前にチェック! 長距離移動時の「感染症予防」アイテムとその理由

医療ガバナンス学会 (2019年4月12日 06:00)


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この原稿はAERA.dot(12月26日配信)からの転載いです。

https://dot.asahi.com/dot/2018122100094.html?page=1

森田麻里子

2019年4月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

早いもので、2018年も残りわずかとなりました。年末年始に帰省される方もたくさんいらっしゃると思います。しかし冬場は一般的な風邪やインフルエンザ、ノロウイルスをはじめとするウイルス性胃腸炎など、感染症が流行する季節です。移動のためお子さん連れで新幹線や飛行機などの公共交通機関を利用する方も多いですが、病院もお休みになっている年末年始に、帰省先など普段と違う土地でお子さんやパパ・ママが体調を崩してしまうと大変です。今回は、長距離移動時の感染症予防について、お話していきます。

まず、マスクについてです。

マスクを喜んでつけてくれるお子さんなら、ぜひつけてあげてください。暖房で乾燥しがちな移動中も、鼻や喉の湿度を保ち、細菌やウイルスに対する防御力を維持することができますし、咳やくしゃみの飛沫を吸い込んで感染することを防ぐ効果もあります。

■長距離移動中にはウェットティッシュ

しかし、なかなかマスクをつけてくれないお子さんや、赤ちゃんの場合は、マスクをつける必要はありません。風邪などの主な感染経路は接触感染だからです。唾液や鼻水のついた手で触られたドアノブ、手すり、つり革などを触ると、手にウイルスがつきます。そしてその手を洗わずに食事をしたり、小さいお子さんなら指しゃぶりをしたりすると、体の中にウイルスが入ってしまうのです。

これを防ぐには、とにかく流水と石けんで手洗いすることが大切です。しかし、年末年始の長距離移動中、子どもが手すりを触ったり移動中におやつを食べたりするたびに手洗いをするのは、現実的に難しいと思います。そこでおすすめするのが、ウェットティッシュやおしぼりと、手指消毒用のアルコールジェルです。

ウェットティッシュには除菌タイプのものなど様々な種類があります。除菌表示には、日本衛生材料工業連合会という機関の自主基準が定められており、一定の試験をクリアしたものにマークがつけられています。その試験方法を簡単にご説明すると、大腸菌や黄色ブドウ球菌をステンレス板に塗りつけて、除菌効果のない布とウェットティッシュでそれぞれ5往復拭き取った後、残っている菌量を比較するというものです。ウェットティッシュで拭き取った後の菌量が、除菌効果のない布で拭き取った場合の100分の1以下になっていれば、合格ということになります。

除菌ウェットティッシュはさらに、アルコールを含むタイプのものと、アルコール以外の殺菌剤を含むものに分かれます。ノンアルコールタイプのものは「肌に優しい」、だから「お子さんにも安心」というキャッチコピーがつけられたりしていて、子どもにも使いやすそうに思えます。しかしここで注意していただきたいのは、「除菌」というのは細菌を減らす効果だけを見ているということです。

冬に流行する感性症の多くはウイルス性なので、細菌だけではなくウイルスに対する効果が大切です。実は、アルコール以外の殺菌剤は一般的に、ウイルスへの効果は弱いです。また、アルコールを含むウェットティッシュであっても、消毒ジェルやスプレータイプのものに比べてアルコール濃度は低く、効果は落ちると考えられます。

■流水20秒間の手洗いと同等に

ウェットティッシュの役割で一番大切なのは、流水・石けんでの手洗いの代わりに、物理的に菌やウイルスを落とすことです。埼玉県の消費生活支援センターが行った除菌ウェットティッシュのテスト結果を見ると、水道水を含ませたティッシュペーパーで拭き取るか、除菌ウェットティッシュで拭き取るかということよりも、2~3回以上拭き取ることが除菌するために大切だということがわかります。2001年に発表された長崎大学医療技術短期大学部の研究でも、除菌でないウェットティッシュで両方の手のひらと手の甲を5回ずつ拭くことで、流水20秒間の手洗いと同等に手指の細菌が減少したという結果になっています。ウェットティッシュは、薬剤による除菌効果を期待するよりも、手洗いの代わりに物理的に落とすためのものと割り切ってしまってもよいのではないでしょうか。顔や口まわりにも安心して使える、除菌でないウェットティッシュやおしぼりをたっぷり持って行くのが私のおすすめです。

ウェットティッシュで汚れを拭き取ったら、手が乾いた後に、アルコール消毒ジェルやスプレーを使うと良いと思います。ジェルやスプレータイプのアルコール消毒剤は、アルコールの濃度も70~80%と十分なものが多いです。最近では、pHを酸性にすることで、本来アルコールが効かないとされているノロウイルスなどへの効果が期待できる製品も出てきました。こういったものを使うと、より安心かもしれません。

年末年始もしっかり感染症を予防して、皆様どうぞよいお年をお迎えください。

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