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Vol.145 なくそう、日本医療安全調査機構!医療事故調査・支援センターの「指定取消処分」を国・厚生労働省は下すべきである。

医療ガバナンス学会 (2019年8月23日 06:00)


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一般社団法人全国医師連盟代表理事
中島恒夫

2019年8月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

はじめに結論を申し上げよう。
国・厚生労働省は、一般社団法人 日本医療安全調査機構に対する医療事故調査・支援センターの「指定取消処分」を下すべきである。
そして、日本医療安全調査機構をなくそう!

第6次改正医療法で創設された医療事故調査制度だが、医療事故調査・支援センターの運用を指定された日本医療安全調査機構の遵法意識が欠落している状態を、国、厚生労働省は3年以上もの間、放置している。それどころか、高額の予算を付けている。法を守らない組織に予算を付ける意味が、私にはわからない。脱法運用を継続する日本医療安全調査機構は、医療事故調査・支援センターとして不適格である。そして、その存在自体が、もはや害悪そのものでしかない。国、厚生労働省は「指定取消処分」をなぜ下さないのだろう。
法に基づいた医療事故調査能力を既に持つ別団体が実際にあるにもかかわらず、である。

医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)は、これまでに8回の「提言」を公開している( https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=1#teigen009 )。しかし、そのどれもが第6次改正医療法に記されている医療事故の定義を逸脱している。医療事故の定義すら全く理解していない。いや、理解しようとしない姿勢は、医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)に遵法意識が皆無であることを露呈している。
第9号「入院中に発生した転倒・転落による 頭部外傷に係る死亡事例の分析」( https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/teigen-09.pdf )を公開したが、今回の対象事例の選定も、相も変わらず第6次改正医療法の定義外の事例である。もはや、確信犯である。第9号に取りあげられた「転倒・転落による頭部外傷」は、入院中の患者であれば、誰でも「予期できる」ことである。

尤も、日本医療安全調査機構「医療事故調査・支援事業運営委員会」委員の顔ぶれを見れば、法の定義から逸脱した運用しかできない組織であることは、医療事故調査・支援センターに指定された当初から十分に「予期できた」ことである。
かつて、「群馬大学医学部附属病院・医療事故調査委員会報告書の功績」( http://medg.jp/mt/?p=7465 )という拙文をMRICから配信してもらった。あわせてお読みいただくことをお勧めいたします。拙文で指摘した点は、現在の医療事故・調査支援センター(日本医療安全調査機構)の手口そのものであった。ちなみに、群馬大学医学部附属病院・医療事故調査委員会の顔ぶれはこちら( http://www.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/08/27.8.10jikotyoiin.pdf )に公開されている。そして、日本医療安全調査機構「医療事故調査・支援事業運営委員会」委員の人選は、こちら( https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/soumu01/meibo20180731.pdf )に公開されている。

第6次改正医療法に基づく医療事故調査制度の目的は、従前の「責任追及」「処分」「処罰」「報復」「救済補償」ではない。「医療安全」が医療事故調査制度のただ1つの目的に定められた。厚生労働省は自身のホームページ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061209.html )で、現在の我が国の医療事故調査制度はWHOドラフトガイドライン上の「学習を目的としたシステム」にあたると、説明している。WHOドラフトガイドラインは、WHOのホームページ( https://apps.who.int/iris/handle/10665/69797 )で読むことができる。英文が不得手な方々には、日本語訳の書籍( https://www.herusu-shuppan.co.jp/736/ )も販売されている。医療事故調査制度の目的が「医療安全」ただ1つに変わったことは非常に重要で、医療安全に理解の無い者が最初にぶつかる大変難しい問題である。なぜなら、医療安全への理解が無い者にとっての拠り所が、「注意喚起」や「確認励行」といった「精神論」や「根性論」しかないからである。
群馬大学医学部附属病院・医療事故調査委員会は、事故調査報告書の冒頭で、医療事故の定義を自分達に都合の良い内容に変える断り書き、すなわち「先付け」をした。そして、自分たちに都合の良い定義を先付けすることで、報告書の目的を従前の「責任追及」「処分」「処罰」「報復」「救済補償」とするお墨付きを自分たちで発行し、「責任追及」「処分」「処罰」「報復」を目的とした前近代的な事故調査手法を堂々と駆使した。
医療事故・調査支援センター(日本医療安全調査機構)のこれまでの「提言」も、同様の組み立てで文章を羅列している。このため、「医療安全」にはほとんど役に立たない「注意喚起」や「確認励行」といった「精神論」や「根性論」を繰り返し披露している。「部品の交換」という「トカゲの尻尾切り」しかできない組織に、医療というシステム全体を広く俯瞰して医療安全に資する能力や、ヒューマンエラーの防止策、わかりやすく・使いやすい製品設計など、医療従事者に安寧をもたらす作業環境の最適化を図る能力を期待してはいけない。

「医療安全」のための医療事故調査は、「科学」そのものである。システム工学や人間工学なども理解した上での事故調査手法が基盤となる「科学」である。決して「疑似科学」ではない。医療事故・調査支援センター(一般社団法人 日本医療安全調査機構)は、この差異を未だに理解できていない。
現在の医療事故調査制度は、トップに就く者の姿勢、事故調査委員の人選、事故調査手法、事故調査報告書の取り扱いなど、様々な問題が今後も続き、混乱し続けるだろうと、私は上記の拙文で2年前に予言した。まさにそのとおりの展開である。なぜなら、医療事故調査制度によって利益や報酬を得られる様々な者が、我田引水の如く制度を利用し続けているからだ。

自分に染みついたスタイルを変えることは、誰にとっても非常に難しい。現在の医療事故調査制度への造詣を深めなければならないというストレスに、医療事故調査・支援センター(一般社団法人 日本医療安全調査機構)の面々は苦しんでいるのだろう。しかし、彼等はプライドに満ち溢れた方々ばかりである。自らが苦しみ、もがいていることを、他人に知られることは「悪」であると考えている方々である。周囲の者がその点を忖度、もとい、重々汲み取り、おもんばかる必要がある。そのようなストレスに満ちた苦労をする必要がなくなるように。

だから、今こそ声を上げよう。国・厚生労働省は、日本医療安全調査機構に対する医療事故調査・支援センターの「指定取消処分」を下すべきである。そして、無くそう、日本医療安全調査機構!

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