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Vol. 125 「病院は植民地じゃない」 幕内・日赤院長吼える

医療ガバナンス学会 (2010年4月7日 12:00)


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ロハスメディカル発行人
川口 恭
2010年4月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会


4月1日に国立がんセンターは独立行政法人化された。現場の自律・自立を強めたい人々と、官僚の影響下に留めておきたい人々との間で、しばらく暗闘が繰り広げられることになるだろう。

これからどんなことが起きるのか見通すうえで、3月9日に同センター中央病院の土屋了介院長(当時)が主催して開いた講演会『新しい病院作りに向けて』のやりとりを知っておいていただくことは意義深いと思うので、ご紹介する。

招かれた演者は、同センターの麻酔科再建に協力した帝京大学麻酔科の大嶽浩司准教授、新診療科立ち上げに参加した帝京大学腫瘍内科講師の堀明子講師、そして新病棟への移行が済んだばかりの日本赤十字社医療センター・幕内雅敏院長(肝胆膵外科医としても高名)の3人。特に幕内氏の「告発」はビックリすること請け合いだ。そこからの議論を重点的にお読みいただきたい。

幕内
「私は大学にいる時、手術があったので教授会には出なかった。そうすると悪口を言われるので、教授会に出ない代わりに経営指標は全部見てた。ところが日赤はそういう指標が一切出てこない。まず、そこに驚いた。がんセンターは国が面倒みてくれるんだろうが、我々は独立採算で、さらにタチが悪いことに上納金を本社に取られる。2億3千万円くらい純益から持っていかれる。税金ならば利益が出なければ取られない。税金の方がよほどいい。

今日は新病院の話をすることになってるんだが、私が行った時には、もう話が全部決まってて地面を掘っくり返してた。で、私が院長になる時に最初に言われたのが借金95億円の連帯保証人になれということ。事務長が来て、僕にそう言う。僕は95億持ってたらこんなとこにいないよ、と。プールつきの家、ハリウッドとかああいうところの感じで楽しくやってるよ、と。借りている相手は医療福祉機構で年利1.8%。借り換えも繰り上げ返済もできない。そういうがんじがらめの状態でビックリした。5月になったら、みずほから短期の借り入れを7億円したいと言ってきた。僕が引き継いだときには12億円弱の現金があった。僕は事務員を呼んでさんざん話をしたんだけれどラチが空かない。どうしても、みずほから借りたいと言う。だいたい家計で考えてみても、120万円の現金を持っていて70万円銀行から借りるなんて、そんなバカがどこにある。そういうことをやっている。

日赤も、いい意味では日本株式会社の一つ。悪く言えば社会保険庁とか郵便局が建てた建物を安く売っちゃったみたいなこと。建てる経過で困ったことがいっぱいあって、ここ(病院敷地内に建設したマンション)のところは、みずほ信託が全部引き受けてデベロッパーにやった。日赤には本社が芝に豪華な建物である。40年近く前に今壊している病院が建った時も黒い噂が出た。中には分かる人が全然いないから業者の言うがままに大分詐欺にもあってるんじゃないか。特に広尾ガーデンヒルズっていう高級マンションで今でも値段が下がってないような所があるけれど、あれを作る時にも市価の半値ぐらいで売っちゃった、と。今度はデベロッパーに50年間貸すということになっている。8000坪。日本赤十字社の広尾の土地は高台のとってもいい所で元々は4万坪あって、そのうちの2万坪を半値で売ってしまったために病院が十分なものが建たなかったということがある。今回は、住友不動産は400億円出すと言った、それに対してみずほ信託は241億円しか出さなかった。広尾地区の再建築整備事業検討委員会というのができて病院の代表は院長1人しか入れなかった。あとはイエスマンだけ。その組合で絵を全部作っちゃった。本社の奴は、広尾まで足を運んで土地の値段を決めるとか全然しない。僕らの前には東京女学館、お嬢さん学校がある、その下には川がある。その一番低い所の値段で契約している。

看護大学の建物をつくる時に本社には22億円の借金があった、それにさらに10億円、看護大学から拠出させた。で、結局、僕が引き継いだ時には借金が32億円。
ここ(国立がんセンター)は官庁に言わないと判断が遅れて困るということなんだと思うけれど、民間だと普通は潰れる。日赤は、日本赤十字法というのに守られて、その裏のドロドロは凄まじいものがあると思っている。住友不動産が400億円出すと言ったのを、民間企業でありながら、どういうわけかみずほにさせてしまった。訳が分からない。それで本社の連中は、住友不動産の計画は実現性がないと言った。実現性のないようなことを住友不動産ともあろう会社が提案するか、契約書をちゃんと作ってもしできなかったら、ものすごく自分たちが苦しむのに。(後略)」

土屋院長も加わって総合討論。爆弾発言は続く。
幕内
「ここ(がんセンター)は国が全部やってるから、お金の心配をしなくていい。そういう意味では楽。僕らの所はお金の心配をしなきゃいけない。そしてお金のことを訊くと、本社で不明朗なことが多くて非常に杜撰なことをいっぱいやっている。大体、みずほ銀行がメインバンクだというのならば、担保には事欠かないのだから当然低利で金を貸すべき。それを本社の問題だけれども、医療福祉機構のような利率の高い所から借りて。よく知っている岐阜の院長から、なんでそんなに高い所から借りるのかと驚かれた。だから、ここも独法化してからのお金の借り先はよく考えないといけない。日本株式会社でやっていると、非常に高利で貸し付けられる。95億円を20年借りて、その間の利子が22億円と、こういうわけだ」

土屋
「がんセンターも4月から独立行政法人になる。今まで歳入・歳出という1年の出し入れがほとんど分からない状態だった。患者さんから窓口でいただいたお金はそのまま国庫に入る。我々が何かをやる時には予算化されたものから出る。去年は麻酔医が足りなくてアクティビティが高くなかったので、薬代とか材料代とかを使わず予算をオーバーすることがなく、あまり苦労しなかった。順調に行ってた年は、今ごろになると薬代がなくなっちゃう。予算オーバーでもうないと言われる。要は、暗に現場にアクティビティを落とせ、手術をやめろ、化学療法をやめろという圧力を院長にかけてくるわけだ。それをしらばっくれて廊下を平然と歩いてないといけない。後ろからはお金がないと圧力をかけられ、前からはもっと手術をやりたい、化学療法をやりたいと言われる。3月になると、4月分の支払いでチャラにしてもらうようにインチキをやって年を越してた。昨年一昨年はそれをやっちゃいかんと言うので、一昨年なんかは運営局の次長が本省に行ってお願いをしてよそから捻出して払ってもらった形にする。国と国とのやりとりだから実際に現金が動くわけじゃないんだけれど帳簿上そういうことにしてた。

4月からはそういうことがなくなるんでいいなと、数年前から独法化を楽しみにしていたのだが、どうも怪しそうだということに気づいた。今、皆さんが見ているキレイな19階建ての病棟を幕内先生も言うように我々も騙されて買った。600億円かけて建てた。民間なら400億円ぐらいだと言われている。我々診療側はほとんど知らないうちに、こうなってた。後で訊いてみたら、財政投融資でお金を借りていて、東病院も400億円借りていた。で今でも600億円借金が残っている。バブルの弾ける前に借りたので利率が高くて年に4%とか5%とかを30年で返していかなければならない。こりゃ大変だということで、幸か不幸か当時の金融庁の大臣の与謝野先生が私どもの所に通ってらっしゃって、がんセンターに20年通って役に立ちたいと仰るので、この借金をチャラにしてもらえないかと頼んだら、去年の補正で約半分にしてもらえた。安心していたら政権交代になったので、今度は数年前に手術をした仙谷先生が内閣に入りそうということで、このまま行ったら日赤と同じになると心配してくださって、ガバナンス検討委員会(http://lohasmedical.jp/news/2009/11/27231739.php 参照)というのになった。がんセンターのガバナンスをきちんとするなら借金を減らしてやってもいいよ、と。で先週、最終的に170億円ぐらいになった。

しかし我々の所は東と合わせて大体年間に250億円の出し入れ。中央病院は180億円ぐらい。11億円ぐらいは毎年国庫から入れていただかないと回らない。というのも一般の病院と違うこともしている。臨床試験だなんだというので、いわゆるクリニカル・リサーチ・コーディネーターを何十人も雇っている。そういうなかで中央病院は180億円の収入で110億円の借金を年5%で返さないといけないという状況で来月を迎える。まだまだ心配はしている。

ただ我々は会社関係はやったことがないし、理事の中に本省から2人送り込んでやるというのだけれど、彼らも公認会計士の資格を持ってないし、バランスシートも見たことない、予算決算しか扱わない人が来るという。いや大丈夫だ、国立病院機構は我々がうまくやっているから心配するなと言うのだけれど、あそこは税金を投入してバランスが合っている。インチキだ。民間ベースで言えば、赤字を税金で補填しているからやっていけている。私たちは自分たちだけで何とかしたいからということで、メデたく、一部の人にはメデたくないかもしれないが、山形大学から嘉山学部長をお迎えして、これから自分たちで頑張っていこうということなんで、日赤のようにならないよう、皆さんのご援助をお願いしたい」

大嶽(MBAでもある)
「600億円という数字に驚いた。床面積だけで比較しちゃいけないが、がんセンターが約8万平方メートル、帝京大の新病棟は11万平方メートル。ハッキリした数字は言えないのだけれど、我々は600億円の半分をはるかに下回る金額で作った。あまりの相場観の違いに驚く。ボッタクリバーに入ったみたいと言った知事の気持ちが分かる」

(略)

幕内
「運営費交付金みたいのが出るはず。財投で借りた金は全部政府が返すことになると思う。東大では、僕がやめる時に年間80億円出ていた。そのうち60億円が財投の返済に充てるもの、20億円も余分に来る。文学的には、職員が大切にされているという感覚を持って働くということと、もう一つは働いたものに十分な賃金が払われるということが基本。ただ、僕らは給与体系を全部決められていてニッチモサッチモいかない。(略)で、僕らの組織にとって一番大事なことは日赤本社と各病院の関係で、病院は本社の植民地じゃないということを徹底しないといけない。要するに搾るだけ搾ってあとは知らんよではいけない、搾った分以上にお金を返してくれと、何らかの形で働いた人に還元されることが必要だろうと思う。これから、がんセンターには労基署が入ると思う(幕内氏は院長就任早々に是正勧告を受けたことがある http://lohasmedical.jp/news/2009/03/26132125.php 参照)。皆さんのやっている当直は当直じゃない。当直というのは泊まっていて夜中に1回か2回か見て回るものだそうだ。普通の業務をやる場合は、時間外手当を出す必要があって本俸の1・5倍ということになっている。ウチでも月に数千万円のお金がかかる。年にすれば数億円のお金が必要。そういう意味でも、これから大変だ」

土屋
「その通り。これまでは国家公務員法でやってきて労働基準法違反には問われなかった。来月からはICUも動かなくなる、当直も動かなくなると困ってたら、本省から、ICUの人数を増やせと言ってきた。昨日まで総定員法でダメだと言ってたのが、辻褄合わせのために予算もないのに、そういう命令が来るのが今の厚生労働行政のシステム。

組織が変わるときに何が大切かと言えば、職員全体が理念を共有して方向性をしっかり見定めるということなんだが、これができないで困っている。というのも、院長に人事権のあるのは医者だけ、それも本当のところはない。3月31日まで部長以上の人事権は厚生労働大臣、それ以外は総長ということで院長には誰1人いじれない。看護師にいたっては看護部長は4月に定年を迎えて新しい人が来るのだけれど、この間、本省の看護課長から、この人にしますと言ってきて、これを受けろというので新しい理事長候補者が受けられないと今突っぱねている。こうやって大きく変わろうという時に一番肝心な部長に我々の知らない人間を押し込んでくる。従って職員が理念を共有しようにも、私がここで何を叫んでも下まで伝わらないということになる。これをトップが右だと言えば全員右へと伝わって、魚の群れが動くようでないと変えられないということで、私どもは今焦っているわけだ。何とか3月31日までに、4月からそう動けるようにしたいと思っている」

大嶽
「がんセンターの独法化後の経営の課題を述べるならば、それは何を目的にするかにもよるのだろう。赤字の返済を最大の目的にするのならば、それなりの診療で帳尻を合わせることになるだろうが、恐らくそれでは許してもらえないはず。ミッションをきちんと果たした場合には、むしろこういうことをやるから、やったから赤字になる、そこの部分は税金を投入してほしいと求めることになるのでないか」

幕内
「何だかんだ言って収支を合わせることは大切。収入はそんなに大して変わらないと思う。だからいかに出を抑えるかが非常に大事。要するに、買うものはなるべくすべて、院長か事務長で決済する。僕らは今リバースオークションというのをやっている。競争入札で一番低い価格を出した所から購入する。そうすれば相当金は浮いて、経営は一気に改善する。今まで何もやってなくて、裏では必ず悪い奴らが談合している。薬なんかも一件一件やっていくと協定を結んでいることは明らか。それで時々怒る、お前らやってるな、と。証拠のないのが困ったところなんだけれど(略)」

土屋
「先ほど大嶽先生が言われたように、国立がんセンターは何のためにあるのかという問いかけが大事になってくる。厚労省が悪いとだけ言うつもりはなくて、がんセンター自体にそれを世の中にきちんと問うてこなかった責任があると思っている。

では、がんセンターの目的とは何ぞや。病院があって、研究所があって。他にもいっぱい病院があるのに、がんセンターがなぜ病院を持たなければならないのか。私は一言で言えば、がんの医療政策の素案を立案して厚生労働大臣に具申するために、ここにがんセンターがあるんだと思っている。なぜかと言えば、保険診療の部分は他の病院と何も変わりがない。だったら、がんに対する治療法・診断法の新しいものを開発するために、この病院を使わないと意味がない。それについて多少の持ち出しがあっても、新しく開発するという目的が明確で、しかも成果が上がれば、国民は税金をここに使う価値があると判断してくれる。

研究所はどうかと言えば、全国に80医科大学あって、がんの生物学をやっている学者はゴマンといる。ウチがこれだけ少人数の研究所で生物学をやっても、ゲノムをやっても医科研には中村祐輔という有名な人がいる。じゃあウチは何をやるのかということになると、がんの医療学を立てるためだと思う。それが今何もない。それから大学を見ると医工連携がほとんどされていない。東大は医学部の隣に工学部があるけれど、ほとんど大学としてやっているとは思えない。むしろウチの方が東大工学部の先生と一緒にやってる。これをもっと大きくしていく。今、補正予算でサイバーナイフ棟というのを入れようとしているが、会計課に任せていたら600平米で作るというのを、知り合いの建築家に言ったら建築基準法で940平米までできるというので、そのお金でつくれるのなら目いっぱい作ってくれと。そうすれば4室増やせる。600だと3つか2つしかできない。機械を1個しか買えなくても、空いている部屋に東芝、島津、日立と共同研究用のプロトタイプを入れて研究すればいい。薬事法の承認が取れたら、そのまま病院に鞍替えしてやる。空いたところはまた研究所としてやる、というような位のダイナミックなことをやって世界で初めての機械を開発していけば国民がそこに税金をつぎ込んでもよろしいと言ってくれる。

運営局は、行政官が来るわけだから研究所の医療学を実際に応用するにはどうしたらよいか。病院と研究所と運営局が一体になって、がんの明日の医療はこうだ、という政策立案をしていく。本省の優秀な官僚が、医系技官を除くけれど、優秀な人たちがそれを他の政策との優先順位を考え、財政的なものを財務省と交渉して、全国のがんの病院にはあまねくどうしたらよいのかということを普遍的にやって、診療体制を変えていくというようなことに関して、我々が知恵袋となる。となれば普通の診療報酬に加えて税金を投入する価値があってナショナルセンターとして生きていけるのでないかと思っている」

土屋挨拶
「幕内先生も色々言っていたが、日本の病院、医療行政には矛盾が満ち満ちているとお分かりいただけたと思う。私どもが独立行政法人化する時に、それを見える化して国民みんなで考えていかないといけないんじゃないかということで今日のような会をさせていただいた。

国立がんセンターは今まで定価で言われて定価通りで買ってきたのを、値切れるところはきちんと値切って、保険診療はきちんと採算を合わせる。だけれど、それにプラスここが存在価値を示すような仕事をしていくということに来年からなれば、独立行政法人化もなかなかいいんじゃないか。ただ、鈴木寛文部科学副大臣によれば、イギリスのエージェンシーと同じで、民主党や現政権の考え方として独立行政法人とは一時的なもので国立に戻すか完全民営化するか、また数年以内に見定めるそうだ。近々、独立行政法人の通則法を変えるそうだ。今国会に出したいと仙谷大臣は言っていた。どうなるか分からないが、いずれにせよ変わるだろ。そうなると先ほど言った政策立案的な部分は国に戻すべきではないかと。ただ病院については、そういうことが念頭にあれば民営化してしまってもいいんでないかと思っている。イギリスもアメリカもフランスも、ナショナルキャンサーセンターというのは病院を持っていないのだから。経営形態は違うけれど一緒に協力していく、同じキャンパス内でやっていくのが将来のあるべき姿でないか。

最初は低空飛行になったりするかもしれないけれど、ぜひ長い目でがんセンターを見守っていただきたい」

(3月9日付『ロハス・メディカルweb』http://lohasmedical.jp の記事に一部加筆したものです)

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