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Vol.202 現場からの医療改革推進協議会第十四回シンポジウム 抄録から(5)

医療ガバナンス学会 (2019年11月25日 06:00)


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2019年11月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2019年12月8日(日)

【Session 05】医療改革の現在 2  10:00 ~10:50

●壊れているのはどっち?
小野俊介

最近、世の中で起きていることすべてが異常に思えてきた。これをどう解釈すべきか。解釈1:世の中が壊れちゃった。解釈2:私が壊れちゃった。この要旨を書き終わるまでは解釈1を採る。
大学でも破壊的現象が起きている。AIの新井紀子先生の懸念どおり、日本語が分からない・書けない学生(社会人を含む)が多数出現。でも、なぜか彼らは「グローバル化には適応できる」と自信満々で、こともあろうに英語で論文やレポートを書くのである。産物は阿鼻叫喚の代物。そういえば先日届いた中国の学生からのメールには「私はサカナクションとREDWIMPS(原文ママ)の大ファンです。だから小野先生の研究室に留学したいです」って書いてあったっけ。光栄なことである。破壊の規模は世界レベル。
製薬企業の人たちも壊れてしまった。れぎゅらとりーさいえんすと称する、薬の開発の儀式のみに習熟し、薬を開発することの意味を考える力を全面喪失。最近のニポンの業界人って「自分たちがやったこの治験って、ガイドラインに従ってますか?」などと当局に質問してくるそうである。時間も意識も超越した倒錯。哲学者が卒倒しそうなエピソードは他にも山ほどある。
規制当局の人たちは昔から固有のスタイルで壊れているから、驚くことはない。むしろ彼らの安定した壊れ方が頼もしいとすら思える。皮肉抜きで。世界の破壊はそこまで進んでいる。
ほらね。どう見ても世の中が壊れたように思えるでしょ?でも、壊れてしまったのは本当は私の方。つまり解釈2が正解。
医薬品開発・規制の現場で三十数年。改革と称するメシの食い扶持の確保。グローバル化と称する臆面もない変節。インパール作戦の時代から変わらぬお上の机上の空論。知恵も倫理も創造性も消え去りつつあるニポンの産業界。それらを眺め続けているうちに、精神をやられてしまったのである。かわいそうな自分。
というわけで、このシンポジウムでも志の高い若い方々にご活躍頂くのがよいと思います。がんばってくださいね。三十年後に皆さんが幸せになっているかどうかは私には分からない。賭けましょうか。「皆さんも三十年後には私のように壊れている」に3千点。
●AMRに対する漢方薬の可能性
王 宝禮

抗菌薬をはじめとする抗微生物薬への薬剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR)の問題の歴史は古く、ペニシリン開発の時代まで遡る。1928年にペニシリンを発見したアレキサンダー・フレミングは1945年、ノーベル医学生理学賞受賞講演で、「ペニシリンが商店で誰でも買うことができる時代が来るかもしれない。その時、無知な人が必要量以下の用量で内服し、体内の微生物に非致死量の薬剤を曝露させることで、薬剤耐性菌を生み出してしまう恐れがある」と述べた。実際、その講演の5年前の1940年には既に、ペニシリンを無効化する酵素であるペニシリナーゼが、ペニシリンに耐性を示す細菌から発見されていた。
現在、AMRの問題は世界規模に大きく発展した。2013年のAMRに起因する死亡者数は、低く見積もって70万人。何も対策を取らない場合(耐性率が現在のペースで増加した場合)、2050年には1,000万人の死亡が推定される。この数字は、現在のがんによる死亡者数を超える。ただし欧米での死亡者数は70万人にとどまり、大半の死亡者はアフリカとアジアで発生すると推測されている。
私達の研究グループは、歯周組織炎、口内炎、口腔乾燥症、舌痛症、味覚障害などの口腔疾患に対し、西洋医学と漢方医学を融合した基礎・臨床研究を展開してきた。実際、歯科治療の多くは口腔内での感染との戦いでもある。
その中で、急性歯周組織炎でペニシリンアレルギーの症例に対し、抗菌薬を処方せず漢方薬である排膿散及湯の投与で抗炎症作用を確認した。AMRを踏まえ、耐性菌を作らないために、医師への投薬指導や患者への服薬指導は大切である。今回、AMRに対する漢方薬の可能性について論ずる。
●難治性疾患患者を救う再生医療を根付かせるために
細田雅人

再生医療の世界では、難治性疾患が今、複数並び大きなテーマとなりつつある。角膜上皮幹細胞疲弊症、遺伝性網膜疾患、脊髄性筋萎縮症、パーキンソン病、下肢血管動脈硬化症、加齢性黄斑変性症などがその例だ。
欧米製薬各社および日本の製薬企業も従来とは違う動きを見せ、医薬品市場に新時代が訪れようとしている。新たな競争の舞台に、2年以内には世界売上150兆円に手が届こうとしている中の巨大なプレーヤーが、我も参画せんと躍り出始めている。その動きに呼応するように厚生労働省もPMDAの体制を強化し、2020年までに再生医療製品優先審査の専門チームを発足、審査期間を短縮し9か月以内を目指すと、本年9月に発表した。
再生医療には、従来型の医薬品では治療困難な患者の根治可能性、すなわちライフイノベーションの大きな期待がかかっている。この新たな医療は、難治性疾患患者にとっては根治を目指すことであり、製薬企業にとっては新たなビジネスであり、その双方と、そして各国規制当局と医療費をカバーする保険、財政面で支える国、全てのステークホルダーの調和が取れて、初めて根付く。もしどこかのバランスが悪ければ医療として根付かず、患者が報われず、失望に変わる。今、各国の規制当局が、国内外の関連学会や組織、企業との間で多くのディスカッションをしていることは想像に難くない。
一方で、世界の動きと日本国内の動き、承認のプロセスには違いが出てきている。医薬品は長年、日米欧3極が中心となり、国際ルールやICHガイドラインを作成してきたが、再生医療は日本に独自性が見られる。これに対して欧米からいくつかの批判が起こっている。指摘されているのは何か。何が問題か。改善すべき点はあるか。
再生医療において

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