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Vol.203 現場からの医療改革推進協議会第十四回シンポジウム 抄録から(6)

医療ガバナンス学会 (2019年11月26日 06:00)


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2019年11月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2019年12月8日(日)

【Session 06】市民がつくる医療  10:50 ~12:00

●医療分野におけるクラウドファンディングの可能性
米良はるか

READYFOR株式会社は2011年、日本初のクラウドファンディングを立ち上げました。それ以来、「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」ことをビジョンに、クラウドファンディングサービスを通じ、個人の夢や目標の実現を支援してきました。
現在では、社会貢献や企業の活動や事業はもちろん、地方創生、医療分野や大学の研究費といった、これまで「お金が流れにくかった分野」での資金調達を特にサポートし、支援実績も100億円以上となりました。
特に医療分野のクラウドファンディングのプロジェクトは、近年急速に増えてきており、主に「設備関係の費用を集めるクラウドファンディング」と「研究費用を集めるクラウドファンディング」の2つのパターンでプロジェクトが多く立ち上がっています。
設備関係の費用を集めるクラウドファンディングとしては、国立成育医療センターが小児がんの子どもたちを感染症から守る無菌室を増設するためにクラウドファンディングを実施した例があります。当初の目標金額1500万円を大幅に超え、約3,100万円の支援が集まりました。また、国公立の施設でも、予算の制約から公的資金で賄うのが後回しになってしまう施設の設備費用などに、クラウドファンディングを活用頂きました。
研究費用を集めるクラウドファンディングの例としては、乳幼児ぜん息(1~4歳)を対象に、吸入ステロイドの“間欠吸入”という新しい治療方法の臨床研究費用を集めるプロジェクトがあります。ぜん息患者本人や家族から、「自分もぜん息で苦しんだ」「つらい思いをする子どもたちのために」との思いが寄せられました。「発起人の医師たちの活動を後押ししたい」という熱い声が形となって、約1,600万円の支援が集まりました。
このように医療分野では、国や民間からの助成金だけでは思うように研究費や設備費を確保できない病院や研究所によるプロジェクトが増えてきています。本講演では、病院だけで資金を捻出する以外に、市民の方からの共感と応援によるクラウドファンディングという支援の可能性について、お話できればと思います。
●治療の先に光を
大谷貴子

白血病の治療によって妊孕性が失われる。私が骨髄移植を受けた30年以上前には、そんなことすら知らされていなかった。自覚のないまま子どもを授かる希望を失い、苦しんだ私は、こんな思いは誰にもさせたくないと考えていた。1999年に未受精卵子を凍結保存する技術があることを知り、第一人者に掛け合い、患者への治療をお願いした。同時に、全国骨髄バンク推進連絡協議会を通して、若年白血病患者さんの妊孕性温存に関する支援を始めた。妊孕性温存治療は自由診療として高額な費用がかかるのだ。
しかし、原資が乏しくなり、このままでは支援を必要としている患者さんに手を差し伸べることができなくなると、クラウドファンディングで支援を呼びかけた。
クラウドファンディングへの取り組みの目的は、お金だけではない。「がん治療前に、将来パパ・ママになる可能性を残すことができるかもしれない」ということを、広く知ってもらうためだ。
この事実を拡散することによって、傷つく人もいる。葛藤もあった。だが、妊孕性温存ができず苦しんだ方々からの支援もあり、同じ気持ちでいてくれる人が沢山いることで勇気ももらった。多くの支援を受けてクラウドファンディングは成立し、患者さんの希望をつなげることができた。ただ、小さなNPO法人が手を差し伸べられる患者さんは、一握りにもならない。滋賀県から始まった自治体でのがん患者への妊孕性温存助成制度が、全国に広がり、すべての患者さんが将来子どもを持つかどうかの選択ができるようになってほしい。そして、希望を持って治療に立ち向かってほしい。
●小児がんの抗がん剤治療によってワクチンが消える
石嶋瑞穂

私は3人の息子を持つ母親であり、長男が2016年5月に急性リンパ性白血病に罹患し、抗がん剤治療を受けた。抗がん剤治療が終了すると、予防接種で出来た抗体がなくなり、ワクチンの再接種は自費で受けなければならない。長男の場合は、抗体がない状態で水疱瘡に罹患し、重症化した。
実体験したからこそ、子どもの抗がん剤治療後の予防接種について、その必要性の認知と公費負担を求めている。そこで、代表をつとめる一般社団法人チャーミングケアで、それらをサポートする活動を開始した。「チャーミングケア」とは、小児分野の外見ケアやメンタルケア、そして保護者のためのトータルケアを指している。私たちはこの再接種サポート活動を、子どもたちが笑顔で安心して過ごせるチャーミングケアの一環として行っていきたいと考えたのである。
抗がん剤治療でワクチンが消失した症例は、我が子だけでなく他にも報告されている。しかし現状、ワクチン再接種助成は、全くもって不十分である。ワクチン行政は自治体(市町村)の管轄で、骨髄移植・造血管移植は助成の対象になりつつあるが、多くの自治体で抗がん剤治療によるものまでフォローされていない。
例えば大阪では、枚方市と東大阪市でしか十分な補助がなされていない。そこで民間の力を引き出すアプローチを試みたところ、有志医師グループとのご縁をいただき、民間レベルでの助成プロジェクトを行っていく方向が出来た。チャーミングケア指定の提携病院で接種の場合は自己負担ゼロ、他院にて有償で接種の場合は半額助成するものである。
ワクチンを受けた子どもには、当団体が取り組んでいる「あみぐるみプロジェクト」のシンボルマークでもある、どんぐりのあみぐるみをプレゼントしている。病気の子供たちや元気になっていく子供たちと、それを支える応援者たちをSNSの力を借りてつなぐ活動も行っている。
●民間企業だからこそ提供できるリハビリとは ~公的保険のはざまで
早見泰弘

保険外リハビリ施設『脳梗塞リハビリセンター』は、今年5周年を迎えました。その間、全国に21拠点を設けて参りました。保険がきかず、全額自費となるリハビリ施設になぜこれほど需要があるのでしょうか。
当センターにいらっしゃるのは主に、医療(健康)保険による入院でのリハビリ期間を終えた方々です。社会保障の仕組みでは、40歳以上の方でリハビリ継続したい場合は、介護保険によるリハビリに移行するのが定石です。社会保障はいわゆるセーフティネットの役目を果たしますが、それだけで叶えられない切実なニーズが存在します。例えば社会復帰。制度の上で「自立」と判断される基準は「歩行や移動、食事、更衣、入浴、排せつ、整容など」ができるかどうかです。しかし、その基準をクリアしていても、エンジニアの方がパソコンを扱えない、営業だった方が話せない、となれば、社会復帰は難しいことになります。「仕事復帰のために自分に合ったリハビリをしたい」「もっとじっくりやりたい」などのニーズが顕在化していながら、『脳梗塞リハビリセンタ―』を立ち上げるまで、それに応えるサービスが見当たりませんでした。
実際に開設してみると、日本各地から社会復帰を望む就労世代や、既存のリハビリだけでは不足を感じていた方々が多く訪れるようになり、今日に至ります。保険外リハビリを標榜する事業者も少しずつ増えており、一民間企業である当社が「保険外リハビリ」というカテゴリーを小さいながらも創出できたと感じています。引き続き、ユーザーの声を聴き、サービス(商品)を磨いて、日本全国にリハビリの「(医療と介護に次ぐ)第三の選択肢」を届けるべく邁進していく所存です。

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