最新記事一覧

Vol.208 現場からの医療改革推進協議会第十四回シンポジウム 抄録から(11)

医療ガバナンス学会 (2019年12月3日 06:00)


■ 関連タグ

*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。
*参加登録はこちらからお願いします(Googleフォーム)

https://forms.gle/rwG3FVrPmdeyGiky7

2019年12月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2019年12月8日(日)

【Session 11】予防医療  16:50 ~17:35
●HPV(子宮頸がん)ワクチン、政治家はなぜ騙されるのか?
音喜多 駿

国はHPVワクチンについて、公費による定期接種は継続しているものの、「積極的な推奨を控える」という奇妙な対応を続けてきた。定期接種が実施されるようになった直後から、ワクチンを原因とした体調不良(副作用)を訴える声が相次いだためである。
この結果、一時期は7割を超えていたワクチン接種率は現在、なんと約1%にまで落ち込み、先進国では最低レベルとなった。事実上の頓挫である。この影響もあり、子宮頸がんに罹患される方は年間で1万人、そのうち3,000人もの方が命を落とすと言われている。
HPVワクチンによる子宮頸がんなどの予防効果を示す研究は多数ある一方、ワクチンが副作用を引き起こす科学的根拠は一切見つかっていない。にもかかわらず、厚労省は積極勧奨の再開に二の足を踏み、また政治家・議員の中にも「ワクチンは危険」という言説に手を貸す者がいるのが現状である。2019年10月にも、非常に影響力のある前国会議員が「HPVワクチンは必要ない」といった論調で街頭演説をしたことが、Twitterを中心に話題となった。それに追随し、少なくない政治家・議員たちが「ワクチンにはリスクがある」「HPVワクチンには、ガンを予防する効果はない」といった不正確な情報を流布している。
科学的結論が出ている事柄が、なぜこれほどまでに“動かない”のか? 政治家や議員まで、流されてしまうのはなぜか?
本講演では、私自身のワクチン接種の体験談に加え、情緒や世論に流される政治家・議員の行動原理について議論を深めていきたい。
●予防医療としての性教育
中村 葵

「生理が遅れてるんだけど、これって妊娠したのかな?」「コンドームつけてれば妊娠しないでしょ?」
これは私が医学部生だった時に、頻繁に友人から相談されたことだ。生きる上で避けては通れない生理や妊娠の仕組みについて、そのリスクについて、教育される機会はほぼ皆無だった。外国籍の友人と話していても、明らかに日本は性教育の後進国だった。
日本の妊娠中絶数は、年間約16~17万件である。つまり1日に約450件、3分に1人は妊娠中絶を選択することになる。また、日本で主に使われている避妊法はコンドーム、膣外射精であり、低用量ピルの服用率は3~4%とされている。近代的避妊法実施率は日本は44%であり、この数字はアフリカにある国々よりも低い数値となっている。
避妊法の選択肢の数についても、日本は後進国と言える状況にある。現在、日本で認可されている近代的避妊法はコンドーム、低用量ピル、IUD/IUS(子宮内避妊具)のみである。諸外国にはこの他に、インプラント、避妊パッチ、注射法など様々な選択肢があり、女性が主体的に避妊をすることが当たり前となっている。
また昨今、アフターピルのオンライン診療に関する指針が検討されているが、利用できるケースが限られ、服用3週間後の対面診療など、現場のニーズからはかけ離れた条件が課されている。アフターピルは多くの国でOTC化されている。実際に私が先日訪れたスウェーデンのストックホルムでは、どこの薬局でも簡単に見つけることができ、その値段も日本の5分の1程度だった。
今回は、そうした避妊法の国際比較やアフターピルへのアクセスについて皆様にも考えていただきたく、この機会をいただいた。
●「いのちの授業~がんを通して」
川口 利

医療情報誌『ロハス・メディカル』創刊から5年が過ぎた頃、愚弟・川口恭から依頼があった。「培ってきたネットワークを活かし、教育現場への貢献活動ができないか?中学生なら、正しい医療の在り方等について理解してもらえるのではないか。教員経験を活かし、方策を探ってもらいたい」
年末に知り合いの都内中学校長に相談した。「そういう話は教育委員会に持っていけば良いのでは」とのことだったが、お役所は時間がかかる。早期に実証実験をする必要があったので、年明けに再度その校長のもとへプランを持ち込み、話をした。「ここまでやってもらえるなら、ぜひ自分の学校で」と言っていただき、2010年11月、「いのちの授業」が産声を上げた。久住英二医師、故吉野ゆりえ氏、愚弟との4人5脚だった。
内容的に精査されたものではなかったが、校長以下、当該校の教員からも高いご評価をいただき、2011年度から大塚製薬株式会社の協賛事業として正式にスタートを切った。
授業の目的は3つ。(1)生徒たちが命と健康、医療に関する偏りない知識を身に着けられるよう、教育の場に素材提供する。(2)医療従事者と患者を講師とすることで生きた情報を提供し、生徒たちに本物の声を聴かせる。(3)生徒たちに「いのち」について自ら考えるきっかけを提供し、「いのち」の尊さや生きることの意義を考えながら生活することを促す。
「予防医療」の観点からどの程度の波及効果があるのかはわからないが、文科省が推進している「学校におけるがん教育の在り方について 報告」記載内容は、奇しくも我々が提供しているプログラムとほぼ合致している。特に、「がん経験者」が講師として生徒たちに生の声を伝え続けてきていることは、大いに評価されるべきだと考えている。
授業時間確保に苦労している教育現場に対して、効率的・効果的に「生命の尊さ」「前向きに生きることの大切さ」を伝えることも、学校教育段階での予防医療の一環だと信じている。

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ