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Vol.003 検診って本当に必要なの?

医療ガバナンス学会 (2020年1月7日 06:00)


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三豊総合病院
藤川達也

2020年1月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

検診とは
「私も検診を受ける年になりました、ハハハ。先日、受けてきましたよ。」
外来診察室で患者から日常的に聞く会話である。
検診とはどういったものだろうか。ここでは生活習慣病の発症や重症化を予防することを目的とした健診(血液検査や心電図など)のほうではなく、よく尋ねられるがんの発見を目的としたがん検診について述べてみたい。
検診の検査項目として胃がん、子宮がん、乳がん、大腸がん、前立腺がん、結核・肺がん、などが挙げられる。これらのがん検診は早期発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減らすことを目的としている。

https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/index.html

https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html

では検診は受けたほうがよいのだろうか?外来で患者から相談を受けることがあるが、私は「受けるべきである」と答えるようにしている。
ただ無条件に、全ての該当する検査を、毎回、欠かさず受けるように伝えている訳ではない。2点強調して説明している。1点目は、「あなたは~~の理由から、がんのリスクが高まるために検査を受けることが望ましい」、と根拠をもって勧めるようにしている。例えば、過去の検査歴からピロリ菌感染によるある種の胃炎(萎縮性胃炎)を有する患者、長期間にわたる喫煙歴のある患者、糖尿病加療中の患者などにおいてはとりわけ検査の必要性を強調している。自分は~~の理由でより一層検査を受けるべきなのだと理解しておいてもらうことで検査に対する重要性を理解できること、またそのリスクを減らすための日々の慢性疾患治療に対するよい動機づけにもなる。
もう1点は、「検査を受けるにしても合併症や過剰に診断することによる余計な心理的負担、身体面での負担を考慮した上で受けて欲しいこと」、である。医師ならこれらのことは診療の際に説明しているとは思われるが、説明するまでその事実を知らなかった患者も多いのが実情である。

「そうは言っても無症状ですし、検査をして何か見つかったら怖いですしね。」これも検診を勧めた時によく聞く返答である。ただこの返答は今の医療における過剰診療をある意味無意識に心配してのものかもしれない。日本では実施されていないが米国では甲状腺がんに対する検診などは無症状の患者に対しては「実施しないことを推奨する」というステートメントがある。あらゆる癌を探そうとする姿勢は適切ではないのだろう。

https://www.cancerit.jp/55765.html

しかし日本で実施されているがん検診は現時点では、早期の時点で癌を発見し、治療につなげることで死亡を減らすとされているものを中心に選択されている。持病のことを把握している主治医から勧められたなら積極的に検査を受けてほしい。

ちなみに乳癌、子宮癌(子宮頸癌)は他の検診より若い年齢から対象年齢となっている。とある症状で最初に内科を訪れ上記の癌が判明する若年女性、中年女性を目にすることもある。若年者であればどうしても疾患、特に癌に対する意識はそれほど強くなくても不思議ではない。私は患者さんのみならず同僚や親類の女性にはこれらの検診を積極的に受けるようにお勧めしている。

検診さえ受けていれば安心?
さて、検診を受けてさえいれば安心と言えるだろうか。検診は早期発見を目的としたものであり罹患率の比較的高い癌に対して行われるものである。検診を受けていれば「癌にかかりにくくなる」という訳ではないことをお分かりいただきたい。
ある60代男性が外来で言った。「食事も喫煙も言われたことを守れてないけど、きちんと検診受けているから大丈夫ですよ。」私もこの患者に対しては定期的に食事指導や禁煙指導をしてきたつもりであった。彼には改めて、検診は早期発見のために受けるものだが日頃の予防はそれにも増して大切であることを伝え、いつも以上に生活改善を指示した。後日、彼から禁煙に成功した事実を告げられた。普段そこまできつく言わない先生が言うから余程のことなのだ、と禁煙の意欲が湧いたようだ。日々もう少し生活指導を強調すべきかと反省するとともに、ここぞと言う時に熱意をもって説得することの大切さを痛感した。
検診のメリット、デメリット、自分は特にこの検診が必要であるなどの点を理解したうえで検診を受けて欲しい。そして日頃の疾病予防、疾病管理も忘れずに体調管理に役立てていただきたい。

(プライバシー保護のため実例を一部改編しています。このコラムは個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すものではありません。)

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