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Vol.022 病院へ行かないという選択を! ~新型コロナなどの感染症パンデミックに備えてすべきこと~

医療ガバナンス学会 (2020年2月5日 06:00)


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つくば市 坂根Mクリニック
坂根みち子

2020年2月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

新型コロナウイルス感染症の実態がようやく見えてきました。パニックを起こしかけた日本ですが、専門家の方々の怒涛の発信で、多くの医療者はだいぶ冷静に見られるようになってきたのではないでしょうか? 同じコロナウイルス肺炎であるSARSやMERSより致死率はずっと低く、感染率は麻疹や水痘の方がかなり高そうです。海外を行き来する人が多い地域に開業する一臨床医としてはリアルタイムで情報を入手できるSNSの発達は本当にありがたいものです。
さて国民の皆さんには、この機に新型コロナに限らず、インフルエンザでも麻疹でも、感染しやすい病気を疑った時の受診行動を見直していただきたいと思います。まず、診断のために医療機関を受診することはやめましょう。例えば新型コロナの検査にインフルエンザのような迅速検査はなく、診断には特別な検査が必要で一般の医療機関で検査はできません。受けられる人は限定的で自費であっても自分の希望では受けられません。インフルエンザには迅速検査がありますが、感度が低く、この検査が陰性でもインフルエンザを否定することは出来ません。インフルエンザで軽症でも、熱がなくとも医療機関を受診する人があとを絶たないのは、大抵、学校や会社を「公的に」休むための診断が必要だからです(これも再考が必要です)。

一番問題なのは、治療の要らない軽症者が医療機関を受診することで、重篤な疾患を抱えている患者さんがたくさんいる医療機関でウイルスをばらまいてしまうことです。麻疹、風疹、水疱瘡は、治療できなくても診断が必要かもしれませんがとにかく感染力が強くて、特に麻疹や水痘は患者さんと同じ空間にいただけで感染します(空気感染)ので、あらかじめ連絡して受診していただかないと大変なことになり得ます。
残念ながら、現在医療機関が入り口で仕分けをして、感染症の患者から他の患者を守っているケースは稀です。抗がん剤で治療中の人、自己免疫性疾患で治療中の人、ステロイドを内服中の人、呼吸機能が落ちた人、そんな免疫力が落ちた人の横に、他人にうつしやすいウイルスを持った人が座っていたら、どうなるか想像がつきますか?
知らないうちに自分のばらまいたウイルスで、誰かが亡くなっているかもしれないのです。
自分を守ることと同時に他者への想像力を働かせてください。
この際、指定医療機関以外の大きな病院はアクセス制限をして、他人にうつしやすい感染症が疑われる人の受診を制限された方がいいでしょう。そうでなければ、それ以外の重大な疾患を持つ患者さんを守れません。安心して通院し治療が受けられる権利を確保することは大切です。役割分担をして、治療を優先させるべき疾患を分けていただく方が理にかなっています。

2月1日の「新・情報7days」という番組で、武漢からのツアー客を乗せたバスの運転手とバスガイドさんがどのようにして感染したか、実証実験をやっていました。とてもわかりやすい実験で、あれを見た方は、感染の可能性がある局面では、あちこち触れた手で目をこすったり、鼻や口を触る前に手指のアルコール消毒が必要だと理解されたのではないでしょうか。また、インフルエンザ等の感染性疾患にうつったかなと思った本人は、人にうつさないよう、医療機関に入る時は入り口で手指のアルコール消毒をし、その後も目や鼻や口を触る度(マスクの上からでも触る度)アルコール消毒しないと、ウイルスの拡散を防ぐことは出来ません。こういう基本的なことを学校で是非教えて欲しいですね。

感染を疑った人が診断を求めて医療機関を受診する弊害はまだあります。実は、最近も、どう考えてもごった返す医療機関受診してインフルエンザをもらってきたとしか思えない患者さんがいました。そう、軽症で医療機関を受診することによって、かえって感染してしまうのです。やはり、医療機関は、診断をつけてもらいに行くところではなく、治療が必要な人が行くところです。軽症者は自宅療養で治してください。そうすることによって、少ない医療資源(人的、時間的、金銭的)を本当に必要な人の治療に集中させることができます。
医療機関への問い合わせにも注意が必要です。電話での医療相談をする前に、かかったかなと思ったら、早めの○○ではなく、喉を潤し休息です。日常の診察時も、薬を飲んで見た目は解熱したまま働き続けている人のなんと多いことでしょう。そして公的な機関、信頼できる筋からの情報収集等、自分で出来ることは自分でやりましょう。
当院も電話での問い合わせには苦労しています。小さな診療所で一人のスタッフと電話回線が占領されます。今回のような事態では、指定医療機関にも電話が殺到し、本来の業務に支障をきたしています。

致死的な感染症のパンデミックが起きれば、ほとんどの医療者は、感染のリスクにさらされます。自分が感染しているリスクを考えれば、しばらく家に帰れなくなるでしょう。一般の方々は想像しにくいでしょうが、前線の医療関係者にとっては、命を賭けた戦いになります。

現状では新型コロナよりインフルエンザの方が深刻です。今年流行しているインフルエンザA型は、2009年に新型インフルエンザとしてパンデミックになったH1N1型です。再びパンデミック化しています。アメリカではなんと1900万人が罹患し、既に1万人亡くなっているそうです。日本でも例年1万人程度の方がインフルエンザで亡くなっていると推計されています。インフルエンザで日々亡くなる方が出ているというのに、こちらの方は、新型インフルエンザとして大騒ぎしたあの頃の騒ぎが嘘のように、すっかり対岸の火事です。今年のインフルエンザワクチンは、H1N1型をカバーするものです。新型コロナと違って、ワクチンである程度予防できるのです。有効率3、4割と言われていますが、重症化は防ぎますし、毎年接種することで、通年性のインフルエンザにも有効です。今からでも遅くはないのでワクチン接種をお薦めします。さらにインフルエンザは抗ウイルス薬もあります。今流行中の麻疹・風疹に至っては、ワクチンを2回接種していれば、ほぼ防げる病気です。にも拘らず、ワクチン接種に関して皆さん極めて鈍感です。自分を守るためだけでなく、病気のためにワクチン接種できないでいる人、1歳以下(定期接種前)の子供、妊婦さんといった人たちを守る(集団免疫)という考え方も是非知って下さい。

新型コロナには診断キットもワクチンも抗ウイルス薬もありません。ですが、感染してもほとんどの人は自分の免疫力で治せます。ですから一番大切なのは、通常の自分の健康管理です。疲れすぎないこと、よく寝て、水分をしっかり摂って、大勢の人が集まるような場所では、あちこちを触った手で、不用意に目、鼻、口を触らないことです。もう一つ、万が一うつってしまったかもしれないと思った時は、自分が感染源とならないような細心の注意が必要ですが、いわゆる「無症状病原体保有者」(症状がなく検査で陽性になった人)は人にうつす可能性も低いので、自宅療養で十分なのです。

医療資源には、限りがあります。国民全体で優先順位を考え、有効利用しなければ感染症は抑え込めないし、他の疾患で医療機関が必要な患者さんにしわ寄せがきます。
まず、各自打てるワクチンはきちんと接種して下さい。
喉がイガイガするのだけど、少し咳が出るのだけど、ちょっと頭がいたいのだけれど、感染が心配という方、他者への配慮ができていますか?それでも病院へ行きますか?

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