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Vol.052 ハンガリーに広がる見苦しい民主主義

医療ガバナンス学会 (2020年3月16日 06:00)


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匿名

2020年3月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「ハンガリーにコロナウイルスが広まったのは外国人、特にイラン人学生のせいだ」オルバン首相が記者会見で放った言葉です。

ハンガリーにおけるコロナウイルス感染者の一人目は首都ブダペストにある大学のイラン人薬学部生だと報道されています。 ただこれが真実かどうかはわかりません。なぜなら、以前からハンガリー人が数名隔離されていたものの、彼らの検査結果は報道されていないからです。

また、薬学部生の感染が発表された翌日、彼らのクラスメイトやその前週に一緒にパーティーをしていたイラン人全員が強制的に病院で隔離されました。それも夜中の2時に警察と救急隊がイラン人宅に訪問、「ついて来ないと滞在許可書を取り上げるか、牢屋に入れるぞ」と脅されたそうです。結果として10-20名近いイラン人学生が隔離されました。

隔離された病院では検査が陰性・陽性関わらず6人一部屋に入院させられ、石鹸や消毒液も一部屋一つだけ、病室にゴギブリが出るような悲惨な状況だったそうです。そんな中、政府の報道では「イラン人が暴れた」として偽造写真を流し、国民の反イラン・反移民の感情を煽りました。政府が開いた記者会見ではハンガリー人ジャーナリストがこの不正報道を指摘しましたが、途中でマイクを奪い取るなど、荒々しい対応を取っていました。

実際、イギリスやスペイン人、フランス人など他外国人で症状があって隔離されている人がいるものの、決まって悪いのはイラン人。彼らが隔離されている様子をSNSで発信することも禁じられたそうです。 挙げ句の果てに、隔離されていたイラン人は「ハンガリーにとって危険な存在」として滞在許可書の取り上げ、3年以上の国外追放となりました。10数名のイラン人学生が大学を辞めなければいけない状況となりました。

3月15日現在、感染者32名のうちイラン人は9名。全員、元々隔離されていたイラン人から陽性が出ています。陽性の人と同じ部屋に1週間以上も隔離されたら感染するのは当たり前です。それに比べ、22名のハンガリー人は海外(イギリスやイスラエルなど)から帰ってきた人からその配偶者や家族など、次々と新たなケースを出ています。それにも関わらずオルバン首相は「今回の感染を受けて我々が戦わなければいけないことは2つある。一つ目は移民、そして二つ目がウイルスだ。この2つには論理的なつながりがある」と発表しました。今回のコロナウイルスはオルバン首相にとって反移民運動の格好のネタとなったようです。

いずれハンガリーに来てもおかしくなかったはずのコロナウイルス。それを政治の力でここまで残酷な形にしてしまうとは、恐るべし民主主義。街中ではハンガリー人がイラン系の顔をした人に対して「コロナ!国に帰れ!」と怒鳴りつける姿まで見かけるようになりました。EU外の国から来ている学生は未だ緊迫した日々を過ごしています。

[3/15 12:00現在 ハンガリーにおける感染者数:32名、病棟隔離人数:159名、回復者1名]

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