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臨時vol 9 高久通信 「効用をもたらすアルコールの適量は人による」

医療ガバナンス学会 (2006年3月31日 12:44)


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2006年3月31日発行


適量のアルコール摂取が身体によいことは、以前からよく知られている。例え
ば、赤ワインを多く飲むフランス人が冠動脈疾患になりにくいことはFrench
paradoxとして以前から有名で、イギリスのある病院では心臓発作で入院してい
る患者に、再発作予防のために赤ワインを飲ませているのがBBC Newsで報道され
たことがある。

適量のアルコール摂取が、心臓発作だけでなく脳梗塞の発症を低下させる例も
相次いで報告されており、血中のHDLコレステロールを増やすことで心臓や脳に
つながる動脈の硬化を抑えるように働くためであろう、と理解されている。
最近、糖尿病の発症とアルコール摂取との関係が報告されている。発表したの
はオランダの研究者で、369,862の人を対象にした15の論文の結果をまとめてい
る。

これらの人たちは平均して12年間にわたって追跡され、その間に11,959人が糖
尿病になっているが、糖尿病の発症と対象者のアルコール摂取量との関係を調べ
てみると、アルコールを1日6~48g飲む人は全く飲まない人やより大量に飲む
人に比べて、糖尿病に罹患する率が30%も減少しているとのことである※1。

上述の値を日本人に当てはめると、せいぜい一日にビールは大瓶1本ぐらいま
で、ワインでは200mlぐらいまでということになるであろう。

私のテニス仲間で、糖尿病の治療を受けているがお酒が大好きで、テニスをし
ながら毎日飲んでいる人がいる。その人にこの論文を紹介したところ非常に喜ば
れた。もっともご本人の奥様には怒られた。

 

以上、適量のアルコールの効用をいくつか挙げてきたが、この効用はすべての
人に当てはまるとは限らないようである。

この点に関してアメリカの研究者が行った仕事がある。彼らは4,410人の65歳
以上の男女を対象にして平均9.2年間追跡し、その間434人が脳梗塞を起こしたこ
とを確認している。

それらの人たちを対象にしてアルコール摂取量との関係を調べてみると、週に
1~6回飲む人はまったく飲まない人よりも脳梗塞になりにくい。また、週7~
13回飲む人は飲まない人と同じ程度で、週14回以上だと脳梗塞の頻度が上昇して
いると報告している。

1回の量としてビールで12オンス、ワインで6オンスとなっているので、大体
上述のオランダの研究者の例と同じ量である。しかし、彼らはコレステロール代
謝に密接に関係している血中アポリポ蛋白(Apo)の中で、ApoE4型の遺伝子を持っ
た人にはこのアルコールの恩恵が見られず、週1~6回のアルコール摂取でも脳
梗塞になりやすくなると報告している※2。

この結果が正しいと仮定するなら、ある年齢に達した場合には自分のアポリポ
蛋白の型を調べ、ApoE4型でないことを確かめてからお酒を飲むようにしたほう
がよいであろう。
※1 Koppes, LLJ, et al. Diabet.Care 28:719, 2005
※2 Mukamal, KJ, et al.. Storoke: 1830, Sep.2005
■著者紹介
高久 史麿(たかく ふみまろ)
自治医科大学内科教授、東京大学医学部第三内科教授、国立病院医療センター院
長、国立国際医療センター総長を歴任後、平成7年5月東京大学名誉教授、平成
8年4月から現職(自治医科大学 学長、日本医学会 会長)

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