最新記事一覧

Vol. 155 参院選を間近に今再び「医療事故無過失補償制度」の創設実現を!(その2)

医療ガバナンス学会 (2010年5月4日 10:00)


■ 関連タグ

第2回 医療事故災害補償の原資ファンドはどうするのか
猪又治平
2010年5月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


事故補償、大変結構なお話ですが先立つものはオカネ。一体だれがどうしてくれるのですか。だれもどうもしません。先ずは全員が当事者であり責任者であることを思い出して下さい。1人1人がご自分がやるのです。病気怪我、明日は我が身ですから。ケネデイ、リンカーンを持ち出すまでもなく国民1人1人にまかされたことです。

理解し易くするために、労災保険(労働者災害補償保険法・昭和22年)と自賠責(自動車損害賠償保障法・昭和30年)とを思い出して下さい。これからお話申し上げる医療患者損害補償の問題は、われわれの先輩たちが残してくれたこれら貴重な2つの無過失補償制度につづくいわば無くてはならない重要な「第3の無過失補償制度」との位置づけでお話させていただきたいと存じます。労災保険と年金と国民皆保険。間違いなく厚労省のすばらしい3大ヒットです。自賠責も我国のモータリゼーションを根幹から支え車社会・車産業・外貨獲得・道路etcを支えてきた国家的事業です。

労災保険、ドイツビスマルクにはじまり全世界的に資本主義企業社会とそこに働く労働者を守り支える制度として、昭和22年に我国にも導入されました。企業とそこに働く労働者。対立コンフリクトと抗争労働運動だけでは双方をダメにし立ち行かなく崩壊にいたります。資本主義企業社会防衛そして働く労働者の味方。戦後間もなくいち早くこの制度を導入したのも先人の偉業といってよいでしょう。どれだけの使用者ならびに労働者がその恩恵を被っているかはかり知れません。

自賠責保険、昭和30年、当時10年後からの高まり行くモータリゼーションを賢明にも先取りしたセイフテイーネットとして主としてアメリカの制度を参考にはやくも昭和30年に我国に導入されました。爾来50年余の歴史。多発する交通事故の被害者を迅速に救済して、近年では死亡者の減少も進んでいます。教育マナー向上と環境整備の賜物でしょう。40年前の日本に追いつけ追い越せと上海万博で躍進する中国政府も最近この自賠責制度を導入しました。

医療患者損害補償保険(仮称)は、労災保険に似ています。自賠責のように加害者被害者が逆転することはありません。しかし、「明日は我が身」というのは変わりません。国民全員が潜在患者です。一度も病院・医師にかからない、無縁という人はないでしょう。生まれる時から死ぬときまで一度はお世話になる病院・医療。
そして、なくてはならない健全な医療を確保維持発展させるため国民医療を防衛する意味でもこの「補償制度」はどうしても必要だとおわかり戴けましたでしょうか。しかもはやく。拙速でもよい。すこしづつ改良してゆけばよい。先ずは躊躇することなくスタートすることが肝心だと。

まえおきが長くなりましたが、労災、自賠責につづく第3の国家的にも重要な補償制度。無論患者さん救済が第1目的であることは間違いありませんが、それが同時に崩壊しつつある健全医療の再生に役立ち、国家的事業として医療社会防衛になるなら、もはや反対のための反対など止めましょう。

1人1人が当事者主役であり責任者です。医療側とか患者側とか区別はありませんコンフリクトも止めましょう。元来医療とは藁をも掴みたい患者の再生力自然治癒力と全身全霊全人格的最高水準の治療を施す医療者とのコラボレーション共同事業なのですから。

このように見て参りますともはや誰がオカネを出す出さないの世界ではなく私は知らないから勝手にやってくれの世界ではないことがおわかりでしょう。近代の自己責任主義をさらに一歩アウフヘーベン止揚してもっとすばらしい連帯と共同、協調と調和ハーモニーの世界を目指しましょう。同志社大学院・浜教授がよくいわれるように、我国固有の『和』(17条憲法)、『結い』、『助け合い相互扶助』にはじまり『one for all all for one』の精神で「3方1両損で3方1両得」です。全員が広い気持ちで困った人をお助けしましょう。最近希薄になっている連帯感を醸成しウツを増産する孤立主義を吹き飛ばしましょう。

ファンドは多ければ多いほどよい。しかし現実には約30億から始めましょう。300人くらいが助かります。1000万でよいのか。それも多いほうがよいにきまってます。徐々に改良してゆきましょう。300人×1000万=30億。1000万人×300円の世界です。小さな世界です。そのうちに道路1本、ダム1つ、橋1本やめてコンクリートをこの補償制度のファンドにしてくれる立派な政治家が現れるかも。少々ご期待ですね。

大事なことは、みなさん1人1人がこのことをご理解ご賛同しはやく制度をスタートさせることです。不完全でよいのです。出だしは。船は漕ぎながらともに歩きながら考えましょう。良くしてゆきましょう。労災、自賠責のように「いいものをつくっておいてくれた」と子や孫に言ってもらえるように。
アメリカでやっていないからやめようは古い。皆保険をみればわかる。アメリカに先駆けてジャパンオリジナルでやることに意味がある。横文字を縦にすれば博士などという時代はとうに過ぎ去っている。いいこと善は急げ。

次回第3回またみなさまにおめにかかれることを楽しみに一時筆をおかせていただきます。合掌

(著者略歴)
一橋大学法学部卒(指導教官好美清光教授・堀部政男教授)、某保険会社勤務、聖マリアンナ医科大学病院勤務、如水会医療薬業研究会会員、「医療事故無過失補償制度をつくる会」事務局長兼推進員
(著者論稿)
「公害の私法的救済」「海外輸出製品に係る製造物責任の一考察」「被害者救済制度の課題」「薬品食品とPL」「医師賠償責任と保険の今後の在り方について」「賠償と保険」

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ