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Vol.075 4月2日発:感染症学会・環境感染学会の“軽症者にはPCR検査推奨せず”に反論する

医療ガバナンス学会 (2020年4月16日 06:00)


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永井雅巳

2020年4月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ウィルスとの対峙には地域性とフェイズの認識が重要である。すでに都市部ではコロナウィルス陽性患者の半数以上が壮年者以下であり、渡航歴・接触歴不明の陽性者が増加していると聞く。東京から約1時間千葉県にあるベッドタウンのこの街では、先週末より、すでにトリアージ基準(渡航歴・接触歴、発熱など)をすり抜けた若年・壮年世代に陽性例が増加しており、市中感染の状況を呈しつつある。職種は様々であるが、中には保育士、介護士、看護師などテレワーク困難な方もいる。問題なのは、これらの方の多くは、すでに確診に至るまでに複数の医療機関を受診していることである。これらの方は高齢者に比べ、比較的元気なので、コロナウィルス感染を疑われることもなく、また疑われたとしても、軽症例として扱われPCR検査をされていない。PCR検査をしなければ、根拠をもっての自宅待機(隔離)の強制力は乏しい(まして、2週間の間、毎日電話で健康状態を確認するのは双方にとって現実性が乏しい)。
実際、初発症状から確診に至るまで勤務を続けている人もいた(休めない状態だからだ)。それでも診断がつけば、追跡も可能であろうが、確診に至らなければ追跡も不能で、彼らはスプレッダーとしてウィルスを拡散し続けることになる。少なくとも大都市周辺の地域では市中感染のフェイズであり、ここでは、軽症例こそPCR検査を行い、ウィルス拡散を防ぐ必要がある。報道によると、埼玉県では人口当たりのPCR件数が非常に少ないそうである。いろんな状況があろうが、かの地でのブレイクアウトを危惧する。

繰り返すが、まずは拡散を防ぐために早期の陽性患者の隔離こそが重要で、PCR検査は仕事を休みにくい職種に根拠をもって休める勇気を与える証なのだ。都市部およびその周辺地域には少なくとも軽症の患者にこそ、PCR検査を行うべきである。もちろん、貴重な医療資源は重症例の対応に当たり、軽症例は自宅待機あるいは困難な場合には宿泊施設を準備すればよい。PCR検査を行うことと、そのことは全く別物である。自宅待機を必要な期間とるためにこそPCR検査は実施されるべきである。行政を忖度して、“軽症者にはPCR検査推奨せず”という学会方針がなされたとしたら、ウィルス拡散は防げない。早急に方針変更すべきである。

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