最新記事一覧

Vol.096 新型コロナウイルスのPCR検査用検体採取を専門看護師・認定看護師にも許可して検査件数を増加させるべきだ

医療ガバナンス学会 (2020年5月9日 06:00)


■ 関連タグ

愛知県がんセンター名誉総長
大野竜三

2020年5月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

わが国が他の先進国と比較してSARS-CoV-2のPCR検査が極端に少ないことが問題になっている。事実、2020年5月3日現在の累計検査件数は人口100万人当たり1,435件であり、イタリアの34,879件、ドイツの30,400件、アメリカの20,674件、イギリスの16,644件など累積感染者数が多い国は勿論のこと、わが国より感染者数が少なく、かつ、ほぼ封じ込みに成功した韓国の12,307件、香港の20,940件、台湾の2,675件に比べて極端に少ない 。(1)

台湾は日本の検査件数のほぼ倍しかないのに封じ込みに成功しているではないかと疑義を挟む方もおられるかもしれないが、台湾の累積患者数は100万人当たり18人と非常に少なく、日本の100万人当たり115人の16%ほどである。したがって、確認患者一人当たりの検査施行数は台湾が148.6件、日本は12.4件となり、日本の12倍もの検査をしていることになる。

こうした背景もあり、2020年4月30日にイギリスのBBC NEWSは、東京在住で日本語が十分に話せない外国人が、相当な症状があるにもかかわらずPCR検査を受けるのに、たらい回しされ、如何に苦労したかを報告し、日本の検査数の少ない実状は世界中に恥をさらすこととなった 。(2)

これに関連し注目すべき論文が出た。2020年5月1日発行のJAMA Internal Medicine電子版に発表された台湾CDCの優れたprospective case studyの成績である。Covid-19患者100名の濃厚接触者2,671人を追跡したところ22名の二次感染者が見つかった。患者は2020年1月15日に台湾で最初にCovid-19と診断されてから3月18日までの間にPCR検査で陽性となった連続的な100名である。なお、同研究における濃厚接触者とは、症状発現の4日前からPCR検査によって診断が確定された日までの間に、感染防御手段を講じることなく15分間以上患者と接触した人と定義されている。

興味深いことに、患者の症状発現4日前から発言後5日までの間に濃厚接触した1,818人中に二次感染者22名全員が含まれ、発症後6日以降に濃厚接触した852人中には二次感染者は見つからなかった。発症4日前から発症前日までの濃厚接触者735名中10名、発症当日から3日後までの濃厚接触者867名中9名、発症後4日から5日までの濃厚接触者216名中3名が感染しており、発症6日以降ではゼロであった。家族内感染率は4.6%、家族外感染率は5.3%。年齢別感染率は40~59歳が1.1%で一番高く、60歳以上は0.9%であった。

これらの結果が示したのは、Covid-19患者は症状発現前からSARS-CoV-2を他人に感染させているものの、発症6日以降には感染能力はなかったということであった 。(3)

台湾CDCがprospectiveに行ったこの優れた調査研究は、我々には衝撃的ともいえる結果を示している。なせならば、わが国で、Covid-19流行初期からとられてきた37.5℃以上の発熱が4日以上続いた場合にPCR検査をするという方針が誤っていたことになり、早急にこれを改める必要があることを教えているからである。

わが国のSARS-CoV-2のPCR検査件数の少ないことはCovid-19流行当初から指摘され、国会でも何度も討議されており、検査体制が徐々に整えられてきてはいるものの、容易には検査を受けることができない状況にあることは事実であり、2020年5月4日のテレビ報道番組の幾つかでも指摘されていた。

PCR検査そのものは、民間検査センターの検査能力で十分可能となっているが、検体採取ならびに検体運搬体制、特にマンパワーがボトルネックになっているとの弁明が聞こえている。

我々が日常業務で利用している民間検査センターの迅速な業務や宅配業者の利便性を考えると、検体運搬体制に問題があるとは到底思われないので、最大のネックは検体採取体制にあるのではないかと推定される。

事実、厚生労働省は2020年4月26日に、患者からの検体採取を時限的・特例的な取り扱いとして、歯科医師にも認めることを決定した。この決定を聞いて、驚いたのは筆者だけではあるまい。6年間の歯科医学教育を受けて国家試験に合格した歯科医にはPCR検査用検体を採取する資格が与えられておらず、これまでは、採取すれば違法だったのだ。

緊急事態宣言が出される非常事態の渦中で、このような厳しい規制が敷かれている国はおそらく日本だけではないだろうか。アメリカ合衆国では、ほぼ間違いなく、検体採取は医師ではなく、nurse practitioner と呼ばれる看護師かphysician assistantと呼ばれる資格のある助手たちが行っており、加えて、最近街の薬剤師も行っているようだ。イギリスでも間違いなく看護師も行っており、韓国もドライブスルーで検体を採取しているテレビ映像の説明では看護師とされていた。

わが国でも、日本看護協会の努力により、卓越した看護を実践できる専門看護師や水準の高い看護を実践のできる認定看護師が養成されている。厚生労働省は、この緊急事態において、専門看護師ないしは認定看護師にSARS-CoV-2のPCR検査用検体採取を認めるべきだ。熟練した看護師であれば、検体採取は15分程度の訓練で問題なく習熟できる業務である。もちろん、危険手当を含むなんらかの報酬も支払うべきであろう。

専門・認定看護師の協力により、PCR検体採取件数は大幅に増加すると確信しており、これにより、速やかにCovid-19流行の制圧ができるものと期待したい。

(1) https://www.worldometers.info/coronavirus/
(2)  Wingfield-Hayes B: Coronavirus: Japan’s low testing rate raises questions

https://www.bbc.com/news/world-asia-52466834?xtor=AL-72-%5Bpartner%5D-%5Bjb.press%5D-%5Blink%5D-%5Bjapanese%5D-%5Bbizdev%5D-%5Bisapi%5D

(3) Cheng HY et al: Contact tracing assessment of covid-19 transmission dynamics in Taiwan and risk at different exposure periods before and after symptom onset. JAMA Intern Med. 2020 May 1, PMID: 32356867.

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらにメールをお願いします。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ