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Vol. 170 「院内仕分け」で雑用を減らそう!

医療ガバナンス学会 (2010年5月18日 07:00)


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-雑用をなくす一番の処方箋、実はリストラ!-

IMK高月(株)代表取締役 公認医業経営コンサルタント
高月清司
2010年5月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


最近の報道でよく目にする「事業仕分け」。まだまだ手ぬるいぞ!とは思いながら、税金の無駄遣いを少しでも減らして欲しいと願う庶民としては、何とか頑張ってもらいたいと、つい応援してしまう。こうした手法を医療現場にも応用し、いわゆる雑用といわれる(ちょっとかわいそうな)仕事を無くしていくことはできないだろうかと考えてみた。

1.事業仕分けは、実はちょっと古い手法
民間企業で「しわけ」というと普通「仕訳」の字が頭に浮かぶが、これは会計用語のひとつで、企業内で使われたお金を勘定科目毎にきちんと整理し、お金の流れを明確にすることによって、儲かっているんだか損しているんだかを一目瞭然にしてくれる実に便利な作業のことだ。

今、政府がやっている事業仕分けも、要するに無駄な仕事は止めて税金の無駄を減らそうとするものだから、公の仕事としては画期的な印象だが、そこで使われている方法自体は実はちょっと古い手法であることはあまり報道されていない。

1980年代後半から90年代はじめ、バブル経済がはじけてどの企業も自分の体のぜい肉、つまり余剰人員減らしに必死になっていたが、バサッと首切りなどできない時代だったので困っていたら、外資系でカタカナの名前の付いたコンサルタント会社が「だんな、いい方法がありますぜ」とすり寄ってきて、「首切り」という文字の代わりに「業務効率化」という言葉を使えばいいのだと囁いた。「金で首が切れるなら」と考えた経営者は、「お主も悪よのぉ」と金庫に眠っていたなけなしの金をごっそりコンサルタント会社に支払い、そして使われた手法がまさに今話題の「仕分け」と同じ方法なのだ。

当時は仕分けとはいわず、「業務の洗出し」などと言われたが、内容は事業仕分けと同じく、あらゆる部署のあらゆる仕事を箇条書きにして洗い出し、2-3カ月かけて全社員がそれぞれの仕事にどのくらいの時間がかかり、それがどのような効果をあげているかを全部チェックする方法だ。

その結果、時間がかかり過ぎていたり、効果が殆どない仕事は「廃止」や「削減」となって、仕事が減った社員は配置転換されたり、なかには課そのものがなくなって課長だった人が平社員になったりの憂き目に遭うなんて悲劇があったが、そんなことにはお構いなしに会社自体は持ち直し、社員の給与を絞って浮いたお金は効率化を成し遂げた役員の懐に入るというおまけまで付いた。

2.人がいれば、必ずそこに仕事が生まれる
ところが、それから2-3年もしない内に、予想もしなかった現象が生じてきた。人を減らして効率化=削減したはずの仕事が、また増えてしまっていたのだ。「おかしいじゃないか! 金返せ!」とコンサルタント会社に文句を言っても、「そりゃ、あんたがワイのいった通りにせんからいかんのや。わしゃ知らん」と返り討ちにあい、その結果、残業が規制されたまま仕事だけが増えたものだから、いわゆる「サービス残業」現象が常態化してしまい、「会社は儲かっても、社員は疲弊する」という悲惨な状況になってしまった。

なぜ効率化したはずの仕事が復活してしまったのか? 要するにがん細胞と同じで、人がいたり、仕事が少しでも残っていたら、そこからまた「無駄な仕事が増殖を始める」ということなのだ。例えば、たった1人の上司が何気なく、「○○ちゃん、こんな資料作ってくれる?」とお願いすると、それが常態化して上司も担当も替わってもその仕事だけは生き続け、いつの間にかそれが「必要な仕事」としてルーティン化してしまうのだ。

3.リストラの本当の意味は、ゼロからの出発
この「業務の洗出し」に替わって登場したのが、リストラクチャリングとうい手法。略してリストラというと日本では「首切り」と同義語になってしまって印象が悪いが、元々は米国の経済学者が考え出した経営手法で、文字通り「会社そのものを再構築してみよう」とする試みだったはず。

あの本に書かれていたことを乱暴にサマリーにすると、「その仕事、その組織が抱えている問題があれば、まずその仕事、組織がなかったらどうなるかを、ゼロベースで考えなさい」ということで、要は「一度全部止めてしまえ」という結構乱暴なやり方。本当に必要な仕事なら、後で誰かが「やっぱりやって」と言ってくるから、その時に「なんで必要なの?」と聞き返し、その答えが納得出来たら「少しずつ再開」する、という方法だ。

私が実際に実践したリストラのケースをご紹介しよう。メーカーの営業本部にいた頃、私は毎月役員会に出す膨大な資料に翻弄されていて、全国の支店や工場などから上がってくる日々のデータを取りまとめて(その頃はFAXで来たデータをXL資料に打ち直すという、原始時代のような手作業)、毎月2回の役員会に報告するという「作業」だった。

実際に役員会で読まれる資料は最初の1ページだけであるにも拘らず、毎回別紙と称して数10ページに及ぶ資料を添付し、これらの数字を1ページ目の数字とキチンと合わせて一致させておく作業が、我々社員の神経をすり減らし疲れを倍加させていたのだ。

このリストラクチャリングという手法は何も高いお金を払う必要などなく、個人でも始められる点がメリットで、ある日私は独断で「別紙」を一切付けず、1ページ目だけを役員会に報告したところ、なんと驚いたことに誰も何もいってこないではないか。後である役員に聞いたところ、あの別紙は数年前に辞めたうるさい役員がいろいろ役員会で個人趣味のような質問ばかりしてくるので、その対策用に作ってもらっていた「あれば便利程度の代物」だった、というではないか。

結局、その人が辞めても提出が続いていたのは、「役員会提出資料」という金科玉条のように輝く文字に社員が催眠術にかかったようなもので、誰もが「アンタッチャブル」と思っていただけだったことが判明し、以来私のいた部署のサービス残業は半減してしまった。(今では役員会議室にあるボードに直接全国データが映し出されるので、私がいた部署そのものがなくたった=リストラされたそうだ)

4.院内リストラのすすめ
今、医師の雑用が本来の医療業務の妨げになっているといわれ、マスコミも一つの対策として「医療秘書」などをおけば医師の雑用が減ると喧(かまびす)しいが、前述したように、新たに人を置けばお金がかかるどころか簡単に「削減」はできないし、必ずまた仕事(雑用)が増殖を始める。要は、今この仕事が本当に必要かどうかは、一切止めてみないと判らない、ということなのだ。それでも足りない場合に限って、人を配置すればよい。

例えば、私がいつも「申し訳ないなぁ」と思うのが、生命保険などの保険請求に使う「診断書」。あれって本当に必要なのだろうか? 日中、診療で忙しい医師や医療スタッフが、残業してまで記入・署名・捺印する必要がある仕事とはどうしても思えない。

なぜなら、あれを「必要」といっているのは、実は患者ではなくて保険会社なのだから、本来は保険会社がフォームを作成し病院まで持参するか、返信用封筒でも付けて「お願い」すべきものだと思うけど、逆にお客様である患者が診断書代を支払って医師にお願いしているのが実態で、頼まれた医療人も「人を助けて当たり前」と考えているものだから、黙って自らを犠牲にしているとしか私には思えない。(多少、病院の収入になるのかな?)

あまりいうと保険会社にいやな顔されて仕事に影響すると困るのでこの辺にしておくが、診断書に限らず「雑用」と思える仕事こそ、本来の「リストラ」を行うべきであって、安易に人を増やせば、必ずそこに新たな雑用が生まれてしまうことは、しかと心しておくべきです。雑用を無くすには議論は要りません。まずその仕事をピタリとやめて、「勇気ある怠け者」におなりなさい。隗より始めよです。

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