最新記事一覧

Vol.140 ~意外と知らない!徳島の魅力~

医療ガバナンス学会 (2020年7月6日 06:00)


■ 関連タグ

徳島大学医学部医学科2年
後東伸治

2020年7月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私はこの19年のほとんどを徳島県で過ごしてきた。今回は、みなさんに徳島県のことを少しでも知ってもらおうと思い、この文章を書いた。

まず、徳島県に歴史について説明する。
江戸時代、徳島県は蜂須賀家によって統治されており、染料の元である藍の生産、輸出によって繁栄していた。徳島県に四国で初めて医学校ができたのも、徳島県が当時全国で8番目に人口の多い街であり、四国で一番栄えていたからだ。また、明治維新後の戊辰戦争の時には新政府軍として参戦し、その勝利に貢献した。そのため、廃藩置県の際に藩の名前をそのまま引き継ぐことができた数少ないうちの一つだった。逆に、尊王派であった高松藩は廃されて香川県となり、徳島県や愛媛県との合併を4度繰り返した。しかし、その後には宇高連絡船と呼ばれる本州と四国を結ぶ航路ができ、四国の玄関口としてその地位を築いていった。このことから、明治時代までは徳島県はまずまずの地域だったことがわかる。
しかし、今では徳島県の人口は76万人。日本で4番目に少なく、静岡の浜松市よりも少ない。この減少率の大きさは地政学的にもかなり珍しいものらしい。その理由としては、死亡者数が出生数を上回る自然減に加え、1870年の庚午事変がきっかけで淡路島が徳島県の領土でなくなり、約17万人が兵庫県に帰属したことと、大鳴門橋・明石海峡大橋の開通や空港の開発によって都市部との交通の便が格段に良くなり、若い人口が進学や就職で都市部に流出することで、転出者が転入者を上回る社会減が起きていることが挙げられる。実際、徳島県では24年連続で自然減、19年連続で社会減が起こっており、毎年4000~6000人減少している。また、今年は過去最高となる6866人減だった。

そんな片田舎だからか、私が中学、高校生の時は、映画を見に映画館に行こうと思っても県内に映画館は一箇所しかないので自転車で40分以上かけていかなければならないし、(最近近場にイオンができたのでここは解決しました笑)放課後遊びに行くようなところもない。そのため、当時は正直「何もなくてつまらない」という印象をこの地に持っていた。県外からやってきた人に「徳島って何が有名なの?」と聞かれても、「一年で盛り上がるのは阿波踊りの4日間だけだし、アニメが好きならマチアソビっていうイベントがあるけど他は何もないよ(笑)」としか答えられなかった。しかし、大学生になって車を持ち、色々な場所に行くようになるとそうでもないような気がしてきた。そこで、自分が思う徳島の魅力を集めてみた。

1つ目は自然の豊かさである。私の祖父の実家は阿南市福井町という周りが山と田んぼしかない所で、小さい頃はそこに毎週のように行って魚や虫を取って遊んでいた。この場所で「いろいろなことに興味を持つ」という自分の性格の基盤ができたように思う。また、徳島県南部の牟岐町大浜海岸というところには日本でも数少ないウミガメの産卵地があり、シーズンが合うと、産卵のシーンを間近で見学することができる。その他にも鳴門海峡の渦潮や手羽島にある天然記念物であるシラタマモの群生地など、ここでしか見ることができないものがたくさんある。

2つ目は過ごしやすさだ。私の兄が東京の大学に進学しており、夏休みには1、2週間ほど遊びに行くのだが、1週間もすると人混みの圧迫感のせいで疲れてしまう。人混みに慣れていないせいかもしれないが、徳島にはそういう息苦しさはない。徳島に帰ってくるといつも「ストレスなく伸び伸びと暮らせることがこんなに自分にとって大事なものなのか」と痛感する。また、同じ四国で今一番栄えている香川県と比べると、やはり香川県は電車などの公共交通機関の便がよく、店の数も全体的に充実しているが、自然とのつながりがやや薄く、無機質なイメージがある。

3つ目は各地域で行っている「まちおこし」だ。徳島県では「サテライトオフィス」という都市部に本社を置く企業が地方でも遠隔作業ができるように通信環境を整えた事務所の数がここ最近増えており、地域で生活を始める若者たちが増えてきている。例えば、4K、8Kの高解像度の映像を制作する会社である「株式会社えんがわ」や、番組の編集を行う株式会社「株式会社プラットイーズ」は、徳島県の神山町というところにオフィスを構えている。また、人口減少の影響でできてしまった空き家を利用して民宿を経営したり、「焼却や埋め立てによるゴミ処理をゼロにする」という目標を掲げる「ごみゼロ計画」というユニークなことを行ったりしている地域もある。
ちなみに「ごみゼロ計画」はリサイクル率80%以上、分別は45種類にまで増加し、計画完遂は目前まで来ている。また一般社団法人HLABが主催する、海外大学生と交流できるリベラルアーツプログラムも県南部の牟岐町というところで2014年から毎年開催されている。このプログラムには私自身も高校生の時に参加し、海外の大学生が作った模擬授業を受けるという貴重な体験をすることができた。

4つ目は人材の豊かさだ。例を挙げると、政界では内閣官房長官を歴任した後藤田正晴氏や仙谷由人氏がいるし、文学界では長い間日本のS F小説界を牽引してきた海野十三氏が挙げられる。また、県西部の上勝町で葉っぱビジネスを町の一大事業まで育て上げた横石知二氏もいる。音楽界では、去年紅白歌合戦にも出場した米津玄師さんが一斉を風靡した。こんな片田舎の中で社会に大きな影響力を与える人がたくさん生まれるのは、徳島県の閉鎖的な環境が強い「個」の力を生み出しているからではないかと私は思う。

ここまで徳島の魅力を挙げたが、確かに徳島県には他の県と比べてパンチのある魅力が少ないし、都会のような便利さもあまりないかもしれない。しかし、生活していく上では車さえあればなんの苦労もないし、むしろ都会の煩雑な雰囲気にストレスを感じている人ならばすごく快適な街だと思う。東京から飛行機1時間で来れるので、ぜひ機会があれば一度立ち寄って徳島の良さに触れて欲しい。

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ