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ol.141 「牛乳タンパク質なしミルク」が乳幼児の食物アレルギーを大幅に抑制 日本発の最新研究で明らかに

医療ガバナンス学会 (2020年7月7日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2019年10月30日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2019102800083.html

Child Health Laboratory代表
森田麻里子

2020年7月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

先週、慈恵会医科大学の浦島充佳教授らのグループから、赤ちゃんのアレルギーに関する新たな研究結果が発表されました(※1)。新生児の赤ちゃんに与えるミルクを、タンパク質を含まないアミノ酸ミルクにすることで、食物アレルギーの発症を抑えられたというものです。

この研究では、両親や兄弟の少なくとも一人が喘息(ぜんそく)などのアレルギー性疾患にかかったことがあるような、アレルギーのリスクの高い赤ちゃん312人が集められました。この赤ちゃんたちをランダムに2グループに分け、それぞれ少し違う栄養方法で育ててもらったのです。

一方のグループでは母乳をメインに、母乳が足りないときは牛乳のタンパク質を含まないミルクを飲ませてもらいました。1日150ml以上のミルクを飲む日が3日続いたときは、通常のタイプのミルクに切り替えましたが、生後3日目まではこのグループの全員が牛乳タンパク質を摂取しないようにしました。そしてもう片方では、赤ちゃんが生まれた初日から、通常のミルクを1日5ml以上飲ませてもらい、生後1カ月を過ぎた後は1日40mlに増やして、5カ月頃まで続けてもらいました。

すると、2歳時点での血液検査で牛乳に多少なりアレルギー反応を示した割合は、最初に牛乳のタンパク質を避けたグループでは16.8%、そうでないグループでは32.2%でした。また、2歳時に何らかの食物アレルギーを持っている割合は、それぞれ2.6%と13.2%でした。いずれも、生後最初の3日間に牛乳タンパク質を避けたグループで良い結果となったのです。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。今回の論文の中では、腸内細菌がまだ育っていない新生児の腸にたくさんの牛乳タンパク質が入ってくると、それが炎症を引き起こし、食物アレルギーのリスクを高めるのではないかという仮説が立てられています。

これまでの動物実験の結果では、抗生物質で腸内細菌を殺してしまうと、食物へのアレルギー反応を起こしやすくなることがわかっています。また、早産の赤ちゃんがかかりやすい壊死(えし)性腸炎という病気がありますが、ミルクではなく母乳を与えた方が発症を抑えられることがわかっています。アレルギー発症のメカニズムはまだ確定的なところまではわかっていませんが、このような多数の研究結果をつなぎ合わせて、少しずつその仕組みが明らかになってきているのです。

しかし、実際に赤ちゃんにいつどんな種類のミルクを与えたらよいかというのは、まだはっきりしていません。

これまでにも、生後3日までの牛乳タンパク質摂取とアレルギーの関係を調べた研究結果は複数ありましたが、その結果は一致していませんでした。今回の研究により、やはり生後3日までの摂取は悪影響がある可能性は高まったと考えられるでしょう。

一方で、2010年にイスラエルから発表された研究では、生後2週間までに牛乳タンパク質の入ったミルクを飲んだ赤ちゃんが0.05%しか牛乳アレルギーにならなかったのに対し、生後3~6カ月頃に初めてミルクを飲んだ赤ちゃんは1.75%の子が牛乳アレルギーになっていたという結果も出ています(※2)。

牛乳タンパク質を摂取するのが生後3日までだと食物アレルギーを増やすけれど、生後4日~生後14日なら食物アレルギーが減る、というのは両立しうるので、この結果は今回の研究と相反するとはいえません。しかし数日のタイミングで結果が変わる可能性があるとすれば、良いタイミングがいつなのかはさらなる研究が必要です。

また、摂取を開始するタイミングだけではなく、摂取する量や、その後どのようにミルクを継続したのかなど、他にも多くの要因が関わっている可能性があります。今後さらに研究が進めば、専門家の議論により、また新しいガイドラインなども整備されていくかもしれません。

私自身、食物アレルギーはありませんがいわゆるアレルギー体質です。そんなこともあり、ここ数年のアレルギー研究の進歩をうれしい気持ちで見守っています。アレルギー発症の仕組みも、食事や皮膚の状態、腸内環境など身体全体がさまざまに相互作用していることが徐々にわかってきました。

これまで臓器別に細分化して病気を克服してきた西洋医学が、ここに来て身体全体のシステムを見るようになってきたというのが、非常に興味深いと思います。あと20年、30年後にアレルギー医療はどう変わっているのか、楽しみです。
○森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表。

(※1)Urashima M, Mezawa H, Okuyama M, Urashima T, Hirano D, Gocho N, et al. Primary Prevention of Cow’s Milk Sensitization and Food Allergy by Avoiding Supplementation With Cow’s Milk Formula at Birth: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatrics. 2019.

(※2)Katz Y, Rajuan N, Goldberg MR, Eisenberg E, Heyman E, Cohen A, et al. Early exposure to cow’s milk protein is protective against IgE-mediated cow’s milk protein allergy. Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2010;126(1):77-82. e1.

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