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Vol. 179 IDATENパブコメ(1)予防接種制度の見直し・現行の予防接種法の問題点

医療ガバナンス学会 (2010年5月26日 15:00)


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予防接種制度の見直しについて
現行の予防接種法の問題点

日本感染症教育研究会(IDATEN)
代表世話人 細川直登 亀田総合病院 総合診療・感染症科 臨床検査部
相野田 祐介  東京女子医科大学感染症科

2010年5月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


【予防接種制度の見直し】

日本感染症教育研究会(以下、IDATEN)は日本の臨床感染症の質の向上をその目的の一つとして活動しています。この度、予防接種制度の見直しについて意見申し上げたく存じます。特に、提起されていたうち、

(1)予防接種法の対象となる疾病・ワクチンのあり方
(2)予防接種事業の適正な実施の確保
(3)予防接種に関する情報提供のあり方
(4)接種費用の負担のあり方
(5)予防接種に関する評価・検討組織のあり方

について臨床現場の視点からまとめました。内容には重複する部分もありますが、これは予防接種というトピックの重層性、複雑性を意味しているものであり、あえてそのままにしました。例えば、予防接種の同時接種の問題は法制度の問題であり、医薬品添付文書の問題であり、保障制度の問題であり、臨床試験やエビデンス、医科学の運用の問題でもあります。
ぜひ、ご一読いただき、我が国が世界に胸をはり、国民に対して自信をもって提示できるシステム作りをしていただきたくよう切に願うものであります。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

代表世話人 細川直登 亀田総合病院 総合診療・感染症科 臨床検査部

<IDATENパブコメ として、数回に分けて配信いたします。>

【現行の予防接種法の問題点】

現行の予防接種法では、国民がワクチンを受けるチャンスを逃してしまうばかりか、接種希望しても接種できない事例も発生してしまうため、改善を要望する。

予防接種法は、その目的に「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために、予防接種を行い、公衆衛生の向上及び増進に寄与する」とある。しかし現行の予防接種法では、必要なワクチンを必要な対象者に確実に接種することが現実的に困難である。国民へのワクチンの必要性に関する知識の啓蒙不足に加えて、小さな子供を抱える世帯にとって、全部で何万円もかかるような肺炎球菌ワクチンやインフルエンザ菌Type b(Hib)ワクチンを接種させることは簡単ではない。以下、予防接種法の問題点について具体的に述べる。

■ 予防接種法上の定期接種の問題点(ワクチンの種類が少ないことや、任意接種との分類が必要かどうかについて。)

日本では予防接種法上、ジフテリア・百日せき・急性灰白髄炎(ポリオ)・麻しん・風しん・日本脳炎・破傷風・結核は定期接種として個人の費用負担なく接種することが可能である。一方で欧米諸国など他のほとんどの先進国で一般的となっている肺炎球菌・Hib・おたふく・水痘・B型肝炎などはいずれも任意接種に分けられており、国民に対して接種に関する推奨はおろか情報提供さえ乏しい状況だ。接種費用も自費であり、多くの対象者にとって、とてもワクチンを受ける余裕はない。また副作用発生時には、定期予防接種の際の健康被害と異なって健康被害救済制度を利用することができず、通常の医薬品使用時の健康被害と同様の救済制度での適応となってしまう。こういった背景もあり、これら任意接種のワクチンの接種率は向上せず、他の先進国ではまれな肺炎球菌髄膜炎やHib髄膜炎患者が多く、死亡例、後遺症を残すケースも少なくない。現在定期接種に組み込まれていない上記ワクチンを新たに定期接種とするか、あるいは定期接種や任意接種の分類をすべて廃止し、いずれのワクチンも推奨するとともにワクチン接種の費用はすべて公費で自己負担なしとする方法を提案したい。

また、ポリオワクチンに関しては、WHOや米国CDCなどでは経口生ワクチンの副作用にワクチン関連麻痺があるため不活化ポリオワクチンを用いるよう推奨しており、実際に先進国の多くはすでに導入済で、効果も十分で特に問題ないというデータも出ている。ポリオワクチンに関しては不活化ワクチンへの変更が必要と考える。

■ 被接種者の努力義務であれば、ワクチンに関して努力するための情報提供を確実に行ことが必要。

ワクチン接種に関して国民に対する情報提供や教育の方法について、その後の検討を行う必要がある。予防接種法第二章第8条に被接種者等の責務として「予防接種を受けるよう努めなければならない」とされているが、予防接種法施行令第6条では、市町村から予防接種対象者への周知することとして「種類・期日又は期間・場所・注意事項・その他必要なこと」のみしかない。このため、例えば予防接種の必要性など、予防接種を受けるよう努めるために必要な情報の伝達については考慮されていない。また、予防接種実施規則第一章第5条の2に「予防接種の効果および副作用」について説明を行うこととなっているが、これは実際に予防接種を受けにきた人に対してようやく行われるだけである。本来は事前に、接種するべきと判断するための材料として情報提供が十分なされるべきである。定期予防接種実施要領では、接種状況の把握や未接種者への再度の接種勧奨についても触れられているが、具体的にどのような方法でどのように情報を周知させるか、その方法の妥当性や改善点、あるいはその後の検証の必要性は全く触れられていない。予防接種をうけるべき人に本当に必要な情報が伝わっているかは現状を考慮するとはなはだ疑問である。

■ ワクチンの禁忌事項や注意事項で、医学的に矛盾する部分。

予防接種実施要項で予防接種の実施計画の中で、ワクチン接種注意者として「心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者」が記載されている。不活化ワクチンに関しては上記の基礎疾患を持つ患者の場合、通常の健常人よりもワクチンの恩恵をより受けることができる層であると言える。ワクチン接種の注意者及び禁忌者については、そのメリットも考慮した上で、根拠を示していただきたい。

■ 同時接種は原則的に可能。

定期の予防接種実施要項に、他の予防接種との関係で、二種類以上の予防接種を同日に接種する同時接種は「医師が特に必要と認めた場合に行うことができる」となっており、原則的には間隔を空けるようになっている。国内でも同時接種は日常的に行われている。貴重な予防接種の機会を逃さないためにも、積極的に認めていただきたい。

文責 相野田 祐介  東京女子医科大学感染症科

<参考文献>
1. American Academy of Pediatrics. Redbook 2009 Report of the Committee on Infectious Diseases , 28th edition , American Academy of Pediatrics , 2009
2. 五味晴美.日本の予防接種行政を考える. 週間医学界新聞 第2547号 2003年8月18日 医学書院 http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2547dir/n2547_03.htm
3. Center for Disease Control and Prevention. “Health information for international travel. 2009-2010
4. 木村三生男,平山宗宏,堺春美:予防接種の手引き 第12版,近代出版,2009

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